大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～｜リアクション

大怪獣襲来！～寝子島防衛戦～

●ヒーローズ　

「そろそろ来るぞ！　気をつけろぉ！」

　最前線に立っていた祭からの連絡を受け、シーサイドタウンに緊張が走る。
　海岸に上陸を果たした半魚人と巨大サンマの軍勢が海浜公園を破壊しながら迫って来るのが見えた。

　鋼成のトラックに乗せてもらったり、自力で撤退してきたメンバーがアウトレットの建物に転がり込む。

「バッチリいきてぇなぁ、バッチリ」

　トラックが無事着いたのを確認し、ウィンクしながら自分の得物を確かめるのは、愛用のちくわくん着ぐるみを着用した新井すばる。
　背中に木刀を背負い、右手には水道ホースを持ち、左腕に巨大ちくわをレーザー砲よろしくはめ込んで、装備は完璧だ。

　すばるは魚屋キャラとしてさんまさんをライバルとする着ぐるみキャラとして、
　そして寝子島を愛する住民として戦いたい――そう思っていた。

「お前だけにいい格好はさせないぜ」

　そう背後から声をかけ、すばるの横に並んだのは、ヒーローコスチュームに身を包んだ風雲児轟。
　彼もまた自分の信じる正義のため、デカサンマを必ず倒すという決意でここへやって来たのだ。

「直拳貫徹！　ザ・ストレイト！　寝子島のため共に戦おう！」

　二人は頷き合い、どちらからともなく、がっちりと手を握り合った――
　こうして、ここに寝子島二大ヒーローの共同戦線が張られる事になったのである。

「悪い魚は眼を見りゃわかる。巨大なさんまが怖くて魚屋が出来るかって話だよ。ボクがやっつけてやる」

　すばるはそう言いながら、シーサイドタウンに乗り込んできた半魚人の前に立ち塞がる。

「悪しき魚よ、くらえ聖水ブルーウォーター！」

　そう言うと、すばるは手にしたホースで水を撒いて近付いてきた半魚人たちをずぶ濡れにした。
　半魚人たちは一瞬驚くが、浴びせられたのは『聖水』とは言いながら、何の変哲もないただの水だった。
　その程度なら多少濡れたところで、大した影響があるものでもない。
　それどころか半魚人たちは『水を得た魚』のように勢いを増し、防衛チームに襲いかかる。

　しかし、それこそがすばるの狙いだった。水を浴びせたのはさらなる一手の為の布石。

「くらえボクのパトス!　ちくわ☆ビーム!」

　雄叫びと共にすばるの手にはめたちくわから、冷凍光線が発射され、たちまち水に濡れた半魚人たちを凍らせて、身動きできなくした。
　直撃を免れた半魚人も、氷漬けになった地面で足を滑らせ、思う様に動けない。

　これがすばるのろっこん『ちくわ☆ビーム』。

「ふふふ見たか、ちくわビーム！」

　すばるは不敵に微笑み、次々と近付く半魚人たちに水と冷凍光線を発射する。
　半魚人たちはしばらくはちくわ☆ビームを警戒して進むのを止めていたが、水を撒くホースの長さに限りがある事に気がつくと、水をかけられないように大きく迂回し始めた。

　それを見たすばるは、この作戦はここまでとホースを捨て、背負っていた木刀に持ち替えると迷うことなく半魚人の群れに突撃して行った。