映画村から逃走したもの｜リアクション

映画村から逃走したもの

【ほんとうにそれでいいのか？】

「キヒッ？」
　古来原始（こらいげんし）のアシヤは変電所に向かう途中、草むらから気配がしたのでそこへ念力を飛ばしてみることにした。
　土偶の目がきゅぴーんと光り、うねうねと妙な波がそこへ襲いかかる。
「うなぁ！　なのだ！」
　がさり。
　草むらから現れたのは、後木真央だ。
　頭に競泳用ゴーグルを着用し、リュックと背中の間に金属バット背負う。後ろの方に転がっているのは自転車のようで、ここに来るために使ったもののようだ。
　なお、衝撃によりアシヤの前に出てくるような形でこけてしまった。
「キヒッ？」
　いぶかしむようにアシヤは真央をのぞき込む。
　真央には、ちょっと風呂に入ってない汚臭と黄色い歯が見えるその顔がダイレクトに見えるわけで……。
「ひぃ！　目くらましで接近してあの変な土偶粉砕という完璧な作戦が台無しなのだ！」
　ぶんぶんと首を振って拒絶を示す真央。
　ついでに、背中にしょっていた金属バットを取ろうとしてリュックで思いっきりアシヤを殴ってしまう。
「食らえ、なのだ！　って違った！」
「キフッ？！　ウォォン！」
　妙な声を上げるアシヤ。
　そのとき、ぽーんとリュックから何かが滑り落ちてきたのに二人は気づかなかった。
「！？」
　真央めがけて土偶からビームが放たれる。
　しかし、そのビームはリュックから滑り落ちてきた目くらまし等用痴漢撃退用スプレーと自作胡椒爆弾にヒットし、二人を巻き込む形で周囲に霧散する。
「キヒッ？　っくしゅん！　シャァァァァア！　辛い！　辛い！」
　アシヤが苦しみ、うっかり土偶を取り落とす。
「うにゃぁぁぁなのだ！　辛いしつらいし、っシュンッ！」
　真央も目を腫らしながらくしゃみに唐辛子に……。
　なんというか、色々とそれで良いのか？　という感じである。
　そして……ぱりん、とむなしい音が響く。
「あぁぁああああああっ！　キ、キヒィ！」
　見れば、無残に飛び散った土偶が。
「や、やったのだ！　ＮＭＲ（寝子島ミステリーレポート）発動での勝利なのだ！」
「帰る！」
　バフッという音とともにアシヤはフィルムに帰って行った。
「……いけそうな気がしたのだ！　色々考えてたけど倒したから無問題なのだ！」
　……こうして、アシヤは倒された？　のであった。