職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●コンビニエンスストア「ネコンビ」

　受け入れ先の店主以外にも、職業体験学習に不安な者もいた。
（ネコンビが受け入れになったんはええけど、あたし、職業体験学習に来る子の指導役になってもぉた……）
　アルバイトをしている四野辺蘭月は、自分に指導役が務まるかどうか心配だった。
　彼女が職業体験学習の指導役に抜擢されたのは、店長に「頑張っている君ならできる！」と太鼓判を押されたから。
（あたしのバイト振りをちゃんと見てくれとるんは嬉しいんやけど……複雑や。考えとってもしゃあない）
　オトナ代表として、小中学生達にダラダラ働いているところは見せられない。
「よっしゃ！　やったるで！」
　頬を叩いて気合注入し、職業体験学習に来る小中学生を待つ。

「実際に働くってなると、サッカーのPKよりドキドキすんな……！　とりあえずスマイル、スマイル！」
　千種修也は、自分は接客に向いているのでは？　と接客業の受け入れ先を探していた。
「ここ良さそうじゃん！　コンビニも接客業だしな！」
　ということで、ネコンビで職業体験学習をすることに決定。
「あんたもここで職業体験学習するの？」
　ネコンビに入ろうとした時、三宅ゆりに声をかけられた。
「そうだけど。あんたも？」
「コンビニのバイト、高校生になったらやってみたいと思ってたんだよね。あたしは中３の三宅ゆり」
「俺は２年の千種修也だ」

　ふたり揃って店内に入ると「いらっしゃーい！」と営業スマイルの蘭月が満面の笑顔で出迎えてくれた。
　やっぱ重要なのは挨拶だよなー、と修也は自己紹介を。
「職業体験学習に来た中学２年の千種修也です！　特技はサッカー、好きなことはサッカー！　今日１日よろしくお願いしまっす！」
「同じく、中学３年の三宅ゆり。よろしくね、センパイ！」
　蘭月の真正面に立ち、自己紹介をするふたりの顔をしみじみと眺める蘭月。
（センパイ……ええ響きや。今の子は偉いわー、なんや、まぶしいわ。歳、ほんの少ししか違わへんのに）
　これもなんかの縁や、しっかり指導したる！　と蘭月は胸を張る。
「あたしは寝子高１年の四野辺蘭月や。職業体験学習、楽しくやろな！」
　そう言うと、ふたりにネコンビのユニフォームとエプロンを差し出した。
「制服の上からでええから、これに着替えて。仕事の服装はキチンとせなあかんで」

　バックヤードでユニフォームに着替えたふたりは、蘭月からネコンビでの仕事内容を聞く。
「ここでの主な仕事はレジ打ちや。簡単に言うと商品会計やな。コンビニの表舞台やから、笑顔で接客のできる子にオススメや」
「俺、レジ打ちやる！」
「やる気マンマンやなぁ。さっきの自己紹介の調子で頼むで」
　間違いがあると困るので、現金の取り扱いは蘭月が行うことに。
　お客さんがカウンターに持ってきた商品を受け取ってからバーコードを読み取り、袋に入れたりするのは修也とゆりの仕事だ。
　レジの扱い方を教えながら、試しに、ふたりにやってもらうことに。
「商品を通す時は、値段も言うてな。１００円が１点、ちゅうふうに。会計ん時は何点で何円です、や。３点で３２４円です、ちゅうふうにな」
　金額を言いながらのレジ作業は難しそう……と、ふたりは少し気後れ。
「大丈夫やって、慣れればどうってことないから。無理なら、最後に教えたことだけやればええねん」
　次に、品出しの説明を。
「品出しは裏方寄りの仕事やね。今は季節の変わり目やさかい、陳列してある商品をいろいろ入れ替えなあかんのよ」
　入れ替えだけでなく、少ない商品の補充も裏方の仕事と付け加える。
　説明を聞くと、スーパーと変わらない仕事だなと修也は思った。
「これは体力に自信のある子にオススメやな」
「これも俺やる！　サッカーで鍛えてるから体力には自信ある！」