想いが籠ったお弁当｜リアクション

想いが籠ったお弁当

　青地に白い水玉のパジャマを着た小山内海が台所でサンドイッチ作りを始めた。挟む具材は皿の上にすでに用意されていて、それらを手際よく挟んで適当な大きさに切り分ける。
　ハムサンドにはハムとキュウリを加えた。卵サンドの具はゆで卵を刻んでマヨネーズと和えた。山登りを考えて少し塩味を強めた。ミックスサンドはトマトにレタスを重ねる。少し間を空けてスライスチーズを挟んだ。
　出来栄えに海は、うんうん、と目尻を下げて頷いた。
　冷ました唐揚げを容器に詰めると、次はハンバーグに取り掛かる。ボウルに牛と豚の合挽き肉を入れた。微塵切りにしたタマネギに各種の調味料を加えて手でこねる。
　そこで思い出したかのように急いで手を洗った。海は冷蔵庫から山芋を取り出し、適当な量を摩り下ろしてボウルに加えて練り込んだ。出来上がった生地を小分けにして掌に交互に叩き付けて余分な空気を抜いた。
　フライパンには油を敷かず、生地から滲み出る油分を利用した。フライ返しで頻繁に引っくり返す。焼ける音の変化を聞き逃すことなく、ハンバーグをクッキングペーパーの上に手早く置いていった。
　口直しの意味で後からポテトサラダを付け加えた。各料理を入れ物に収めて結構な量の弁当をリュックサックに詰め込んだ。海は背中に背負って重さを確かめる。うん、と笑顔で頷いた。

　海は外出用の服に着替えた。淡い黄色のワンピースの上に白い薄手のコートを羽織る。サイドテールには青いリボンを愛らしくあしらった。
　持っていたスケッチブックに今の気持ちを書き込む。
『かたなくん、ちとせちゃん。わたしのおべんとうをたべて、おいしいっていってくれるかな』
　自身の書いた文字を見て最後の『かな』を鉛筆で塗り潰した。
　海は窓外の青空に向けて微笑んだ。