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- 00月00日生 00歳
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秋の散策～九夜山周辺～
千年杉への道を過ぎてしばらくすると、ロープウェー『砂掛谷』駅へと通じる道が現れる。
砂掛谷には寝子温泉があり、ちょっと枯れ気味という話もあるのだが、ちゃんと古くからの温泉宿もあり、湯治客も訪れる。老年の観光客の中には、宿に泊まり、その足で千年杉や三夜湖に足を伸ばす――そんな者もいるだろう。
さて、寝子温泉から九夜山頂上へ向かうルートは主に二つ。ロープウェーに乗る方法か、山道へと入り、そして至る方法である。
猯利は頂上への山道を歩いていた。
千年杉に寄ったため、予定より山頂への到着が遅れていた。観光客の後ろを歩くようにして、残る道程を踏破していく。
時折別れ道も見えるが、千年杉のようななにかがあるわけでもなく、そう言った場所は人の出入りも少ない。猯利はまっすぐ、展望台へ向かっていった。
「ここは、静かね」
そうして彼が通り過ぎた別れ道の先。木々に囲まれ死角となっている場所に、天吏はいた。
人の気配はなく。生じた音も草木が吸い込み和らげる。自然の生み出す音のみの中で、天吏は持参した食事を食べ終えていた。
椅子代わりに腰掛けた岩の周囲では、数羽の小鳥が草地でついばむ仕草をしている。
彼らもまた、食事時のようだった。
「あなたたちに、実りのある季節だといいわね」
天吏の右目が柔らかく細まる。特に暖地へ移動する鳥にとって、9月は栄養を補給し次の移動に備える時期だ。
ふと視線を動かせば、近くの木にツツドリが留まっていた。赤く見える体色――雌のツツドリだ。天吏は刺激しないよう、静かにカメラを構えた。
黒く丸い目が、天吏を見つめている。
「あなたは、初めましてね」
シャッター音がしても、ツツドリは飛び立たなかった。天吏がカメラを下ろしたのを待っていたかのように、羽ばたいた。
飛び立つその姿を追えば、抜けるような青が広がっている。
――私もそろそろ、行こう。
ふとそんなことを思いながら、澄んだ空を天吏は見つめる。
目にした空は、夏の時とはどこか、違って見えた。
博美のろっこんは『トンビの飛翔』という。
滑空を利用して跳躍距離を伸ばすというものだが、その性質上、高所から降りる際に適している。
博美が高所で集まったゴミを回収し、麓に集積しようと思ったのも、このろっこんによる移動時間短縮が可能だからであった。
とはいえ、反対に低地から高地への移動となると少々骨が折れる。
今も跳躍地点との高度差によって、着地目標としていた岩の上ではなく、岩の側面へと博美は滑空していった。
彼女の目前に大岩が迫ってくる。
「JET！」
その時、岩を『JETブースター』を用いて駆け上がったマリナが下方から博美の体を抱え込んだ。再びJETブースターが発動し、上方向へのベクトルを得た二人は大岩の上へとら降り立っていた。
「マリナさん、サンキュー」
「同じ高校一年生。マリナでいいデスよ！ それにしても、その飛行能力は羨ましいデスね」
「滑空だから、飛行能力とは全然違うんだけどな。今みたいに急制動もできないし……」
道中たまたま遭遇した二人だったが、いつしか助け合いながら山頂方面を目指すようになっていた。博美がマリナのパルクール用に困難なルートの上を滑空し、先ほどのような状況ではマリナが微調整を入れる。
ちなみに、博美がマリナを抱えての滑空は、総重量の関係で芳しい結果には至っていない。
「鍛錬をして、滞空時間を増やすのみデスね」
「俺ももっと精進が必要だな……お、もうここまで来たんだな」
博美の視界に、切り拓かれた山道が映った。
「ここから先は、走って山頂に行けそうだな」
「では、ここでお別れデスね」
「ああ。楽しかったぜ」
そう言って走りだす博美に手を振って、マリナは再び単身、森の中を駆けていく。
「I’ll be back……帰ってきましたよ」
しばらくして目的の崖の元へと辿り着いたマリナが、崖の上の建てられた山小屋を見据える。
あの山小屋こそゴール地点。以前の失敗以来、休日のたび崖登りに挑戦している場所だ。
「今日までの特訓の成果、ぶつけてやるのデス！」
マリナが助走から一気に跳び、同時に能力を発動。遥か上の出っ張りを手掛かりにして、次の瞬間には足掛かりにして蹴る。ルートは数ヶ月間ずっと考えていた。あとはタイミングと、力の調節次第だ。
手が以前つかめなかった場所を、足が難所を踏み越えていく。
気付いた時には――覚悟していた苦しみもさほどなく、マリナは崖の上に辿り着いていた。
「――」
しばし呆然と山小屋を見つめていたマリナは、立ち上がった。その顔には、ゆっくりと実感と笑顔が広がっていく。
「今日は、勝利のお弁当が食べれますね！」
その味は、格別に違いなかった。
