職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●寝子島暑

　寝子島署での職業体験学習を希望したのは、結緑一色のようにヒーローに憧れ、将来の夢は刑事といった小学生男子ばかりだった。
　この年代の男の子は、ヒーロー願望が強いようだ。職業体験学習とはいえ、警察官になれるので早く仕事がしたいと待ちきれない子も。

「おはようございます。寝子島小学校の皆には、見習い警察官としてお仕事を体験してもらいます」
　指導役兼監督を任されたのは、直属上司を署長から任命された勤続３０年以上のベテラン警察官。
「体験学習の前に、警察署内の一部をご案内します。警察手帳用の証明写真を持ってきましたか？」
　元気良く手を挙げながら、持参した証明写真を掲げて見せる子供達。
　職業体験とはいえ、父親と同じ職場で働ける一色は「当然だぜ！」と自慢げな顔で見せる。
　忘れた、という子がいたので、交通課で証明写真を撮ることになった。
「運転免許証更新用の証明写真は、警察署で撮影することもできるんですよ」
　免許証更新手続きも警察署ですることができる、ということを初めて知った子も。
　忘れてきた子の証明写真を撮影している間、他の子は、交通課窓口の仕事説明を真剣に聞いている。

　写真撮影が終わると、寝子島暑に入ってすぐにある会計課窓口へ。
「ここでは落し物、拾い物の取り扱いをしています。届けられた落し物の管理と、事務仕事が主な仕事です」
　交番みたいな仕事だな、と思う一色は、早く他の部署を見学したく仕方がない様子だ。
　次に案内された総務課窓口では、詐欺被害に遭ったかもしれないという老夫婦が警察官に相談している。
「警察官は、犯罪被害者の相談に乗ることもあります」
　困っている人の相談に乗ることも、警察官の大事な仕事だと上司は言い聞かせた。
「皆さんは、警察官のお仕事はどのようなものだと思いますか？」
　上司の質問に「正義を守ること！」と一色が即答すると「悪いヤツを逮捕すること！」と答える子も。
「そのようなお仕事も我々警察官の仕事ですが、寝子島の住民の安全を守ることも大事なお仕事なんですよ」
　子供達の答えに、優しく微笑んでそう言う上司。
「取調室とか、捜査課とかの見学はしないの？　オレさまちゃん、見てみたいぜ！」
「残念ですが、それは……」
　一色の質問に、申し訳なさそうに謝る上司。

　忘れた子の証明写真ができあがったので、小学生達に署長名義の印鑑がきっちり押された任命証と証明写真付き警察手帳が配られた。
　署長直々の任命式があると期待していた一色は残念がったが、警察手帳を受け取ると大感激。
（これでオレさまちゃんも警察官だぜ！）
　寝子島暑が用意したおもちゃの警察手帳だったが、それでも小学生は、一色のように警察官になれた喜びに浸っていた。
「では、この制服を着てください」
　上着だけだが、地域課の婦警達がこの日のために作った制服を用意した。
「警察官の制服だ！　かっこいいぜ！　手錠とか拳銃ないのが残念だけど」
　小学生サイズの制服は簡易的なデザインだったが、袖を通した小学生達は、警察手帳を手渡された時と同じように大喜び。

　一色は、交番で職業体験学習をすることになった。
「父ちゃんと違う仕事だけど、オレさまちゃんチョー頑張る！」
　交番に着くと、職務中の警官に敬礼して挨拶。
　ここでの仕事は、道案内や巡査に同行ししてのパトロール。
（仕事、オレさまちゃんが普段しているヒーローごっことあまり変わらないな。でも、道案内したばあちゃんに感謝された時はチョー嬉しかった！）
　重たい荷物を持っているおばあさんの困り事解決！　と、荷物を持ちながら、おばあさんを道案内したことを思い出す。
「ありがとう、可愛いおまわりさん。助かったよ」
「オレさまちゃんは警察官として、当然のことをしたまでだぜ！」

　制服姿でパトロールをしていると、周囲の反応がヒーローごっこと違うので新鮮な気分を感じた一色だった。