職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●洋食屋「spes （スペース）」

　望月神無の義兄が経営する洋食屋「spes （スペース）」も、職業体験学習の受け入れ先だ。

「クールで大人な女性になるためには、ここで働かなくっちゃね！　ここなら近づけそう！」
　時高クレオは、いろいろな人と接することの多い洋食店で接客マナーを身につけ、自身が目指す「クールで大人な女性」に少しでも近づいてみせる！
　と意気込んで店に入る。
「ごめんください、職業体験学習に来た中学１年の時高クレオです。よろしくお願いします」
「……ああ、いらっしゃい。職業体験学習の子だね。うちを選んでくれてありがとな。ここの従業員やってる望月神無だ、しくよろ」
　自己紹介を済ませた望月神無は、ユニフォームのポケットから板チョコを取り出すと一口齧る。
（すごくかっこいい先輩がいらっしゃるじゃないですか！！　あ、でも……ええと……女の方なのかしら？　どちらにしても素敵、クレオの理想そのものだわ！）
　よし、頑張るぞ！　とクレオは気合を入れると、他の職業体験学習の生徒がやって来た。
「仕事の前に、これに着替えてくれ」

　控室で洋食屋のユニフォームに着替えながら、クレオは神無が説明する仕事内容を聞く。
　ここでの仕事はレジ打ち以外の接客、料理補助、皿洗いのどれか。
　接客は入ってきたお客様に挨拶をして空いてる席へと案内したり、注文を受けたらカウンターに通したり。
　調理補助は、神無の義兄が言う材料を持って来たり、食器を用意したり、皿洗いをしたり。
「食べ終えた皿は、姉貴と一緒に洗ってくれ。詳しい話は調理補助の奴はおじさんに、皿洗いの奴は姉貴に聞いてくれ」
「神無さんは何をするんですか？」
「俺？　接客だ。皆のフォローをおじさんから任されているから、わからないことがあったら聞いてくれ」
「はい！　よろしくお願いします！」
　生徒達の着替えと仕事内容の説明が終わると、接客マナーとテーブルセッティングを開店準備中の神無と彼女の姉が指導。
　洋食には前菜、魚介料理、肉料理の順に出し、食べる順番に合わせたナイフとフォークを置くこと。
「ナイフの刃は内側に向け、フォークの先は奥に向くんだ。外側から順に前菜、魚介、肉用だ。洋食は外側から使うのがマナーだからな」
　神無も最初は覚えるのに苦労したことを姉が話すと、最初から上手にできるわけないとムッとした顔で言った。
「あんた達だってそうだ。俺同様、最初から上手くできるわけないんだ。気負わず、できる範囲で仕事してくれ」

　お客様が来ると、神無の義兄は調理の準備を。
　神無を見習いクールに振る舞おうとするクレオだったが、お客様を席に案内したり、注文を聞いて神無の義兄に伝えたりと忙しく、それどころではなかった。
（神無さんがスマートに仕事をしているから簡単だと思い込んでいたけど……結構やることが多くて大変なのね……）
　理想と現実のギャップにめげたクレオだったが、職業体験学習だけどしっかりしないと！　と気を取り直す。
「どうした？　何かあったのか？」
　接客をこなしながら、困った様子のクレオに声をかける神無。
「どこに運ぶかはわかっているんですけど、料理の名前が言いにくくて……」
「心配しなくていい。お待たせいたしました、ってお出しすればいいんだ。置き方に気を付けるんだよ」
　仕事前に丁寧に教わったのだが、緊張しているのでミスしないか不安に。
「ちゃんとできたじゃないか。その調子で頼むよ」
　神無に褒めてもらえたことで、クレオはちょっと自信がついた。
（私が目指すクールで大人な女性になるためには、こんなことで落ち込んでいられないわ！）

　他の職業体験学習の生徒達も、各々の仕事を頑張っているが目が回るほどの忙しさだった。
　それでもへこたれることなく仕事をこなているので、神無は根性あるじゃないかと生徒達を見守っている。