職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●洋食屋でのお仕事

　客が増えてきたことで、洋食屋「spes （スペース）」は忙しくなってきた。
　人手がもっとあれば……と神無が思った時、タイミング良くうみねこでの職業体験学習を終えた高瀬練と八葉るちるのふたりが来た。
「こんにちは、高瀬練です！　調理のお手伝いをしに来ました！　魚を捌くのが得意なので魚料理のお手伝いできます！」
「八葉るちるです！　私も料理できますので調理のお手伝いさせてください！　皿洗いもお手伝いしますよ！」
　地獄に仏とはまさにこのことだな、と神無はふたりの手伝いをありがたいと思った。
「……いらっしゃい。忙しい時間帯だから助かるよ」
　練とるちるは大急ぎで洋食屋のユニフォームに着替え、エプロンをつけて神無と彼女の姉の手伝いを。

　魚料理が得意な練の下拵えは、神無の義兄の役に立った。そのおかげで、早く料理をお客様に出すことができた。
「あたし、魚料理はできるけど肉はちょっと……」
　魚介料理を手伝ってくれるだけでも大助かりだよ、という義兄の言葉に練は期待に応えるべく頑張る。
　前菜の下拵え、盛り付けといった仕事は、るちるが手伝っている。
「綺麗に盛り付けるのは難しいですが、るちるさん頑張ります！」
　それに加え皿洗いもしているので、るちるは人一倍働いていた。皿洗いをしている生徒は他にもいるが、こうしないとなかなか片付かない。
「あのふたりに負けてられないな」
「私も頑張らないといけないですね」
　神無とクレオ、神無の姉や他の職業体験学習の生徒達はお客様をテーブルに案内したり、できあがった料理を運んだり、片付けたをしたり。

　最後のお客様が洋食屋を出た後、職業体験学習の生徒達はようやく休憩することができた。
「皆、ご苦労さん。遅くなったけどお昼にしよう。おじさん特製の賄い料理だよ」
　義兄が作ってくれた賄いは、メニューにない特別料理だ。
（美味いって言ってくれればいいんだけどな）
　そう思い、神無は生徒ひとりひとりに配る。
　いただきます、と手を合わせ、作ってくれた義兄に感謝して生徒達は賄い料理を食べる。
「美味しいです！　今度からご飯をお店でいただく時は、店員さんに感謝します！」
　美味しさに感激するクレオ。
「あたし達のために作ってくれてありがとう！」
「すっごく美味しいです！」
　練とるちるは、うみねこでも賄いをご馳走になったのだが、おもいっきり働いたのでお腹が減ったのでいただくことに。

「お姉さん、お疲れのようですけど……」
　神無の姉の体調がすぐれないことに気付き、るちるが心配する。
「姉貴、もうすぐ子供が生まれるんだ」
「そうなんですか！　元気な赤ちゃんが生まれるといいですね！」
　子供が生まれそうなことを知ったクレオは、心からそう願った。

　清掃作業が終わると、職業体験学習の終了時間に。
「今日はありがとうございました！」
　働かせてもらった生徒達は、神無達に感謝の言葉を伝え深々とお辞儀した。
（私、大人の女性に近づけたかな……？　でも、きっとまだまだね。もっと磨いていかなくっちゃ！）
　働いた経験を活かし、クールで大人な女性になる努力をしようと誓うクレア。
　練は、義兄に教わった魚料理のレシピを見ながら「これ、作れるかな……」と思っていた。
　教わったのは、白身魚やサバといった青魚、貝類を水とトマトで煮込むアクアパッツァ。
「骨からいい出汁が出るので、尾頭つきの小型の魚が好まれる、か。よし、作ってみよう！」
「るちるさんもお手伝いしますよ！　うみねこさんで教わった料理も作るんですよね？」
「もちろん！」
　帰る前、ケンゾウから「こいつを作ってみな」とレシピメモを渡された。
　メモを取り出すと、そこには鮭を使った料理、これから旬の魚になるサンマ料理のレシピが書かれていたが、殴り書きなので読みにくかった。