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走る体と心の温度
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瞬いても瞬いても、視界が晴れない。どこを走っているのかも分からず、けれど
後木 真央
は必死に両手足を動かす。もがくように走る。そうしないと追いつかれる。
(ううん、)
違う。追いつけない。
足元に黒煙が絡む。酷く熱を孕んでいるのに見えない地面を見る余裕もなく、ただただ空気を掻いて疾走する。
追いつかなければならない。
逃げなければならない。
(捕まったら、)
それを考えると顔が歪む。
(相手に逃げられたら、)
その後どうなるのかを思うと心臓が破裂しそうに怯える。
(だから、……だから、)
「起きろ、後木ィ!」
「ぎゃわっ!?」
額に衝撃を感じて瞼を開いて、木洩れ日を背負って立つ陸上部の先輩を仰ぐ。汗が頬や顎を伝い落ちる。
「あれ?」
「あれ? じゃない」
額にチョップを見舞わせた手を振って先輩が苦笑して、真央は今が陸上部の練習中の小休憩だったことに思い至る。
「木陰とは言えこの暑い中で、しかもこんな短時間によく寝られるな」
「真央ちゃんもビックリなのだ」
顔中の汗をタオルで拭い、真央は満面の笑顔を浮かべる。呆れ顔でもう一度チョップしようとする先輩の手から逃れ、グラウンドに飛び出す。
真央を追う形でランニングを再開した先輩の足音が迫る。間を置かず追い抜かれる。擦り抜けた肩が、背中が、追いつこうとしているにも関わらず遠くなる。真面目に練習に励む中距離パートの仲間の背中が見る間に離れて行く。
――陸上部なのに、……え?
タイムを言えば、誰もがそんな風に首を傾げる。そんな遅さ。予選を通っても決勝には出られない、そんな程度の鈍足。
(真央ちゃんは走るのが好きなのだ外でおネコさまに会える良い部活なのだ♪)
そんな時に答える決まり文句を、仲間の背中を眺めながら心の中で呟いてみる。
跳・投パートでなければ、走るのに運動神経は要らない。チームプレイも殆どない。本気で走っている時は音も驚くほど聞こえない。
何も考えなくていい。
(いや、早く走りたい人は色々考えてるかな)
同じようにグラウンドを周回する
青物 といき
の背中を視界の先に捉え、追いつけない背中を追いながらそう思う。思った途端、腹の底にどうしようもなく熱が湧いた。
追いつかなきゃ。
逃げなきゃ。
胸に暴れる焦燥に、真央は瞳を瞬く。何に焦っているのだろう。何で焦っているのだろう。
胸を焼く焦りを増強させて、頭上からまだまだ夏の熱を孕んだ太陽が降り注ぐ。全身を侵す熱を追い出そうと汗が噴いて流れ落ちる。足を踏み出し地面を蹴る度、汗が地面に散る。
それでも、走るのは嫌いではなかった。
(帰りアイス食べたいな)
汗を掌で拭い、真央は微かに笑う。
(もっちゃんセンパイんちでお好み焼きも良いな)
とりとめないことを思いつくままに思えるから。考えなくていいから。だから、なのかもしれない。
先輩たちの背中は何時までたっても近くならない。
どんなに走っても記録はでない。
(でも)
少しずつ早く長くは走れるようになる。
(だから、走るのかな)
夏の終わりの太陽と青空の下、走る。真面目にひた走っていたのは、けれど、
「あ、おネコさまなのだ~♪」
グラウンドの端の木陰に白猫の姿を見つけるまで。
「ねこねこにゃーん、おネコさまー!」
