映画村から逃走したもの｜リアクション

映画村から逃走したもの

【唯一、原作を知るもの？】

「いや、それが。主人公が基本卑怯……というか、変わった考え方をしているんだぜ」
「ふむふむ」
　ヤマダのところに行く途中、煤内都々は桜庭円と合流した。
円は修の情報を頼りに都々から積極的に情報を引き出していた。
「主人公は、浪人なんだが、基本的には相手が全力を発揮する前にさっさと倒す。すげぇだろ？　またたくまに斬られるんだぜ？　どっちが悪役か分かりやしないぜ」
　映画が好きな都々、いったいどこで映画を見る機会があったのか気になるところである。
　円は、うまく質問して情報を引き出していく。
「ふ～む、例えばネコッターで話題になった忍者さんとかは？」
「相手とすれ違いざまにばっさり、だ。作品評ではその一瞬の静と動をうまく表現しているという評だ……あれ、もう五〇年以上前の作品なんだぜ……」
　なるほど、と円は頷きながら一つ思い当たることがあった。
「ということは、だ？」
「うん？」
　怪訝な顔をして都々は円を見た。
「ひょっとして、相手の目的って全力を出し切って戦って負ける事じゃ……ないかな？」
「そういえば、監督は使わないけど役者のために書いた設定や強さの指針だけはあると言ってた覚えがあるんだぜ……まさか」
「……気づかなければよかったかも。ねぇ、何か思い当たることは？」
　円にそう聞かれて、都々はう～むと首をかしげるも、思い当たるものはない。
「ひょっとしたら、自己満足的に消えたり何かおこったりするかもね」
「ふむ」
　そんな事を話しつつ、円は情報を修に送りつつ、エノコロ岬に着いた。
「あー……1回戦闘あったみたい」
「らしいじゃねぇか」
　二人は、ずたぼろになっている土やら草やらを見て、その先にいるヤマダを見つけた。
　そのヤマダは灯斗南と会話しているようだ。
「おとなしくフィルムのなかに戻ったらどうだ？」
「（拒絶の意）」
「……なら、仕方ない」
　今にも戦闘に突入しそうである。
「くっ、急がないとあいつもやばいぜ！」
「あ～パス、ちょっと思いついたことがある！」
　都々は怪訝な顔で円を見る。
「と、言うわけで彼を助けるのだ！　煤内くんが！」
「俺か！」
「ユーだ！」
「言い方変えても同じだぜ！」
　突っ込みつつも、助けに走る都々、それを見守る円……さて、何が起こるのだろうか。
「ふふふ、今こそ雨の日の修行の成果を試すとき！　にゃーくん！　ボクが寝子島書房実践読者、桜庭円である！　……って危ないから待っててくれてるんだ！」
　大丈夫だ、きっと！！

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