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走る体と心の温度
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木天蓼大学正門前で、
山野 無花果
は和装の裾を揺らして立ち止まる。
気難しげに顰めた漆黒の眼が捉えているのは、スーツ姿の中年男性。
正門前に陣取り周囲を油断なく見回していた男性が無花果の姿を見止める。
「先回りしてたか」
「逃しませんよ」
呻く無花果に、男性は焦りを含んだ声を掛ける。講義に向かう大学生達の好奇の視線を浴びながら、二人は暫く睨みあう。
先に動いたのは無花果。大きく前に踏み込み、男性の脇を掠めて大学に飛び込むと見せかけ、華麗にくるりと踵を返す。
(原稿どころかネタも浮かんでないのに……)
「待っ……!」
(これは逃げるしかない!)
和装の裾を絡げ、無花果は逃げの一手を取る。
「待てコラ山野ォ!」
必死の形相で追って来る、少女向け小説レーベル『ニャーンズハート』の正体非公開作家『九太郎』の担当編集の手から逃れるべく、無花果は木天蓼大学を離れ、キャットロードを横切る。とりあえず駅に向かって全力疾走する。
「ちょッ、お願いしますから待っ……!」
懇願の様相を呈してしつこく追い縋る担当を炎天下に振り切り、キャットロードを縦横に走る。何とか撒いたかと足を緩めて、和装のはずの足元が女子中学生の制服になっていることに気付いた。傍らの商店のショーウインドウで確かめれば、二十一歳無愛想顔が常な男子大学生の姿がいつの間にか制服姿の可愛い女子中学生の姿に変わってしまっている。
「な……」
硝子に映りこむ自分の姿に絶句する。見覚えがあるなと思って、瞬時に思い至る。この姿は、己が著作『コイネコシリーズ』の主人公だ。
(これは)
無花果はその場でくるり、スカートの裾を涼やかに翻してターンする。ロマンチストな小説家は状況の理解を即時投げ捨てる。
(これは、実体験でネタを探せという神の思し召しか?)
そういうことにしようと一人頷き、少女の姿の男子大学生は家から持参してきたオニギリを取り出す。追っ手に見つかったとしてもこの姿では分かるまいが、編集者の鋭い嗅覚は侮れない。ネタが浮かぶまでまだまだ逃げるに限る。
オニギリを齧り、無花果は駆け出す。寝子島街道を横断し、寝子島シーサイドタウン駅の人通りに紛れてしまえばきっともう見つからない。それに、
(いいネタが落ちてるかもな)
小さな胸に期待を抱いて、オニギリを咥えたまま勢いを落とさず角を曲がって、
「うわ!」
「っ、と」
同じように角を曲がってきた誰かの胸に飛び込むかたちでぶつかってしまった。オニギリが転がる。驚いて見上げた目に、金髪碧眼、優しげな顔した青年の姿が映る。
女子中学生の小柄な体を男子学生の片腕に抱えられ、
「あ、王子様だ……」
恋する女子中学生精神に染まり掛けていた無花果はうっかり胸をときめかせる。
「……え?」
王子様は菫色の眼を眠たげに瞬かせる。
「ええと、ごめん、大丈夫? 怪我はないか?」
容姿端麗のその癖、どこかぼんやりと頼りなさげな王子様の様子に、無花果は己を取り戻す。
(って違う、)
内心で首を横に振る。
王子様、は正確に言えば『新作の』王子様『にピッタリそうなイケメン』。ときめく胸の正体は、美味しそうなネタの素を発見した歓喜。
王子様の正体も、無花果は実は知っている。図書館で時々見かける後輩、
五十士 柊斗
。
「山野さん、どちらですか!」
(うわ、編集!)