歌って跳ねて、白猫に向けラブアタックを開始すべく駆ける。部活ジャージのポケットに確かニボシを入れていたはず、とポケットを探る背中に先輩の怒号が響くも、白猫一直線な耳には届かない。
真央の勢いに、赤い首輪の白い子猫は青い目を丸くする。飛び上がるように逃げ出す。
「ああっ、そんなつれないところもやっぱり素敵なのだ!」
ニボシを掲げ、真央は白猫追跡を開始する。校庭を離れ、講堂裏の狭い隙間を駆け抜け西門から道路に出て、
「道路は危ないのだ!」
スライディングの勢いで白猫の胴に抱きつく。熱いアスファルトに仰向けで転がる。
「っ、真央ちゃん?!」
角を曲がってきた全力疾走の足音が戸惑ったようにたたらを踏む。足を踏みかえる軽い音に、真央は身軽な猫の動きで起き上がる。屈託なく笑う。
「あ、もっちゃんセンパイなのだ」
片手を挙げて
宇佐見 望月
に挨拶した途端、もう片手で抱えていた白猫が身を捩った。するりと真央の手を脱け出し、学校の塀を駆け登る。校内の茂みに飛び込んで隠れてしまう。
「コラ、後木ィ!」
「見つかっちゃったのだ」
西門から陸上部の先輩が駆けて来る。悪びれなく笑う真央の後襟を掴み、脱走犯をグラウンド周回の刑に連行する。
「もっちゃんセンパイ、後でお好み焼き食べに行くのだー」
「お、おう」
真央に手を振って答えつつ、望月は八重歯を見せて笑う。そうして、真央の姿が見えなくなった途端、平静を装っていた顔を一気に赤く染める。顔の熱の原因もはっきり分からないまま、顔を両手で覆ってその場にしゃがみこむ。
(いやそりゃちらっと考えたけど!)
もし全力で走った先に真央ちゃんがいたらどうだろう、と。
もしこの角を曲がった所に真央ちゃんがいたら、と。
そんなことを考えながら学校に至る道の角を曲がったその先で、歩道の真中で猫を抱えて大の字で寝転がっているとは流石に思ってもみなかった。
(でも何でそんなこと考えたんだろーな)
望月は熱にうかされるように首を捻る。アスファルトの地面に汗の玉がぽたぽたと落ちる。
午前中に部活のハンマー投げの練習は終わっている。八月も終盤とは言え、この暑い最中に島中を駆けずり回る理由は、
(部活の為ってワケじゃねーけど)
それでも、この頃は暇があれば寝子島を走り回っている。
(……何で走るんだろ、俺?)
そもそも、走りこみの最初の理由は、下半身を鍛えるためだったように思う。
ハンマー投げの飛距離を伸ばすため、回転を安定させるため。それがきっかけだったはず。
けれど、いつの間にかその理由がどこか変わった。
(多分あれだ、臨海学校からだ)
臨海学校の夜、悪友達に真央とのことを話した後の辺りから、ことある毎に心の奥から焦燥にも似た思いがこみあげるようになってしまった。
あの夜、友人に真央のことを話した記憶はある。
けれどそのことについて友人達がどう言っていたのか、はっきりとは覚えて居ない。覚えていたならこんなに自分の感情を持て余すこともなかったのだろうか。
理由も知れない焦燥にかられ、最近は旧市街の自宅からシーサイドタウンのキャットロードにあるホビーショップ【Ze Pet】にニャンプラを買いに行くにも走って行くようになってしまった。
(……絶対アホだよな、俺)
――もっちゃんセンパイ
突然、不意に耳に蘇った真央の声に、望月は頭を抱える。引いていた顔の熱と謎の焦燥感がぶり返す。
「うがーっ!」
体に籠もる熱に、思わず雄叫びをあげて立ち上がる。
(まあ良い!)
持参していた水筒の麦茶を一気飲みする。
(だよな、上半身の筋トレと一緒に走り込みしてるようなモンだから全体的に筋力は上がったし、フォームも安定したし、飯も美味くなってきたし!)
