星ヶ丘寮の『ＰＫ』｜リアクション

星ヶ丘寮の『ＰＫ』

　牡丹にメイクを施しながらも紗姫の言葉続く。
　「ってか、そーいうのちょーキモくなーい？　あ、牡丹動かないで。うん、やっぱつけま多めに盛ってー……。でさ、パンドロとかしてっからカノジョできないんだってんだよねー。あ、でもカノジョできないからしてるんじゃ……。救いようないじゃーんマジうけぴーすぎっしょ！」
　と、嘲笑うかのように『ＰＫ』に対して厳しい言葉を吐き続ける。
　「なんだか紗姫さんさえ居れば『ＰＫ』なんて怖くないって気がしてきましたぁ～」
　紗姫の言葉に勇気付けられる牡丹。メイクのおかげか少しずつ明るい顔になってきていた。
　「ネイルとかモチ試すよね？　いい色してるといーなー。で、パンドロするくらいならまだナンパしてるほうが潔い感じするよねー。パンドロってマジでダッサ！　キモイ！　ネクラ！　って感じだしー」
　言葉のマシンガンは止まらない。

　ガシャン。
　と星ヶ丘寮ではあまり聞くことのない音。どうやら給仕をしていた執事がテーブルに体をぶつけたらしい。
　
　「どうしたんすか？」
　さして興味なさそうな紗姫。
　「あの、大丈夫ですかぁ？　お怪我はありませんかぁ？」
　と、牡丹は声をかける。

　執事はそのままよろよろと数歩歩くと四つんばいの態勢で跪く。
　そんな彼のポケットからは何か白いものがはみ出していた。

　「あ、それ私のパンツですぅ～」
　牡丹がそう指差す。そう、それは牡丹が部屋を出る前に履き替えた白い無地のパンツであった。微妙に先ほどよりも薄汚れているように見えるのは気のせいかもしれない。気のせいじゃないかもしれない。
　「へー、牡丹ああいうの履くんだー。そりゃ確かにパンドロさんが好きそーよね。もっと過激でドンビキするようなのじゃないと！　あんたみたいなタイプはカノジョできないタイプからすれば大好物もいいとこだよ、痴漢とかされそーなかんじだし。ってか執事さんあんたがぴーけーだったなんて、そのナリでモテないってことはチョードヘンタイ趣味のドーテー太郎なんでしょー、ダッサァ！」
　紗姫は攻撃対象を見つけて容赦のない雑言を浴びせていく。
　（言、言えない！　あれはカモフラ用の白パンで、今は紗姫さんにいつ求められてもいいようにヒモＴの勝負下着だなんて！）
　「あう～。でもでも、盗まれたのが私でよかったですぅ～……。紗姫さんのパンツでしたら私……あの人を一生介護なしでは生きられない体にするところだったですぅ～……」
　心で思ったことを隠しつつ、クスクスと笑う牡丹。
　「とりあえず、あれは連絡しとこーかー。どーせあのよーすじゃばっきばきに折れてるから何もしてこないだろーしー。えーとエレナのテル番はー……」
　片手で牡丹の髪をいぢりながら、もう片手で携帯でエレナに連絡を入れる。
　「あ、もしもしー。あたし。うん『ぴーけー』だっけ？　確保したから宜しくー」
　用件だけを済ませて紗姫は牡丹を見つめる。
　「よーし、気を取り直して牡丹。あたしのシュシュで髪括ってあげるし、アクセも服も貸してあげるからねー」
　「はい～。　うう～、パンツ盗まれたのにこんなに幸せでいいのでしょうか～」