"He who is without sin among you,
let him throw a stone at her first"
――From "The Gospel According to JOHN" Chapter 8
怪人セブンとの『邂逅』から時間が流れ、(身体測定やテオの能力などで騒動はあったが)穏やかなフツウが寝子島に戻ってきていた。
先日のシーサイドアウトレットのボヤ騒ぎが怪人セブンの仕業だと、
ネコ島chで広まっている。
しかし、「所詮はネットの噂」と誰も真に受けていないのが現状だ。
他人のフツウは知らんぷり。
関連しない、関与しない、関知しない。
これらを貫けば、自己のフツウの平穏が崩れることはないだろうから。
今日も無責任に、世界は廻る。
惨劇の開演のベルが、まもなく鳴ることも知らずに――。
【ビギニング】
ある日、ネコ島chに妙に目に付くタイトルのスレッドが立ち上がった。
『怪人セブンだけど何か質問ある?』
>>1 糞スレ立てんなボケ!
>>2 荒らしはスルー推奨
>>1 釣りが下手だなぁ
散々叩かれるスレ主。
誰もが偽物だと思っているようだ。
「偽物が出るほどの知名度ねぇー……」
前回の『邂逅』で、直にセブンの恐ろしさを体感した『原罪の語り部』、
桜庭 円は、スレッドを流し読みしながら苦笑いしていた。
怪人セブン――七男のろっこんによって、その場に居合わせた桜庭以外の人間の記憶は消されてしまった。
七男と直接対峙して記憶を持っている人物は今、この世の中で桜庭ただ1人だけ。
「『君だけがぼくを世界で唯一理解できると確信したから』か……」
あの時の七男の言葉が、今でも桜庭の胸の奥で引っ掛かる。
殺人鬼が生き延びるためには、全ての痕跡や記憶を消し去るのがベストだというのに?
「――本当は、1人ぼっちが寂しいのかな? 理解者が欲しいのかな?」
なんとなく、呟いてみた。確信はこれっぽっちもないが。
その桜庭の手には、1枚の封筒。
手紙には、「このスレッドへ目を通すように」としたためられていたのだ。
宛名は、『親愛なる円ちゃんへ』。
差出人は……。
「怪人セブン、七男……」
今朝、桜庭の自宅の郵便受けに投函されていたのだ。
「何でボクの家を知ってるんだろう……。ああ、そういえば七男はストーカーでもあったんだっけ」
……殺人鬼に家探しされてる!?
思わず戦慄した。
「……でも、相変わらず伝達手段がアナログだよねぇ。それにこのスレッドを読ませる意図が全然分からないよ」
呆れながらも、先程読んだ手紙の内容に眉をひそめている桜庭だった。
――本格的に、怪人セブンのもれいび狩りが始まる。
手紙の内容を平たく言えば、そういうことだった。
そして、今回の断罪のヒントと、タブーもそこに記されていた。
つまり「ぼくを止めて見せろ」という挑戦状だ。
「うーん、流石にこれはボクひとりじゃ無理だー! 誰か、手伝ってくれないかなぁ?」
仏頂面のまま机に突っ伏す桜庭。
彼女は途方に暮れてしまっていた。
――そのスレッドの最新コメントを見るまでは。
【アドヴェント】
翌日、ひっそりとスレッドの噂が広まっていた。
「あのコメント……、もしかして?」
「いや、偽物の妄想だろ?」
「でも、放っておいていいのかなぁ……?」
例の不可解なコメントに、スレッドを閲覧していた生徒たちは首を傾げている。
嫌な予感がする、と、自主的に声を掛けて集まる者。
我関せずと傍観を決め込む者。
噂を聞きつけ、面白半分で調査し出す者。
歯車が、動き出した。
大変長らくお待たせ致しました。
只今より、類稀なる悲劇の開演で御座います。
あるいは、陳腐極まりない喜劇の幕開けで御座います。
どうぞ、最後までごゆっくりご観覧下さいませ。
難易度:地 獄
※難易度については、焼きスルメのマスターページ参照
※この難易度は、乾物のシナリオのみに適用されるものです
※七罪シリーズは一話完結形式です。前回の『邂逅』の参加の有無は問いません。
※前回の参加の有無は、抽選に影響することもありません。
<七男からの手紙の内容>
(パソコンで印刷された文字で書かれた手紙の内容は、以下の通りである)
ハロー? ぼくの理解者の円ちゃん、元気かな?
今日は円ちゃんに知らせたいことがあるんだ。
本格的に、ののこ様に群がる愚凡なもれいび達を排除することにしたよ。
もちろん、ろっこんで悪事を働くもれいびも並行して断罪する。
差し当たっては、次の日曜日にもれいびを裁く予定だ。
大罪は『憤怒』が妥当だろうね。
おっと、警察に知らせるなんて野暮なことはしないようにしてほしいな。
警察に知らせても、記憶を消してしまえば怪人セブンは捕まらないからね。
無駄な労力を割くくらいなら、ぼくの忠告を素直に聞いてほしい。
でも一応、当日は島内の3箇所に爆弾を仕掛けとくよ。
場所はヒミツ。
円ちゃんやその仲間が妙な動きをしなければ爆発はさせないから、安心して。
でも、警察らしき人物を見かけた瞬間にドカーン!だから。
前回は何故か死傷者が出なかったみたいだから、それよりちょっと強力な爆弾にしてあるよ。
……人質なんて真似は取りたくなかったけど、保険は必要だからさ。
そうそう。間違っても、無理矢理に解除しようと思わないでね?