追いついてきた担当編集者から顔を背け、無花果は柊斗の腕を逃すまいと掴む。
「王子様、」
「いや俺王子様じゃ」
「悪い人に追われてるんです、助けてください!」
困惑する柊斗の腕を有無を言わせずに引き、逃走を再開する。
見慣れぬ制服の女子中学生に腕を引かれ、去るに去られず、柊斗も再び駆け出す。
(このままでは講義に遅れてしまうけれど)
そもそもここで少女とぶつかるまで走って来ていたのは、うっかり寝過ごして講義に遅れそうだったためだ。
(振りほどくのも少し可哀想かな)
夢見が悪くて寝付けなかったとは言え、寝坊した自分が悪いのだし、と自罰傾向の強い青年は講義出席を諦める。
助けてと言ったその癖、率先して先を走る少女の背中を見やる。
明るい昼日中の街路を見回す。夏休みを楽しむ学生達、仕事に勤しむ大人達、必死に誰かを探す人の良さそうなスーツの男性、少女の言う『悪い人』らしき影は見当たらない。正直どこか楽しげな少女よりも、泣き出しそうな顔で汗に塗れて誰かを探すスーツの男性の方を助けてやった方がいいのでは、とちらりと思う。
「ねえ! 恋したこと、ある?」
息を切らして走る少女が唐突に投げかけてきた問いに、柊斗は眉を顰める。そんなことよりも、今走っている詳しい理由やどこへ行くのかが聞きたい。
(でも、話したくないのなら深く追求しない方がいい)
引き摺られて走るその距離と同じに、少女との距離を保って走っていて、でたらめに角を曲がろうとした少女が誰かとぶつかりかけた。
「うわ!」
「わ!?」
「あいやー」
前につんのめる少女の体に引き摺られ、柊斗は少女の手を振り解けずに一緒に転ぶ。
角で少女とぶつかりかけた小さな子供は、けれど子供離れした反射神経で大きく後に跳躍する。勢いを殺さず小さな身をしなやかに翻し、後に宙返りする。
頭の両端で纏めたお団子から零れた艶やかな黒髪が揺れる。猫のように細めた瞳は、青紫に翠挿す不思議な色。
「ごめん、平気か?」
押し倒す格好になってしまった女子中学生と、ぶつかりかけた女子小学生に謝り、柊斗は慌てて身を起こす。
「るいり、平気」
小学生は二人と瞳を合わせず小さく頷き、逃げるように駆け去る。
地面に這ったまま、美しい瞳の小学生を食い入るように見つめていた少女が夢から覚めた風情で立ち上がる。
「ほら、急いで」
「待って、ちょっと止まろう」
再度柊斗の手を取り走ろうとする少女の足をどうにか止めさせる。誰かから隠れようとするかのように電信柱の影に身を潜める少女を、ならばせめて気の済むまで隠してやろうと、柊斗は少女を背に庇う格好で立つ。
今度こそ走る理由を問おうとして、
「ねえ! 何か恋ネタ持ってない?」
逆に胸倉を掴まれる勢いで問い質された。
「王子様な見目だから何かネタの一つや二つは持ってるでしょ? 持ってるわよね?」
「……ないよ」
「使えないわね」
少女は少女らしからぬ物言いで、用済みとばかり柊斗を突き放す。
「あ、でも恋をしたことない内気な王子様とヒロインとミステリアスな美幼女の三角関係とかいいかも」
柊斗には訳の分からないことを呟き、少女は大きく頷く。
頷いた少女の姿がふわり解ける。解けて、大学図書館で会った事のある和装の先輩になる。
「お、戻った。成程、ネタが降ると元の姿に戻るのか」
「……良かったですね」
あっけらかんと己が姿を確かめる傍迷惑な先輩に、
(放っておいて講義に行けば良かったかな)
柊斗はこっそり内心で思う。やや疲れ気味な笑顔を向けた途端、
「お前は何も見てないからな」
元少女の現男子大学生に、仏頂面で念を押された。言うだけ言って、無花果は真夏の逃走劇を再開する。
「先生、後生ですから! お願いですから!」
悲鳴を上げる編集も、呆然とする柊斗も捨て置いて、急いで帰ってネタを調理しなければ。
例え後日、五十士と女子中学生が愛の逃避行!?、という目撃談を聞こうとも知らぬ存ぜぬを決め込もうと決意を固め、九太郎先生は走る。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
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ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年09月24日
参加申し込みの期限
2014年10月01日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年10月01日 11時00分
参加キャラクター一覧
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