職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●カフェ＆Ｂａｒ“Ｌｉｂｅｒａｌ”

　ジャズが流れる昼はカフェ、夜は大人に静かな安らぎを提供する英語で『寛大な人』といったところの意味のカフェ＆Ｂａｒ“Ｌｉｂｅｒａｌ”も、職業体験学習の受け入れ先だ。
「次は、ここで社会勉強を兼ねた職業体験学習をしましょう」
　靴屋での職業体験学習を終えた神助天佑は、カフェなら都会にいち早く慣れることができるのではないかと思った。
　天佑が店に入ると、店主の詠人・ダグラスが礼儀正しく出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。このたびは、職業体験学習の場に当店を選んでくださってありがとうございます。私は店主の詠人・ダグラスです。エイト、と呼んでください」
「寝子島中学２年の神助天佑です。こちらでの暮らしに馴染めていませんが、どうかよろしくお願いします」
「大丈夫ですよ、ここで体験していただく仕事は難しいことではありませんから。仕事の前に、身支度をしてください。制服の上にエプロンで結構です」
　これをつけてください、と詠人は天佑にエプロンを手渡す。帽子と外套を取ってから、受け取ったエプロンを学ランの上からつける。
　学ランを脱いでと言われるかと思ったが、それに関しては何も言われなかった。
「ここで体験していただく仕事は主に３種類です。まずは会計を除く接客……席にお客様を案内したり注文を伺ったり、食事が済んだ後のお皿を下げていただく、といったことをお願いします」
　それを聞いた天佑は、外国語の発音が苦手なので注文を上手く伝えられるかどうか不安に。
「配膳は、料理をお客様に運ぶ仕事です。どこに運ぶかわからない時は、無理せず私に確認に来てくださいね」
「わかりました」
「食器洗いは……やることはそのまま、下げられたお皿を洗っていただきます。調理場でのお仕事になります。会計は私の方で行いますので、お会計をしたいと仰られた方がいらっしゃいましたら、私の方までお願いしますね」
　配膳と食器洗いはともかく、接客は自分に勤まるだろうか。緊張する天佑を気遣い、詠人は「変に気負わず、胸を張って思うようにやってみてください」と励ます。
「失敗することもあるかと思いますが、大概の事は私がフォロー出来ます。困ったことがあれば、私に何なりと尋ねてくださいね」
「お気遣い、ありがとうございます。僕、頑張ります」

　仕事内容の説明が一通り終わって少しすると、最初のお客さんが。
「いらっしゃいませ」
　詠人から渡された水をお客さんに差し出すが、どことなくぎこちない。
「モーニングセットください」
「もーにんぐせっと、ですね。かしこまりました。エイトさん、もーにんぐせっとお願いします」
　ちゃんと仕事をこなましたね、と天佑の働きぶりを感心する詠人。
　その後も、苦手な外国語に苦戦しながらも天佑は一所懸命働いた。

　休憩時間には、賄いとして詠人が作ったオムレツをご馳走に。
　天佑がさっそく一口、というところで「こんにちは！」と職業体験学習の生徒が元気良く来た。
「中３の三宅ゆりです。ここで職業体験学習をしたいんだけどいいですか？」
「元気のいいお嬢さんですね、どうぞ。賄いですが、オムレツを召し上がりますか？」
「いいの？　いただきます！」

　カフェの仕事をしてみたかったというゆりの手伝い、詠人のフォローもあり天佑は何とか仕事をこなすことができた。
　あっという間に、職業体験学習終了の時間に。
「本日はお疲れ様でした。今日１日手伝っていただいだお礼と言っては何ですが、クッキーを焼いてみたんです。是非、お持ち帰りください」
「ありがとうございます、エイトさん」
「エイトさん、お料理だけでなくお菓子作りも上手なんだね。ありがとう！」
　では、またいずれ、と詠人はふたりを見送った。