爆弾解除なんて、素人にはお薦め出来ない。責任は取れないよ。
どうしても爆破を食い止めたかったら、ぼくから爆弾のスイッチを奪うことだね。
まぁ、爆弾の場所のヒントくらいは教えてあげるよ。
『人が集う場所に猫と桜と星あり』
関係ない人を巻き込むな、とか怒らないでほしい。
大体、ぼくのやることに巻き込まれる方が悪いんだから。
ぼくは何も悪くない。
さて、本題に入ろうか。
まずは以下のURLを先に見てほしい。
(ネコ島chのURLが載っている)
最近、ぼくの名前――怪人セブンを騙る輩が多くて辟易している。
ぼくは正義の理念に基づいて行動しているだけなのに、世間ではぼくのことを単なる「異常快楽殺人者」なんて貶めるんだ。
本当に失礼だと思わないかい?
円ちゃんからも反論してほしいくらいだよ、まったく……。
で、だ。
残念なことに、寝子島内にもぼくの名を騙る愚者たちが存在するらしい。
しかも、目立っている容疑者が3人も。
既に近所で「ちょっと危ない人」として注目浴びているようだよ(苦笑)
調べればすぐに分かるだろうね。
このうちの1人が、どうやらもれいびのようなんだ。
ぼくはそいつを手始めに裁く。
円ちゃんはその人物を調べて守ってもいいし、我関せずと傍観してもいい。
ご丁寧に旧市街・シーサイドタウン・星ヶ丘とそれぞれ分散しているから、手分けして探したほうがいいかも。
ただし、ぼくが出向くことを考えといてね。
君達だって断罪の対象なんだからさ。
それじゃ、次の日曜日の15時、円ちゃんに再会出来る事を願って。
またね。
七男より
<例のスレッドにあった最新のコメント>
この世界が、大嫌いだ。
この世界に、裏切られた。
私は怒った。勝手に押し付けるな、と
私は怒った。全部、落ちてきた神様が悪いんだ、と。
だから、悪い神様をやっつけよう。
本当のフツウを取り戻そう。
<目的>
怪人セブンこと、七男の“断罪”を食い止めろ!
<PL情報>
これはキャラクターの皆様が現時点で知らない情報です。
これを既知のものにする為には、調査アクションを掛ける必要があります。
調査アクションが見当たらない場合、アクションで指定されても「そのPCは知ることができない」と判定します。
ご注意下さいませ。
(偽セブン容疑者3名。このうちの誰かがもれいび=今回の標的)
【沢木 壱角(さわき いっかく)男性 33歳 寝子島駅駅員】
寝子島駅で働く平凡な駅員。シーサイドタウン在住。
4月の頭辺りから「俺はお前ら凡人とは違う!」と急に高圧的な態度に。
以前から駅長との折り合いが悪いらしい。
シーサイドアウトレットのボヤ騒ぎの日に居合わせていた。
事件直後から、「あれは怪人セブンの仕業に違いない」と書き込んでいた。
【滝川 龍平(たぎがわ りゅうへい)男性 14歳 中学生】
寝子島中学校に通ういじめられっ子。
旧市街在住で中学入学から1年間引き篭っていたが、4月の頭から再登校。
最近、「僕をもっと知ってほしい」と社交的な態度を見せている。
だが、彼と触れ合おうとする者は未だ少ない。
いじめっ子の不良が、泣きながら彼に土下座しているところを目撃されている。
【レディ・ウルフ 女性 26歳】
ド派手な衣装に身を包むセレブ。既婚者。
旦那は海外出張のため、常に暇を持て余している。
星ヶ丘では奇人変人と近所で密かに囁かれている。
四月頭から、レディ・ウルフのハンドルネームでほぼ毎日ストリーミング放送を行っている。
内容はかなり過激。アングラ且つアナーキーな趣向がそれなりに受けている模様。
今週頭、運営からアカウント無期限停止させられたことに対して不満を抱いている。
「世の中、芸術が何か分かっていないわね!」
<!! Caution !!>
・アクション次第では、七男が対象の人物を“断罪”します。
・アクション次第では、仕掛けられた爆弾が爆発します。
・アクション次第では、皆様へ七男の敵意が向けられます。
・アクション次第では、その他予測不能な事態も起こりえます。
描写は水曜日からとなります。
アクションの際には、曜日の感覚もあると幸いでしょう。
<マスターより>
いつもより周波数高いガチ電波系サイコピカレスクなシリアスシナリオをお届けします。
さて、遂に『七罪シリーズ』本編のスタートです。
難易度は『地 獄』。つまり、七男は本気で標的或いは皆様を狩りに行きます。
前回の『邂逅』の判定基準をご参照下さいませ。
ガイドと七男の手紙の裏まで読み取って推理して頂ければ幸いです。
サンプルアクションはあくまでも一例です。
そこにヒントは存在しません。ご了承下さいませ。
『君たちは手分けして容疑者を当たってもいいし、1人に絞って全員で向かってもいい』
無論、向かう人数が多ければ多いほど、七男を退け易いです。
それでは、皆様のアクションをお待ちしております。
怪人セブンを止められるのは、あなただけです。