映画村から逃走したもの｜リアクション

映画村から逃走したもの

【ヤマダの最後】

「予想通り面倒な事になったなぁ」
　そう仮面の下で斗南がつぶやいたのは何度目であろうか。
「法螺貝、来るぜ！」
　都々の声と同時に、斗南は大きく後退する。
　今炎をぶつけても巻き返されるだけだ。
　ブォォォォン！　ブオォォォン！
　辺り一帯をすさまじい真空波が駆け抜ける。
「さすが、ヤマダ……劇中の屈指の謎の男だぜ！」
　エノコロ岬の辺り一帯はずたずたである。
（そろそろ完全に気を引けたんじゃないか？　後は……）
「ぬぅ、あの法螺貝は真空法螺吹！？　……『知られざる極意、法螺吹き漢』（寝子島書房刊）を思い出す」
　中国に伝わる法螺男の話である。後の世に法螺として言葉が伝わってる云々な内容であるが、割愛する。なお、法螺貝の法螺の部分はその漢の唇そっくりだからそうつけられたからというが、真実は分からない。
　さて、その法螺貝の吹いた隙を突いて円は一気にヤマダに肉薄する。
　ちゃっかりトンファーをつけて、威力の補正もばっちりだ。
（練習で染み付いたにゃーくんの猫パンチ！　トンファーであの動き生かす……今がその時！）
　ブンッ！　と高速の一撃がヤマダにめり込む。
　ぐりっとえげつない音がする。
　猫パンチは、修練すれば相当な威力となるとどこかに書いてあった気がする。
「！？」
　ヤマダの体が折れるように曲がる。
「今だ！」
　その隙を見逃さず、都々が一撃を入れる。
　そして、ヤマダを炎が包み込む。
「……とどめ、だな」
「ほほーアメリカの映画の登場人物みたいだぜ」
　その能力に都々がコメントを言う。
　とどめを刺したのは、斗南の炎であった。
　ボフッという音とともにフィルムへヤマダが戻っていった
「終わったかー」
　円がぼんやりとつぶやく。
　かくして、ヤマダとの戦いは終わったのであった。

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