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彼岸の門のその向こう
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火の色した空を見上げ、赤い花の色に染まる橋と山門と、その向こうの町を見晴るかし、
獅子島 市子
は眼鏡に隠した漆黒の眼を歪める。緩く三つ編みにした髪の端を指先で背中に弾き、面倒くさそうに踏み出す。
欄干に腰掛け、橋の下を眺めて酒を飲む猩々面がつと顔を上げる。以前見かけたことのある男と目が合った途端、市子は露骨に嫌な顔をした。
「……ホント困んだけどこーゆーめんどくさいの」
「まァ、迷うてしもたらどないしょもあらへんわ」
他人事のように笑う猩々面の男の様子に、何を問うても応じる気がないことを見て取る。呆れて息を吐き、諦めて町へと足を向ける。
(いちおー見て回っけど)
何であれ、此処が何なのかは把握しておきたい。
無関心を装う癖にお節介な猩々面が町に関する注意点を言って来るのに片手を振って応じ、山門を潜る。
浮世の憂いなど全て忘れ、その日を面白おかしくただ騒いで賑やかに生きるばかりの物の怪が行き交う町を巡る。
青白い光を閉じ込めた燈籠を並べる店を横目に過ぎようとして、夜の湖の水の色して光を揺らす灯篭に掛けられた値札が眼に留まった。値札には『今迄に見た今迄で一番美しい朝陽』。
(そー言や記憶がどーのこーの)
月夜の底じみた店の前、ふと湧き上がった寂しさに足が竦んで、
「……あ、しいちゃんじゃんか」
こんな怪異に溢れた町では聞きたくなかった知人の声を、傍らに聞いた。振り返れば、夕風に乱れる髪を紅茶色に染めて、
壬生 由貴奈
が立っている。
行き来する奇妙な住人に一抹の怯えも見せず立つ友人の姿が夕暮れの町に溶け込んで行きそうに見えて、市子は思わず手を伸ばす。指先を友人の頬に触れさせる。
「……ユキナ?」
「うん」
「ホンモノか?」
「多分ホンモノかなぁ」
訝しげな市子に頬や肩に触れられても動じず、由貴奈は眠たげに瞼を擦る。市子はちらりと笑う。
「ジョーダンすよ」
「偶然だねぇ、こんなとこで会うなんて」
知人が怪異に遭うのは嫌だった。けれど今は、会えて嬉しかった。傍に居る事が嬉しかった。
「またまた、エライとこに迷いこんじゃったねぇ……」
由貴奈は猩々面の男に言われた通り、町を見て回っていたらしかった。
「まぁ、立ち話もアレだし、そこのお茶屋さんでも行こうよ」
見知った町を案内するかのように誘われ、朱色の野立て傘が店前に林立する茶屋に入る。緋毛氈の敷かれた椅子に座れば、額に角生やした老人が熱い茶と団子を運んでくれた。
「なぁ、じーさん」
市子のもの言いたげな視線に、老いた鬼は御代なんぞいらねえよ、と手を振る。
「……しっかし、奇妙なところだよねぇ」
「……ホント、めんどくせーし」
団子を齧る由貴奈の隣で、市子は不貞腐れた顔で茶を啜る。
「旧市街にもお茶屋はあるけど、なんていうか、雰囲気が違う」
由貴奈は黄昏の色に染まる市子の横顔を見る。
いつか見た夕暮れの色に染まる友人を見ているうち、あの夕暮れに染まる鳥居の向こうで会うた懐かしい二人の横顔が脳裏を過ぎた。夕暮れの中の二人は顔を覆う仮面を掛けていたけれど、今隣にいる友人は素顔のまま。
「前にも、こんな色の場所に迷い込んだことがあってねぇ」
夕暮れの縁日で会った二人を思い出して、ぽつり、口に出せば、傍らの市子が少し驚いたように眼を瞬かせた。真直ぐに見つめてくる市子の瞳に、由貴奈は僅かに笑いかける。
「あの場所ではそんなことはなかったけど、ここは長居すると記憶を喰われるときた」
「あー、町に喰われるとかつってたっけ」
人を食った態度の猩々を思い出し、店の前を賑々しく行き交うナニカを見遣り、市子はゲンナリと肩を落とす。
夕暮れ色した鳥居の向こうの場所の話に少し驚きはしたものの、同類である由貴奈とは、それ故かその為か、境遇が似ている。置かれた場所が同じであるなら、同じような経験にも遭い易いのかもしれない。
「タブンあたしも同じとこ行ったわ」
