みんなの秘密基地｜リアクション

みんなの秘密基地

　どこか誇らしげな表情で小島海美が道の真ん中を歩いていた。
　少し遅れて双葉由貴が付いていく。ダボダボのグレイのＴシャツに黒いジーンズを穿いていた。
「ゆきおにいちゃん、おくれてるよ！」
「なんかウソくさいんだよなー」
　青い円らな釣り目を海美に向けて言った。ツインテールを鞭のように振るって本人が踵を返した。頬が少し膨らんでいる。
「ウソじゃないし、くさくなんかないよ！　ホントなんだから！」
「墓地の穴なんか見たことないし」
「だってあったんだもん！」
　海美はぴょんぴょんと飛び跳ねながら両手で大きな輪を描いて見せる。
「わかったって。信じるから早くいこうぜ」
　周囲の目を気にする由貴に海美は笑顔で頷いた。
「わかればいいの！　それにおしゃれしたレディーと歩けるんだから、はりきらないとね！」
「どこがだよ。Ｔシャツに半ズボンだろ」
「きれいなうみいろのＴシャツに、女の子らしいピンクのホットパンツ！　半ズボンじゃないから！」
「わかったって。でもなー、俺の記憶には穴なんかないんだけど」
「あ、ねむるおにいちゃんだ！　いっしょにいこうよ！」
　海美の頭の切り替えは早かった。目にした日暮ねむるに全力で走っていった。やれやれだ、と愚痴を零して由貴は僅かに足を速めた。