職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●初めての体験

　午後。うみねこでの職業体験を終えた夢月姫がやって来た。
「こんにちは、職業体験学習に来ました！」
　駅でオークレイ牧場に行く、と言っていた子だというのをバニーは覚えていた。
「いらっしゃい、リトルガール。ようこそ、オークレイ牧場へ」
「寝子島小学校３年の夢月姫です！　良く歩きますから体力あります！　動物さんと仲良くなれるといいなと思います！」
　姫が職業体験学習をする間、くろとしろは、牧場の敷地内を散歩することに。
「これ、ここに来る前に大衆食堂「うみねこ」でもらった一口かき揚げです。食べてください」
「サンキュー。あとでいただくわ」
　別の場所で職業体験学習をするなら、そこの人にも食べてもらえという魚戸ケンゾウが気を遣い、余分に持たせてくれたのだった。

「あなた達にしてもらうお仕事は、牛の乳搾りよ」
　これには、姫以外の職業体験学習の生徒数名も参加。これがしたくて残っていたようだ。
　牛舎の清掃をしていた生徒は牛の大きさを実感したが、それ以外の生徒は、初めて間近で見た牛にビックリ。
「怖い？　牛は思ってたより大きいでしょ？　ふふふ、目を見て。優しい色をしてるでしょ？　マッサージしてみない？」
「大丈夫なんですか？」
「大丈夫よ、ほら」
　バニーに手を添えられ、姫は生まれて初めて牛に触れた。
「気持ち良さそうでしょ？」
「はい」
　他の生徒も、姫に倣い、おそるおそる触れながら牛のマッサージを。
　目を細め、気持ち良さそうにしているので「可愛い……」と言う生徒も。
　
　マッサージが終わると、お待ちかねの乳搾り。
「乳搾りは機械でやるんだけど、今日は手でやってみましょう。その前に、細菌が入らないよう、手と指の消毒をしましょう」
　皆は手と指の消毒をし、菌が入らないようビニール手袋をつける。
「手で搾る場合は乳頭の付け根を親指と人差し指で締め付け、それから手と指全体で乳頭を締め付けて搾りだすの。やってみて」
　バニーに教わったとおり、姫は指で圧迫して絞り出すが思うように出ない。
　何度か挑戦していると、勢い良くお乳が出た。
「そうそう、うまいわ。初めてにしては上出来ね」
「牛のお乳って熱いんですね」
「ふふふ、そんなことにもびっくりするんだね」
　初めての乳搾りがうまくできた、お乳のあったかさに新鮮さを感じた姫を見て、バニーは初めて仕事がうまくいったことを思い出した。
　他の生徒達も、バニーの丁寧な指導の甲斐あり上手に絞ることができた。
「搾ったお乳は、殺菌してから加工して販売所で売るのよ。販売所で試飲してみない？」
　牧場で作った牛乳は、とても美味しかった。

　仕事が終わると、バニーは生徒達を馬に乗せ、牧場を一回り。
「お仕事、ご苦労様。馬で牧場を一回りしましょう。ハイヨー　シルバー」
　初めての乗馬に怖がる生徒もいたが、楽しんでいる生徒も。
「すごく高いです……お馬さんの鬣フサフサです」
　馬に乗りながら鬣に触れ、乗馬を楽しむ姫。これはとても良い思い出になった。
「どうだった？　何かひとつでも良かったこと、素敵だと思ったことがあったらバニーは嬉しいわ」
　大変だったけど、馬に乗れて楽しかったというのが生徒達の感想だった。

　最後まで仕事をやり遂げた生徒達に、バニーはテンガロンハットと蹄鉄をプレゼント。
「今日の記念よ。蹄鉄は幸運のお守りだから大切にしてね」
「ありがとうございます！　大切にします！」
　姫を待っている間、くろとしろは柵に乗って馬をじっと見ていたり、牧草にダイブしたりして遊んでいた。
　家に帰ったら、うみねことオークレイ牧場でした仕事のことを教えてあげ、皆で食堂と牧場に来たいと思う姫だった。

　職業体験学習を終えたバニーは、仕事の前に姫がくれた一口海鮮かき揚げを食べた。
「デリシャス！　漁港近くの食堂の料理だって言ってたわね。行ってみたいわ」