怪人セブンの断罪｜リアクション

怪人セブンの断罪

【土曜日：日中　シーサイドタウン駅　ユニコーン・３】

　沢木が出勤しているのを確認すると、調査班は早速行動開始。
　後木のICレコーダーは、その殆どが雑音で人の声を判別できなかった。
「勅使河原、頼む……」
　如月に促され、勅使河原は右目を手で隠す。そのまま沢木を注視。
「――」
「どうだ？　何か見えるか？」
　水都乃の問い掛けに、首を振る勅使河原。
「……違います。何も見えません。ただの『ひと』です」
　一同、安堵の声が漏れた。
「じゃあ何で沢木さんは人が変わってしまったんだろう？」
　奈良橋の疑問に、三ヶ島がずいっと顔出す。
「こういう時こそ新聞部の出番だよー！」
　そのままダッシュで沢木のもとへ！
「寝子高新聞部の取材への協力をよろしくお願いしますだよー！！」
「懲りないな、お前ら！」
　今日も沢木はご機嫌斜めだ。
「今日が最後にするよー！　沢木さん、力を手に入れたって何の事かなー？」
　三ヶ島の執拗な取材攻勢に、遂に折れた沢木。
「聞いて驚け！　俺は宝くじで億単位の金が入ったんだ！　金はすげー力を与えてくれる！　一生働かずに済む！　俺は今日でここ辞めて、投機で食っていく！」
　がははと高笑いする沢木に、一同、困惑気味。
「運が良い奴が世の中生き残るのさ！」
「沢木さん、宝くじ当選おめでとうございます」
　水都乃はスケッチブックから一枚の絵を渡す。
　それは鬼の様な顔した沢木の似顔絵だった。
「……貴様の顔は、人間の面ではない。その絵の通りの金の亡者だ」
「ふっざけるな、ガキ！」
　沢木は怒りに任せてその絵を踏み付けた！
　その瞬間、彼の姿は忽然と消えてしまう。
　代わりにトイレから悲鳴が上がった……。
「禊にしては荒っぽいが。運が悪かったな？」
　水都乃、ろっこんの名の通り『とりあえず水に流す』事にした。
　奈良橋はすぐにこの事を情報としてメルマガで伝達。
　こうして沢木が容疑者から外れた。
　沢木にあたっていた者は、そのまま翌日の海浜公園の警備にあたる手筈になった。

「ちぇ、沢木さんは違うのかー」
　三ヶ島と同じく新聞部（非公認）に所属の柏田貴弘は出遅れてしまった。
　ネット得た情報から推理を重ね、ようやく沢木へ辿り着いたが空振り。
「僕の出る幕はないか、残念……」
　帰ろうと思って踵を返すと、そこには純白の髪をなびかせる人物が立っていた。
「やあ、こんな所で何をしているのかな？」
　白亜の人物はにこやかに話しかけてきた。
　柏田はその声に気さくに返した。
「今、ネットで噂されてる偽セブンの事を調べてるんだよ。どうやら、僕の推理は外れちゃったみたいだけど」
　苦笑する柏田を、へぇ、と白亜の人物は相槌を打った。
「本当はセブン本人に単独取材出来たら、新聞部の特ダネになったのになぁ～」
　それを聞き、白亜の人物の口元が愉快だと言わんばかりに歪む。

「――無用心だね。今、怪人セブンが君の目の前にいるんだよ？」

　その人物は大ぶりのハンターナイフを柏田の喉元に突き付ける。
「残念だけど、君はここで脱落だ」
「あ、あああ――！」
　柏田は思わず天を仰いでしまった。