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彼岸の門のその向こう
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叢雲色した髪に半ば隠れた眼鏡を指の腹で押し上げ、
浅葱 あやめ
は土色した鋭い瞳に黄昏の町を映す。薄暗い光に満ち、人ならぬ妖が跳梁するその癖、妙に明るい町の雰囲気に圧し負けるように、猫背の背中が余計に窄まる。
(まぁ……不思議なこともあるものですね……)
陰気な溜息をひとつ吐き出し、山門を潜る。
人とは違うかたちした者達を、眼鏡の奥に隠した瞳で観察する。
(演技や脚本の参考になるかも知れませんし)
人とは違う彼らの生活様式や動き方は、社会人小劇団『イーリス』に役者兼小道具として所属するあやめとしてはとても興味深かった。
紅色千本格子を挟んで繰り広げられる艶めいた色恋沙汰も、妖同士の乱痴気騒ぎも、全て物静かな観察の瞳のままに通り過ぎる。
誰との関わりも避け、ただ歩みを進める。
人と接することは苦手だった。地味で陰気で目つきも愛想も悪い、こんな自分に深く関わってくれる誰かが居てくれるとは思えなかった。
それでも、
「あれ、君も迷い込んだのかな?」
妖ばかりの町で、声を掛けてくれる誰かが居てくれるのは嬉しかった。それが自分と同じ、人間の姿をしているものであれば、尚更。
「……僕、ですか?」
「そうだよ、君だよ」
古びた一軒家の軒先に置かれた竹製の長椅子に座り、禿頭単眼の老人と将棋に興じていた明るい栗色の髪と瞳の中年外国人男性がひらひらと手を振る。
「今日は。いや、今晩は、かな? どっちだろうねえ、御隠居」
「んあ、どっちじゃろうの」
将棋盤を単眼で睨んで唸る老人に話しかける様は、まるでずっとこの町に住んでいたかのような堂々たる馴染みっぷり。
長考に入る単眼の老人をどうにも憎めない風貌で眺め、
ピーター・ビアズリー
は途方に暮れたように道端に立ち尽くす大人しげな青年に人懐っこく笑いかける。
「一緒にどうだい?」
「あの、でも……」
言い淀む青年に、まるで旧知の仲の者にするように長椅子の隣を軽く叩いて示す。
「こんな不思議な場所で出会ったのも何かの縁じゃないかなあ」
飄々とした明るい茶色の眼に笑まれ、あやめは男性の隣にそっと腰を下ろす。
「おじさんね、
ピーター・ビアズリー
って言うんだ。君は?」
「……
浅葱 あやめ
、です」
「よし、これでどうじゃ!」
「はい、じゃあここをこうかな」
渾身の一撃とばかりに老人が打った駒を軽く眺め、ピーターはルールもよく知らないままにその場のノリで次の駒を進める。
「お知り合い、ですか?」
「御隠居かい? いやあ、町をうろうろしてる最中に出会って仲良くなってねえ」
単眼を歪め、再度の長考に入る老人の傍ら、ピーターは老人に教えてもらったと言う、道を挟んだ向かいに在る小さな店を指し示す。
「土産物屋らしいんだけど、何があるのかな?」
「土産物、ですか?」
あやめが猫背を僅かに伸ばして見れば、店の台に並んでいるのは数え切れぬほどの小さな箱。箱を飾る螺鈿や漆が黄昏の光に眩く煌く。
「御隠居、ちょっと見て来てもいいかな?」
「行って来い」
ピーターが身軽に立ち上がる。行き交う物の怪達の間を擦りぬけ、ひょこひょこと道を渡り始める。
当たり前のように手招きされて、あやめは慌てて立ち上がる。土産物屋の立て看板が置かれた店の前、ピーターの隣に立つ。
壁際の棚にもびっしりと並ぶ、ひとつひとつが丁寧に作り込まれた小箱。小箱の傍の紙を手に取って見れば、墨痕鮮やかに書かれているは『め』の文字。他の箱を確かめる。それぞれに『あし』『みみ』『て』、人体の名称。
「中身に興味はあるのだけど」
ピーターが面白そうに首を傾げる。小箱に埋まった店内を見回せば、店の奥には貼紙一枚。
「『どれでもひとつ、恋心一月分』。差し出すには惜しいねえ」
彫りの深い顔をちょっと顰めて思案していたかと思うと、ピーターはふとはにかんで頭を掻いた。
「かみさんの話をするだけなら、いくらでもしてあげられるけれど」
