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いつかのあの日の、
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華奢な腕や腰の辺りに絵の具の付いた白衣が夏の僅かな夕風になびく。すらりとした細く長い脚に白衣の裾を纏わり付かせたまま、
鳳翔 皐月
は黄昏の色が陽炎のように揺れる路地の先へ、野良猫のような強い瞳をもたげた。黄昏の光に、深海色の瞳が深さを増す。
傍らの
神無月 文貴
が視界の隅に映る。
夏用スーツの上着を片手で肩に引っ掛け、銀縁眼鏡の奥の鋭い漆黒色の瞳を不快気に微かに歪め、細い顎を昂然と持ち上げて歩くその姿に、ほんの僅かの間、皐月は見惚れる。
路地の突き当たりに位置する居酒屋の店先には、幾つかのビールケースが椅子代わりに置かれ、店員と女将が店の外で七輪を前にビールケースと板製のベンチに座している。
その簡易的に開かれた店の前、男女が三人ばかり軽口を叩きながら酒を酌み交わしている。
彼らの笑い声に文貴の口元が微かに緩む。傲岸ささえ宿した瞳が笑みに柔らかく解けて、
「子供の頃から知ってる店だ」
笑んだ瞳が皐月を真直ぐに見つめる。うっかりと盗み見る格好になっていることに気付いて、皐月は薄い唇に小さな笑みを滲ませた。挑むように、文貴を見る。
深い青の瞳と夜の黒の瞳が刃が打ち合うように絡み合う。
「そういやお前ってどんなガキだったんだ」
「私の小さい頃?」
刃を引いたは神無月組組長。からかうように唇を歪め、寝癖のついた皐月の髪に指先でほんの僅か、触れる。
「きっとこまっしゃくれて可愛げのねえガキだったんだろうな」
皐月は大きく足を踏み出す。文貴の指先から逃れる。
「冗談だって、拗ねんなよ」
笑って追い縋る文貴を皐月は肩越しに振り向く。短く淡く、笑む。
「至って普通の小娘だった」
今よりもずっと可愛かった、と過去の己の後ろ姿を夕暮れに追う。長い黒髪を風に弄ばれるまま、無邪気に絵筆を握る幼い後ろ姿。
「少女してたんだよ、あの頃は」
臨時休業の店舗の前で催されるささやかな酒宴の片隅、文貴と皐月は座す。常連の文貴の隣、この前はありがとうね、と女将が冷酒の二合瓶数本と胡瓜の糠漬けや地魚の煮付けの乗った盆を置いて去る。
「ま、飲め」
「ああ」
文貴に勧められるまま、皐月は冷酒の杯を受ける。二人で冷酒の満ちたコップの縁を合わせる。
「でも、中学辺りで祖父が死んで」
酒の水面に映る海色の瞳が一瞬だけ、波打つように憂いを帯びる。
「ひっでぇ失恋したりしてこんなんなっちまった」
感情の揺らぎを打ち消し、酒を一息にあおる。文貴が黙したまま、空いた杯を同じだけの酒で満たす。
黙々と杯を重ねる皐月を止めもせず、文貴は肩を並べて同じように酒を飲む。
「ごっそさま」
七輪のある席で酒と煙草を楽しんでいた男女の内の一人が明るい声を店員と女将に向ける。
「あー……」
ちょっと考える風に視線を泳がせてから、作業着の男が簡易ベンチに置いた空のジョッキの下に何枚かの札を挟む。男に倣い、連れの男女もそれぞれのジョッキの下に札を置く。女将が臨時休業で迷惑を掛けたから、と慌てるのに、作業着の男は悪童のように笑う。
「この雰囲気に満足した雰囲気代って事で!」
女将に手を振り軽い足取りで去る作業着の男を追い、くわえ煙草の不機嫌そうな男が面倒くさそうに、眼鏡を掛けた妙に妖艶な女が小さく会釈して、夕日色の路地に長い影を引いて去る。
「鐡原さん、でも」
「いいじゃねえか、今度サービスしてやりゃよ」
三人組の後を追おうとする女将を、文貴は鷹揚に止める。
女将が仕方無さそうに、少し嬉しそうに微笑む。組長の席の空になった酒瓶を中身のあるものと入れ替える。
「なあ文貴」
女将に片手を軽く上げる文貴の隣、皐月が黄昏の路地に視線を固め、夢を見ているかのように呟く。
「酒の飲みすぎかもしれねえけど私の爺さんがさ」
眼の縁をとろりと紅く染め、皐月の体がふわり、傾ぐ。
「ん? どうした」
華奢な女の体を片手で受け止め、その視線の先を追って、
「そこに立ってるような、気が、するんだ……よ……」
「はぁ、死んだ爺さんがいる?」
恋人の膝に頭をもたせかけて寝入る女に代わるように、一人の老人が黄昏の光を集めて佇む。
