秘密結社ネコノメの誘い～来たれ、新人結社員!!～｜リアクション

秘密結社ネコノメの誘い～来たれ、新人結社員!!～

We can fly!!

　右手には、手頃な壁から一枚剥がしてきたネコノメのチラシ……。
　御剣刀は、自分でもよくわからぬままに、寝子島シーサイドタウン駅の裏手に足を運んでいた。
　すでに日も落ちて夜の刻限。もちろん、いまさら採用選考会に参加しようというわけではない。それどころか何の用事もありはしないのだが……まあ休日だし、たまには散歩するのもいいだろうという、それだけの話。

　街を歩いていると、様々な人間とすれ違う。その多くはすれ違った傍から忘れてしまい、ほとんど記憶に残りもしないが、それでも全身ずぶ濡れで影を背負いながらとぼとぼ歩いているようなのは印象に残る。……イジメか何かだろうか？　あんな強面なのに。何があったか知らないが、強く生きて欲しいと思う。

　街を歩いていると、色々な会話が耳に入ってくる。

「ど、どうでしたか!?」
「まだ駅前うろうろしてた。子泣きジジイと、金髪連れてる風紀委員……だよな？」
「そうです、助かります……」

「6組ってことはお隣さんだね。いやー、海パンの人の投網に捕らえられたときはどうなることかと思ったよ。おねーさんに助けてもらえなかったら、いまごろ交番にお届け物されてたのかなあ？」
「……あの格好だと、たぶん海パン本人が捕まる」
「それもそうだね……あ、家どっち？」
「……旧市街」
「僕は星ヶ丘寮だから、じゃあここでお別れか。それじゃ縁があったらまた会おー！　ハイル・ネコノメー!!」
「……ハイル・ネコノメー」

　……聞き覚えのある単語を耳にした気もするが、きっと聞き間違いだろう。
　ともかくも、歩いているうちに採用選考会が行われている雑居ビルに着いてしまった。
　通りから2Fを見上げてみれば、窓から煌々と明かりが漏れている。それに、何やら騒がしい。
　こんな時間になってもまだ面接やってたのか。何度読み返しても、俺にはブラック企業の誘いにしか見えないんだがなあ……。

　――と、そのときである。

「のわああああああああああ――――――――――――――――!!」
「きゃああああああああああ――――――――――――――――!!」
「いやああああああああああ――――――――――――――――!!」
「またああああああああああ――――――――――――――――!?」

　以下、無数の悲鳴や叫び声。
　そして瞬く間に大量の人影が、川面へと伸びているダクトのようなものから勢いよく飛び出し……

　ざぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱ――――――――――――――――――ん!!

　花火大会のスターマインもかくやといった、大量の水柱が駅裏の川に咲いた。
　なんだなんだ何が起きたと、着水の音を聞きつけた野次馬たちが騒ぎ始める。
　その様子を遠巻きに眺めながら……刀は「選考会に参加しなくてよかった」と、心の底から思った。
　おしまい。

　……なお、完全に余談ではあるが。
　この後、全身ずぶ濡れびしょびしょで水揚げされることになる選考会参加者たちだが、そのなかにはただのひとりもネコノメの結社員は含まれていなかったという。
　もちろん、会場だった雑居ビルも翌日以降完全にもぬけの殻。
　いったいネコノメの結社員たちはどこへ消えてしまったのか？
　そもそも、悪の秘密組織の採用選考会などというものが本当にあったのか？
　真相はすべて、あの壮大なスターマイン水柱に覆い隠された。

　真夏の夜の夢にはいささか早過ぎるが、寝子島のフツウはそんじょそこらのフツウとは一味も二味も違うのは皆さんご承知のとおり。もしかすると、逆に真夏になった頃にでも、夢からネコノメの結社員たちがひょっこり顔を見せに来るのかもしれない……。

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あとがき

担当マスター：水沫ゆらぎ
ファンレターはマスターページから！

　こんな場末のあとがきへようこそ。リアクション書いた人、水沫です。
　プレイヤーの皆様、この度はご参加いただきありがとうございました！

　さて、あとがきということなので楽屋ネタでも。
　シナリオガイド提出当初は、真面目に採用選考会やって、ネコノメ結社員を数名選出するつもりだったんです。採用された人は、次回以降のネコノメシナリオのOPに結社員として登場したりとか、こっそりそーいう特典を考えておりました。
　でも、いただいた皆様のアクション並べると、何をどう考えてもそんな素直に行くわけがない。そもそも真面目に面接のネタで勝負しようとしている人のほうが絶滅危惧種だったりして、モニタの前でぶくぶく泡を噴いたのも懐かしい思い出。
　もうこの時点で当初の想定は全部吹っ飛び、おまけにバイト放り出して会場に潜入しようとしてる人やら、裏口結社員採用狙ってる人やら、採用選考会の参加者を捕まえようとする人やら、ワープして大首領と直接会談を求めてきた同業他社さんやら……ひぃぃ、こんなもんまとまるわけがあるか！　おのれ、寄ってたかって好き勝手してくれおってからに……もうどうなっても知らんぞ――――っ!!ヽ(｀Д´)ノ

　……と、書いてる人まで好き放題やり始めてできたのがこのリアクションです。（汗）

　皆様の創意溢るるアクションとがっぷり四つに組み合って、捏ねて、形にして……おかげさまで書いててめっちゃしんどかったですが、でもそれ以上に、とても、とても楽しかったです。ホントにもー笑いながら書いてた気がします。皆様のキャラクターがいなかったら、この物語は生まれませんでした。感謝の念に堪えません。
（若干キャラ崩れさせてしまったかもしれない人もいて、そこだけ戦々恐々としていたりもするのですが……）

　未熟者ではありますが、魂込めて精一杯の力で仕上げました。
　この作品が、当方以外の誰かにとっても宝物になるといいなあと思いつつ、筆を置かせていただきます。
　執筆エネルギーの充電が完了したら、またお会いしましょう！　それまでおさらばー!!

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