学校サボってどこいこう｜リアクション

学校サボってどこいこう

【始業前（２）】

「着いたッスよ！」
　赤羽勇樹は案内を終えると、預かっていた荷物を老婆に手渡して言った。
「おお、ありがとうねぇ。荷物まで持ってもらっちゃって」
　老婆が微笑んで、勇樹に礼を言う。
「いやいや。人として当然のことをしたまでッスよ！」
　少し照れ臭さそうに勇樹は頭を掻いて笑った。
「それじゃあ俺はこれで」
「本当にありがとうね。学校、気をつけていくんだよ」
「はいッス！」
　老婆の言葉に元気に応じ、勇樹は地面を蹴って駆けだした。

　春山小枝は運良く座ることのできた電車の中で心地の良い眠りから目を覚ました。
「……ほへぁあぁ～～」
　弛緩しきった欠伸を噛み殺し、今どのあたりかな～と窓の外を見やる。
「……へ？　かまくら？」
　トンネルを抜けなくても、そこは鎌倉だった。
「は、はわわ！　遅刻しちゃうよおっ！」
　小枝は慌てて反対方向の電車に駆け込んだ。

　若宮菫は教室でこんな話を漏れ聞いた。
　キリエ・オーラティオが今日は風邪で学校を休むらしい。
　あのキリエが熱を出して、寝込んでいる。
　そんな面白そうな――もとい可哀想なことってあるだろうか。
　この状況でどうしておちおち教室で授業など受けていられようか。
　菫は立ち上がり、鞄を肩にかけて教室の扉へ向かった。
「あれ？　どこいくの？　もうチャイム鳴っちゃうよ？」
「うん。僕ぁ、急用を思い立ったんで早退するよぉ～」
「え？」
　呆然とする級友をよそに、菫はもう教室の中になど目もくれていなかった。