だからまあ良いっちゃぁ良い、と力技で感情を叩きのめす。それでもしつこく復活しようとする真央への無自覚な想いを振り払うべく、望月は学校に背を向ける。夏の日差しに立ち向かい、がむしゃらに駆け出す。
角を曲がり、さてどっちに向かおうかと道の左右を見回す望月に、
「白猫見ませんでしたか、青い目で赤い首輪した子猫!」
深海色の眼を必死の色に染めた少女が泣き出しそうな声で話しかける。ここまでずっと走ってきたのだろうか、夏陽に慣れていなさそうな白い頬が赤く染まっている。今にも座り込んでしまいそうなほどに息が乱れている。
宇井 真珠
は自分より三つ四つは年上そうな明るい茶色の眼をした少年を見上げる。
「高校の方で見たって聞いていてもたってもいられなく、て……」
言葉が尻すぼみに小さくぼそぼそとした声になる。十三歳の年よりも大人びた印象を与える表情の薄い頬が、夏の熱だけでなく赤く染まって行く。
「白猫?」
腰を屈め、子供にするように問いかけられ、真珠は恥ずかしがっている場合ではないと小さく頷く。星ヶ丘からここまでずっと走り通したせいで乱れた息を無理矢理に整える。
「猫だから気ままに散歩に出て、そのうち戻ってくると思っていたのが間違いでした」
まだ子猫なのに、と続けかけた途端、声が後悔に震えた。
「ちゃんと私が見ていれば……」
もしも誰かに連れて行かれたら。
もしもカラスに襲われていたら。
考えただけで体中の血が音をたてて引く。星ヶ丘の自宅からここまで走って来て熱の籠もった体が氷を浴びたように冷たくなる。
「寝子高で見たって人が居たんです。それで、迎えに、」
(お母様)
祈るように、真珠は心の内で母親を呼ぶ。
青い瞳のあの子猫は、母親がこの寝子島の祖母の元に預ける際に贈ってくれた子。
この子と一緒ならきっと寂しくないから、そう言った母親の寂しげな瞳を覚えている。
離婚したことが寂しかったのか、家族離れ離れになることが寂しかったのか。――そのどれでもないのか。真珠にはわからない。
(きっともう、お父様もお母様も私を引き取りには来ないでしょう)
二人共、仕事が第一の人だった。忙しさ故に擦れ違い、離婚した。だからこそ、自分だけでも今いる家族を大切にしたいと思っていた。あの二人とは違って、自分を引き取ってくれた祖母と、自分に懐いて甘えてくれる子猫を大事にしようと、そう決めていたのに、
(そう思っていたのにこんなことになってしまうなんて)
思いつめた表情をする真珠を元気付けようと、望月は明るく笑む。
「白い子猫ならさっきそこの塀を登って校内に入って行くのを見たよ。何なら一緒に探そうか?」
世話好きそうな少年の笑顔に、真珠は小さく頭を下げる。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
深い蒼の瞳を上げる。恥ずかしがっている場合なんかじゃない。
「私が、見つけなくちゃ」
もう一度頭を下げて、真珠はスカートの裾を夏風に翻す。高校の西門に向かい駆け出す。
夏休みの終わりの高校には、部活の人が大勢いるらしかった。校庭からは陸上部の人達の掛け声が、校舎のどこかや屋上の辺りからは楽器の音が、遠く聞こえる。
中学一年生の真珠にとって、しかも春に寝子島に来たばかりの真珠にとって、高校はどこか違う世界のように見えた。
誰かに見咎められたら、そう思う余裕はない。
「バッカル! どこにいるんですか!」
普段は抑えている声も、今ばかりは張り上げる。通りがかった高校生達が驚いたように振り返る。それが自身の所謂アニメ声のせいなのか、気にしている余裕もない。
「バッカル!」
子猫の名を呼びながら、子猫が隠れて居そうな物陰や茂みを覗き込む。頭上高く照る陽の強さに元々少ない体力が削られる。暑さに目が眩む。息が切れる。
「……っ、」
探さないといけない。バッカルを、家族を迎えに行かないといけないのは、
(私なんですから!)
決意込めた瞳を上げたその先、青く立ち上がる樹のその根元に、小さく丸くなる白い子猫。
「バッカル!」
青い目を輝かせて嬉しげに鳴く白い子猫のもとに駆け寄り、その小さな体を抱きしめる。
(よかったです)
汚れてはいるけれど、怪我は無さそうだ。
「ごめんなさい、寂しかったでしょう……」
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3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
バトル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年09月24日
参加申し込みの期限
2014年10月01日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年10月01日 11時00分
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