「かみさん、ですか」
「結婚してからだって、毎日恋心抱いているようなものだし」
とぼけた口調でサラリと惚気る。
「そういえばかみさんと一月ほど船旅に出たこともあってねえ、どんなに嵐で揺れても、かみさんケロリとしててねえ……」
「それ、くれるん?」
ピーターおじさんの惚気話を遮って店の奥から現れたは、日本人形じみた容姿の少女。着物の袖を揺らし、ピーターとあやめの傍に小走りに寄る。
「……おっと」
少女の黒い瞳に見上げられ、ピーターはおどけた仕種で口を隠す。
「この想い出はあげられないけどね」
ピーターは生真面目な顔で頷いて見せる。
「……こいごころひとつきぶん……」
あやめは細い指先を小箱に伸ばす。精緻な螺鈿細工の施された箱の面にそっと触れる。何よりも心惹かれたのは、その値段。
(『支払う』と、どうなってしまうんだろう)
牡丹の花の細工を指先でなぞる。
(これをいくつ買えば、)
――もう恋をせずに済むのだろう。
今まで、好きになるのはいつだって同性である男性ばかりだった。
好きになった人に、気持ち悪がられるのが怖くて、だから、好意を抱いた人に近づくことを避けた。
なけなしの勇気を出して近づいても、友人以上の関係にはならなかった。なれなかった。
最初から最後まで絶望しかない恋ばかりをしてきた。
恋することに怯えるそのうち、普通の人付き合いにも踏み込めなくなった。自分が『そう』だと人に知れることが怖かった。
人に嫌われることが、怖かった。
何の躊躇いもなく愛する人との想い出を語ることのできるピーターが羨ましかった。
(恋心を手放せば、辛いばかりの恋はもうしなくていいんだろうか)
代わりにただ一人の人と愛し合う希望も無くなるのかもしれないけれど、それでも。
誰かをまた好きになってしまうのが、怖い。
「……すみません、これ、を、」
諦める勇気すらない自分では、きっと何も得ることはできない。
ならばいっそのこと、奪われてみよう。
『あし』と書かれた箱を示す。日本人形の少女は陶器じみた手で小箱を取り上げ、あやめに差し出す。
開けろと示され、小箱の蓋に手を掛けた瞬間、あやめは最初に人を好きになったその瞬間からの、初恋の人への一月分の恋心を、忘れた。
残るは恋に落ちた切欠を忘れた、二月めからの恋の記憶。
胸に黄昏色の穴が空いた気がして、あやめは切ない息を吐き出す。
失ったものの代わりに手に入れたのは、精巧な作りの掌大の人形の足。
何の役に立つとも知れぬ人形の足を掌に、あやめは少女を見下ろす。
「他にも種類がいるなら、」
万が一失っても仕事に支障のない記憶から、と言おうとして、
「面白い町で後ろ髪惹かれるけどねえ」
ピーターに肩を叩かれ制された。俯いて掌の内を見つめれば、掌の中、動かぬはずの人形の足が一本足でぴょんと立ち上がる。あやめの掌から跳ね出した足は、恐ろしいほどの跳躍力で黄昏色に染まる家の屋根にまで飛び上がる。逃げてしまう。
「あやめ君、帰ろう」
動じないピーターにのんびりと腕を引かれ、あやめは肩を落として歩み始める。
「御隠居、勝負はお預けに」
「んあ、気ィつけてなあ」
将棋盤を睨んだまま、なおざりに返事する老人に手を振り、町を離れるべく躊躇い無く歩き出して、
「ん? ありゃ、紛れ込んだかな?」
袖口からころり、将棋の『歩』の駒。
転げ落ちた『歩』は、そのままコロコロと妖の町を転げて逃げて、黄昏に行方をくらませる。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ★(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年10月20日
参加申し込みの期限
2014年10月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年10月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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