「お前が皐月の婿さんか」
半袖半裾にサングラス、若々しいのは格好だけでなく、伸びた背筋も、額に上げたサングラスの奥から現れた眼も、ぎらつくほどの精気に溢れている。
皐月の祖父らしい老人は近くのビールケースを引き寄せ、裏返してどかりと腰を据える。サングラスを外して片手に持ち、挑むような視線を文貴に寄越す。
(夢でも見てんのか)
強い光宿した瞳がひどく皐月に似ていて、文貴は皐月の言葉を躊躇いなく信じた。
(この島なら何が起きても不思議じゃねえ)
それに、さんざん非日常を体験してきた。
お盆も近い。ご先祖がひょっこり帰って来ても可笑しくはない。
「堅気じゃなさそうだが」
険さえ含んで文貴を睨め上げていた老人の瞳が、
「いいか」
ふと和らぐ。女将がさりげなく置いたコップを取り、孫の婿にぞんざいに突き出す。
「ほれ、酒注げ坊主。年寄と死者は敬え言うとるだろ」
儂はそこの娘の祖父だぞこら、と粗暴な口調で言い放つ皺の刻まれた顔には、隠しきれない笑みが滲む。文貴は楽しげに義理の祖父に酒を注ぐ。己が産まれる前に死んだ祖父がもし生きていればこんな感じか、とふと思う。
(ジジイに甘えた経験はねーんだが)
皐月がお爺ちゃん子だったのは見ていれば分かる。それに、でなければこうしてあの世からわざわざ出張って来たりはしないだろう。
水を飲むように日本酒をあおる祖父に倣い、文貴も同じペースで酒を喉に流し込む。
「皐月から噂は聞いてるが、本人の口ら武勇伝が聞きたいね」
「武勇伝、なあ」
「婆さんとの馴れ初めや戦争の逸話、それにそうだな、皐月の小せえ頃の話も」
酒にも義理の祖父の威圧にも呑まれずに話をねだる婿に、老人は瞳を細める。空になったコップに日本酒を注がせ、美味そうに口に含む。
「満州の地酒もそりゃ強烈だったが……儂ゃ大陸の方の憲兵で防諜やっとっただけだ」
顔が苦々しげに歪む。若々しい印象を与える老人の伸びた背が不意に年より老けて丸くなる。
「戦争の話は懲り懲りだ」
毒を吐くように呻いて、次には渋く笑む。
「婆さんは香港で彷徨っとったから連れ出したんだ。色々あって孕ませただけだわ」
投げ出すような言葉のその癖、微笑む顔は柔らかい。
文貴は皐月の頬を膝に乗せたまま、居住まいを正す。ところで、だ、と切り出す。
「俺と皐月は結婚を前提に付き合ってる。娘が高校を卒業したら籍を入れようと考えてる」
短刀を腹に呑んだ風情の老人の目を見据える。
順番的には先に皐月の父親に筋を通すべきかもしれないが、
「アンタに直に交際を認めて欲しくってよ」
膝の上で身動ぎする皐月の細い肩を支える。この女が慕う祖父には祝福して送り出してもらいたい。
「孫娘は幸せにする」
決然と誓う男を、老人は静かに見つめる。つと視線を孫娘に落とす。
「皐月は小さい頃物静かな子でな。あれこれやってみたが遂にどうにもできんかった。……だが失恋すると女は変わるもんだろ」
――こんなんなっちまった
文貴の耳に先ほどの皐月の言葉が蘇る。
「変わったんだ、こいつは」
それがいいことなのか悪いことなのかは言及せず、
「結婚、な」
老人は不意にカラリと笑う。
「その前にささと曾孫を孕ませてくれい」
ずっと待っとんだ、と言う義理の祖父と文貴は杯を交わす。
「ガキができたらツラ拝みにこい。そん時はまたここでな。――約束だぜ」
約束の杯を互いに一息に干し、老人は一足先に立ち上がる。胸ポケットにさしていたサングラスを掛け直し、老いた眼を鋭く眇める。
「幸せにするのは男として当たり前だろが。添い遂げると言え坊主」
そんなら合格じゃ、とからかうように告げて笑い、どこか満足気に背を向ける。
「頼んだで」
深く頭を下げる文貴の前で、老人の姿は夏の夜に溶ける。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年08月07日
参加申し込みの期限
2014年08月14日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年08月14日 11時00分
参加キャラクター一覧
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