秋の散策～九夜山周辺～｜リアクション

秋の散策～九夜山周辺～

　散りばめられたビーズのような星々が、輝きを強くしていく。

「おおー、ここからやったら陸海空すべて見えますね……！」
　夜の展望台。空も海も森も暗く、街の光は遠い。月が大きく見えた。七瀬の言葉に六も感嘆の息を零す。
「すごい……こんなに見えるものなんだ」
「手を伸ばせば、掴めそうな気がしますね！　ダメ元で手を伸ばしてみましょうか！」
　七瀬が子どものような笑みを浮かべて、その両手を空に向かって伸ばした。六がつられたように、頭上の星の一つへと意識を馳せる。
（ああ、本当に手が届きそうな気がする）
　気付けば六も、七瀬の真似をしていた。
　理屈ではなく、衝動だ。
　しかし届くと思えた時に手を伸ばす――そして伸ばした時、指先には何かが確かに、触れようとしているのかもしれない。
　不安定で不確実で不可思議ななにか――それが六の中で不如意のさざ波を立てる。
　しばらくして腕をおろした時には、六の中に描きたいものがおぼろげに現れていた。
「なんかいいですね、こういうの」
　少し照れくさそうな、しかしほんわかした笑みの七瀬。
「肩車したら、届きますかねー」
　肌に触れる風は、すでに冷たくさえある。
　でも全然、寒くなかった。

「あの、聞きたいことがあるんだけど」
　星観を堪能し、そろそろ帰ろうかという時刻、六が言った。
「倉前くんと僕は……友だち、なのかな？」
　涼しくなってきた夜気の中、六の言葉に七瀬は目を瞬かせた。
「友だちでしょう？」
「……そっか」
（こういうのが友だち、でいいんだ）
　不思議そうなその声に、六は胸の内に温かいものが広がるのを感じた。照れくさそうに、口元を手で押さえる。良かった――と、星をもう一度見つめ、六は七瀬に言った。
「ありがとう」
「？」
　はて。
　六に礼を言われるようなことがこの問答にあったのか――読めない流れに、七瀬は的を得ぬ顔のまま、首をひねるのだった。

　ゴンドラが、登山道入り口に着く。
　星観の時間はあっという間だった。
「いやー、楽しかったですね！」
　耳福池への道を歩きながら、七瀬が目を細めた。

「今日は、その、誘ってくれてありがとう。星、きれいだった。見れて良かった」
「綺麗でしたね。僕は暇があったら本読んでばかりですけど、たまにこうして出かけるのも悪くないですね。六、また一緒に出かけましょうね」
「うん、こちらこそよろしく」
　表情柔らかく応えた六がその時、ふと思案する。
「本、どんなの読んでるの？　おススメがあったら教えて欲しい」
「……六は本に興味が？」
　七瀬が興味をひかれたように――そして、嬉しそうに続けた。
「やったら、次は本屋にでも行きましょうか」
「ああ、この町の本屋さん。まだ良く知らないから助かるよ」
　二人は語らいながら、寮へと戻っていく。
　その後ろを、猫が通り過ぎていった

　誰もいなくなった道。今度は動物たちの通り道。
　深夜を回り、ヒトの街には静かな時が流れていく。
　月や星が、夜闇の海を泳いでいく。
　やがて、水平線の向こうが白み始めてきた。
　新たな一日の始まりに、相違なかった。

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あとがき

担当マスター：叶エイジャ
ファンレターはマスターページから！

このたびはご参加戴き、ありがとうございます。
叶エイジャです。
秋の休日、九夜山周辺での時間はいかがでしたでしょうか。

初シナリオということで、アクションを拝見するまでがとても待ち遠しかった記憶があります。
そしてアクションを戴いてからは、寝子島の地図とのにらめっことなりました。
早朝、午前、お昼前後、夕方や夜など、その時どなたがどこを歩いていて、あるいはどんなことをしているのか
そんなことを思いながら、楽しく書かせていただきました。
アクションでやりたかったことを、少しでもリアクションで返せていたのなら、嬉しく思います。

NPCのJ氏と絡んで下さった方、ありがとうございます。
性格等はそれほど明記しておらず、アクションが掛けづらい面もありましたが、皆様の影響により清掃活動に加わることとなりました。
清掃活動については、当初の想定よりも多くの方が参加され、山も綺麗になったのではと、思います。

今回、私の方で執筆速度等が遅く、御迷惑などお掛けした場合、本当に申し訳ありません。
チャンスを戴けるのなら、また次回以降、皆様とお会いできるのを楽しみにしつつ、ここであとがきを締めさせていただきます。
今回はご参加、ありがとうございました！

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