同じ場所に迷い込み、同じように懐かしい、けれどもう会えぬはずの人に会うた二人は顔を見合わせる。ほとんど同時に笑む。
市子は一向に冷めぬ茶を啜る。
「記憶と引換えにモノ売る店のアイツらさ、町に食わせるてめーの記憶がもうゼンブ無いからモノ売ってんのかな」
「しいちゃんはどう思う?」
道行く人ならぬ者を眺め、由貴奈は小さく問う。
「自分の記憶と引き換えに何かを得るって行為さ」
市子は茶の水面に視線を落とす。
「……あの家」
「パルラ・フラーマのしいちゃんち?」
「暫く寄り付かなかったろ、あたし」
市子のためにと用意された星ヶ丘の高級マンションのその最上階に、由貴奈は住んでいる。
「どーしても自分の家って気がしなかったっつーか」
亡くなった祖母と共に住んでいた家は焼失している。パルラ・フルーマのその一室は、祖母の家が焼けるよりも以前に、まるで市子が家を失くすことを見越していたかの様に用意されていた。
「だけどココんトコ、……少し分かるんよ、婆サマのキモチ」
孫である自分を置いて逝かなければならないことを、祖母は理解していた。そうして多分、一人きりにならざるを得ない孫の気質も。
「ユキナ。あたしさ」
祖母は――
「なんでもねーし」
茶の水面に映る黄昏を、市子は白い喉を晒して一息に飲む。
大事な事を、言いたいと思った。言いたくないと思った。
(言ってしまえば、)
言えない、と瞳を伏せる。
唇を噛んで俯く市子を見、由貴奈は黄昏の空気を振り払って立ち上がる。
「さ、長居すると記憶喰われるっておっちゃん言ってたし、さっさと帰ろっか」
由貴奈に言われるまま、市子は空になった茶碗を空になった皿の脇に置く。立ち上がろうとして、町から去ろうとして、立ち上がれなかった。
町を見晴るかす。
親友を見上げる。
(コイツが居なきゃ誰かと馴れ合うコトもなかった)
町に流れ込む紅の光が眩くて瞼を閉ざして、寝子島で知り合い、親しく思うようになった人々の顔が思いがけず過ぎった。
瞼を開けば、その親しく思う人々の象徴が立っている。
(でももうすぐ)
「……しいちゃん?」
離れたいわけがなかった。
忘れたいはずがなかった。
(でも)
不思議そうに覗き込んで来る親友の瞳を、やっとの思いで見つめる。
(ねえ、)
言おうとした言葉を何度も飲み込む。
(どーすりゃいーかな)
「教えてよ」
言えたのは、それだけ。
人ならぬ者の町の真中に座り込み、迷子じみて竦んで動けなくなる市子を、由貴奈は見下ろす。眠たげに微笑み、手は差し伸べずにもう一度傍らに並んで一緒に座る。
「……この空気って気怠くて、ずっとぐーたらしてたくなるんだよねぇ」
市子は由貴奈に縋るような瞳を一瞬見せて、それを気取られまいとするかのように瞳を閉ざす。
由貴奈はもう一度微笑む。はっきりと、告げる。
「けどこの世界はうちらが居るべきとこじゃないよ」
だから由貴奈は躊躇い無く橋から降りるつもりでいる。
けれど市子はどうなのだろう。
「それでも、どうしても戻りたくないって言うなら、止めはしない」
突き放すが如く言いつつ、市子の手を掴む。ひどく冷えた手を温めようと両手で包む。
「逆に、少しでも戻りたいっていう気持ちがあるなら、引っ張ってでも連れ帰る。うちがやれることは、それだけだよ」
由貴奈が手を引くに委ね、市子は立ち上がろうとする。
安堵の笑みを見せてくれる親友の手が温かくて、帰還を果たそうと立ち上がる己の真実が黄昏に眩んで見えなくて、市子は親友の腹に抱きつく。
帰るから、と呟いて、笑い、――泣く。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ★(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年10月20日
参加申し込みの期限
2014年10月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年10月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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