職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●靴屋「Cat's rear paws」

　うさぎ屋以外にも、小中学生が来るか気になる受け入れ先が。

（職業体験の受け入れ許可を出す時期が遅れてしまいましたが、大丈夫でしょうか？）
　靴屋「Cat's rear paws」店長の沓冠梢太朗は、心配で仕方がない。
「店長、その恰好で小中学生の指導を？」
　声変り無し、中性的容姿、幼い顔立ちを応用して変装することは、尋ねた店員も知っている。
　でも、今日は普通の恰好で……と思った。
　梢太朗の変装は三つ編みおさげにした黒髪ウィッグに文学お嬢様風なワンピース。
　読書好き少女を印象付ける眼鏡。
　海外製の皮製ショートブーツやローファーではなく、おとなしめなブーツを履いている。
「これは勝負服です！　職業体験学習に来るのは小中学生なんですから！」
「わかりました。それでいいですから、職業体験学習、お願いしますよ」

　靴に興味がある臙脂色のワッペンを付けた小中学生、特に女の子が「Cat's rear paws」に。
「職業体験学習の皆さん、靴屋「Cat's rear paws」にようこそ！　僕が店長の沓冠梢太朗です！」
　この人が！？　と目を丸くして驚く小中学生の靴先を梢太朗はチェック。
（職業体験学習の子は成長期を控えているので、無理な履き方をしていないか心配です）
　女の子は流行に敏感なのか、おしゃれなデザインの靴を履いている子が多く、キチンと履きこなしている。
　そのひとりが、かかとを気にしているようなので梢太朗は「ちょっと見せてください」としゃがむ。
「靴擦れしてますね。サイズ、合っていますか？」
「ちょっと大きいけど、気に入ってるから」
「ちゃんと履かないと、摩擦で低温やけどを起こすこともあるんですよ！」
　近くにいた店員に仕事の説明を頼み、梢太朗は靴擦れした女の子を事務所に連れて行った。
　皮がめくれたかかとに若干大きいサイズの絆創膏を貼り、靴に中敷きを入れサイズ調整。
「履いてみてください。どうですか？」
「ちょうどいいです。靴擦れはまだ痛いですけど頑張ります」
　七夕ゆかた祭りでの経験が役に立ったことが嬉しい梢太朗は、女の子と店内に戻った。

「僕の瞳に宿りし異能の力が、役に立ちそうな場所は……」
　神助天佑は、自身のろっこんが役に立ちそうな都会的な雰囲気の受け入れ先を探している。
「内装がおしゃれそうです。ここにしましょう」
　天佑が店に入るなり、梢太朗がお出迎え。
「靴屋「Cat's rear paws」にようこそ！　店長の沓冠梢太朗です！」
「神助天佑です。寝子島に馴染めていませんが、よろしくお願いします」
「気にしなくても大丈夫！　僕も寝子島に来たばかりだから！」

　職業体験学習希望者がある程度揃ったので、さっそく仕事を始めることに。
「皆さんは小学校や中学校以外に、どんな施設や場所で遊んでいますか？」
「職業体験学習に関係ある質問ですか？」
「スパイクだったりスニーカーだったり、靴にはいろいろありますよね？　寝子島の人はどんな場所で履く靴を買うのかな？　と考え、お店に靴を並べて欲しいと思います」
　梢太朗が小中学生にしてほしい仕事は、陳列棚の模様替え。
「いろいろ考えて並べちゃってくださいー！」

　革靴コーナーで、天佑は靴を見ながら「都会の人はこういうのを履いているんですね」と感心。
　ブランド、種類は理解し難い英語だったが、靴を並べたり、磨いたりと黙々と仕事をこなす。
（良い勉強になりました。次のところも、ここみたいな店にしましょう）
　都会の雰囲気に、少し慣れてきたような感じになった天佑だった。