砂掛谷には寝子温泉があり、ちょっと枯れ気味という話もあるのだが、ちゃんと古くからの温泉宿もあり、湯治客も訪れる。老年の観光客の中には、宿に泊まり、その足で千年杉や三夜湖に足を伸ばす――そんな者もいるだろう。
さて、寝子温泉から九夜山頂上へ向かうルートは主に二つ。ロープウェーに乗る方法か、山道へと入り、そして至る方法である。
猯利は頂上への山道を歩いていた。
千年杉に寄ったため、予定より山頂への到着が遅れていた。観光客の後ろを歩くようにして、残る道程を踏破していく。
時折別れ道も見えるが、千年杉のようななにかがあるわけでもなく、そう言った場所は人の出入りも少ない。猯利はまっすぐ、展望台へ向かっていった。
「ここは、静かね」
そうして彼が通り過ぎた別れ道の先。木々に囲まれ死角となっている場所に、天吏はいた。
人の気配はなく。生じた音も草木が吸い込み和らげる。自然の生み出す音のみの中で、天吏は持参した食事を食べ終えていた。
椅子代わりに腰掛けた岩の周囲では、数羽の小鳥が草地でついばむ仕草をしている。
彼らもまた、食事時のようだった。
「あなたたちに、実りのある季節だといいわね」
天吏の右目が柔らかく細まる。特に暖地へ移動する鳥にとって、9月は栄養を補給し次の移動に備える時期だ。
ふと視線を動かせば、近くの木にツツドリが留まっていた。赤く見える体色――雌のツツドリだ。天吏は刺激しないよう、静かにカメラを構えた。
黒く丸い目が、天吏を見つめている。
「あなたは、初めましてね」
シャッター音がしても、ツツドリは飛び立たなかった。天吏がカメラを下ろしたのを待っていたかのように、羽ばたいた。
飛び立つその姿を追えば、抜けるような青が広がっている。
――私もそろそろ、行こう。
ふとそんなことを思いながら、澄んだ空を天吏は見つめる。
目にした空は、夏の時とはどこか、違って見えた。
博美のろっこんは『トンビの飛翔』という。
滑空を利用して跳躍距離を伸ばすというものだが、その性質上、高所から降りる際に適している。
博美が高所で集まったゴミを回収し、麓に集積しようと思ったのも、このろっこんによる移動時間短縮が可能だからであった。
とはいえ、反対に低地から高地への移動となると少々骨が折れる。
今も跳躍地点との高度差によって、着地目標としていた岩の上ではなく、岩の側面へと博美は滑空していった。
彼女の目前に大岩が迫ってくる。
「JET！」
その時、岩を『JETブースター』を用いて駆け上がったマリナが下方から博美の体を抱え込んだ。再びJETブースターが発動し、上方向へのベクトルを得た二人は大岩の上へとら降り立っていた。
「マリナさん、サンキュー」
「同じ高校一年生。マリナでいいデスよ！ それにしても、その飛行能力は羨ましいデスね」
「滑空だから、飛行能力とは全然違うんだけどな。今みたいに急制動もできないし……」
道中たまたま遭遇した二人だったが、いつしか助け合いながら山頂方面を目指すようになっていた。博美がマリナのパルクール用に困難なルートの上を滑空し、先ほどのような状況ではマリナが微調整を入れる。
ちなみに、博美がマリナを抱えての滑空は、総重量の関係で芳しい結果には至っていない。
「鍛錬をして、滞空時間を増やすのみデスね」
「俺ももっと精進が必要だな……お、もうここまで来たんだな」
博美の視界に、切り拓かれた山道が映った。
「ここから先は、走って山頂に行けそうだな」
「では、ここでお別れデスね」
「ああ。楽しかったぜ」
そう言って走りだす博美に手を振って、マリナは再び単身、森の中を駆けていく。
「I’ll be back……帰ってきましたよ」
しばらくして目的の崖の元へと辿り着いたマリナが、崖の上の建てられた山小屋を見据える。
あの山小屋こそゴール地点。以前の失敗以来、休日のたび崖登りに挑戦している場所だ。
「今日までの特訓の成果、ぶつけてやるのデス！」
マリナが助走から一気に跳び、同時に能力を発動。遥か上の出っ張りを手掛かりにして、次の瞬間には足掛かりにして蹴る。ルートは数ヶ月間ずっと考えていた。あとはタイミングと、力の調節次第だ。
手が以前つかめなかった場所を、足が難所を踏み越えていく。
気付いた時には――覚悟していた苦しみもさほどなく、マリナは崖の上に辿り着いていた。
「――」
しばし呆然と山小屋を見つめていたマリナは、立ち上がった。その顔には、ゆっくりと実感と笑顔が広がっていく。
「今日は、勝利のお弁当が食べれますね！」
その味は、格別に違いなかった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2014年11月11日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年11月18日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年11月18日 11時00分
