学校サボってどこいこう｜リアクション

学校サボってどこいこう

　その日、赤羽勇樹は結局学校には行かずに家路に着いた。
「おじさんとおばさんにめちゃめちゃ怒られてしまった……」
　部屋に戻り、勇樹はがっくりと項垂れた。
（まさかあんなに怒られるなんて思ってなかったな……）
　いつも優しいおじさんとおばさんをあそこまで怒らせてしまったことが勇樹にはひどくショックだった。
　特にキツかったのはおじさんのある一言だった。

『勇樹君、君もうちらの家族みたいなもんや。せやから家族に心配させんとって』

　勇樹の家族事情はやや複雑だ。
　突然に蒸発し、気がつけば犯罪者として逮捕されていた父。
　そんな父親のせいで、周囲の人々から心ない言葉を投げかけられ、心労で帰らぬ人なってしまった母。
　そんな状況に、何も信じることができなくなり、やさぐれていた勇樹をここまで立ち直らせてくれたのが、地元大阪で兄妹同然の関係にあった女の子の両親であるおじさんとおばさんだった。
　そんな二人にこれほどまでに怒られたのは自暴自棄になっていたあの頃以来かもしれない。
「それだけ心配かけたってことだよな……。反省しないと……」
　そこで、ふと甦ったのは夕方にばったり出会った如月庚の言葉だった。

『……あんま、まわりに心配かけんじゃねぇぞ』

「……あれはこういう意味だったんスね」
　勇樹は呟き、偉大なる先輩への憧れと尊敬の念を新たにする。
「……俺、今日学校をサボっちゃったこと、反省はしてるけど、後悔はしてないッス。おじさんたちがどれだけ俺のことを大切に思ってくれているかが改めてよくわかったッスから」
　誰にというわけでもなくそう呟いて、勇樹は明日こそは真面目に学校に行こうと翌日の支度を整え始めた。

　　　＊　＊　＊

　そして、その一日は静かに幕を閉じる。
　学校の勉強は大切だ。
　だが、学校だけでは学べないこともある。
　だから、彼らはきっとこの一日を忘れない。

　秋の風が夜の寝子島にひゅるりと舞う。

　こうして、彼らの一日限りのサボタージュが終わった。

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あとがき

担当マスター：水月鏡花
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というわけで、ご参加頂いた皆様お疲れ様でした。

本シナリオはガイドの文体にあわせまして、リアクション本文もいつもの「ですます調」ではなく「である、だ調」になっております。
ガイドも運営部から提案頂いたものでして、いつもと違った水月のリアクションを楽しんで頂けたなら幸いです。

今回は純粋なフリーシナリオということで、ＰＣさんによってはまったくほかのＰＣさんと絡んでいなかったり、あるいは予想だにしないＰＣさんと関わっていたりということもあったかと思います。

現在の自分なりに精一杯書いたつもりではありますが、至らぬところなどございましたら、何卒ご容赦ください。

キャラクター同士の掛け合いや心理描写など、書き手としてはフリーシナリオの醍醐味を充分に味あわせて頂く結果となりました。
みなさん素晴らしいアクションを本当にありがとうございました。

それではまた次回もどこかのあとがきでお会いできることを祈って。

水月鏡花

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