「ちょっと聞きたいんだけどさ、今朝の郵便受けになんか妙なチラシ入ってなかった?」
「あ、おまえんとこもか。あれだろ、秘密結社がどうたらこうたら」
「それそれ。よかった、ウチだけじゃなかったんだ。これ、いったい何なんだろーね?」
「おま、持ってきてんのかよっ」
寝子ヶ浜海岸の、解放感溢るる色彩と眺めを一望できる大通り。
寝子島高校へと続くその通学路を往く、大小様々な学生グループの、そこかしこで交わされる朝の会話。
それは担任の悪口であったり、新作ゲームの進捗具合であったり、フルーツパーラーの試食会についてであったり、テストの出来の探り合いであったり。まあ、概ね春の陽気に欠伸を噛み殺しながら交わされるのが常の、他愛もない話ばかりだったのだが……しかし、今日ばかりは少し様子が違った。
冒頭のやりとりをしていた寝子島高校の生徒ら――仮にモブA、モブBとしよう。
そのモブAが学生鞄から取り出したのは、こんなチラシだった。
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我々はいまここに プロジェクト・ネコノメ の始動を宣言する!!
こんにちわ、寝子島高校の学生諸君。秘密結社ネコノメです。
我々は、寝子島征服を目指して日夜頑張っている悪の組織です。
この度、寝子島各地で多くの学生たちが超能力に目覚めたという情報をキャッチ。
これを組織拡大のチャンスと捉え、新規に結社員を募集することとなりました。
秘密結社ネコノメは、素晴らしくスピーディーかつ刺激的な職場です。
お約束パワーを駆使して突如湧いてくる正義の味方との抗争が毎週のように繰り広げられています。
また、支配地域のショバ代・観光収益等を稼ぐため、各種イベントの企画や運営も日々行っています。
単なる事務作業に留まらない、クリエイティブな仕事の数々があなたのやり甲斐を満たします。
秘密結社ネコノメは、業界未経験者も歓迎します。
創業以来、業界トップをひた走る充実した研修体制で、どなたもすぐに一人前の結社員になれます。
さらに労災対策も完璧です。結社員としての非合法活動に従事する際に支給されるネコノメスーツは、
最新の装着者保護システムで結社員の安全を守ります。パトカーに轢かれても臨死体験で済みました。
正義の味方の熾烈な妨害工作にもめげることなく、我々とともに寝子島征服という究極目標に邁進できる、
モチベーションの高い人材を探しています。まずは尻込みせず、下記の選考会に参加してみてください。
同志たちよ、いまこそ我らが大首領『ネコノメ』のもとに集え!!
『結社員採用選考会』
日 時:4月XX日(日) 10:00~18:00
場 所:シーサイドタウンX-XX-XX とあーる雑居ビル2F
結社員採用の暁には、学生という身分を生かして、寝子島高校内の各種調査・非合法活動を、
および休日・祝日に支配地域で行われるイベントの企画・運営をメインにお願いすることになる予定です。
P.S. いつも空気読まない正義の味方諸君!
ふはははは! 我らネコノメの野望、止められるものなら止めてみろー!!
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「やっぱりイタズラかなあ」
「決まってら。そもそもなんで秘密結社がチラシで人員募集してんだよ。もう秘密でも何でもねえじゃねえか」
「それは確かに」
呆れ果てながらツッコむモブBに、モブAもとくとくと頷くしかない。
「良くて愉快犯のイタズラ、悪くて壺買わされるのがオチだな」
辛辣に言い切られ、モブAは肩を竦めて鞄にチラシを仕舞った。モブBの食いつきがよければ、暇潰しに選考会とやらの様子だけでも覗いてこようと誘いをかけるつもりだったのだが、さすがにひとりで出かけて壺買わされるのは御免被りたい。
それきり、彼らの間ではこの奇妙なチラシの話題はお開きになったのだけども。
しかし、このチラシを目にして何やらピンと来てしまった者たちも、若干名ながら確実に存在したのである。
……ほら、この文章読んでるそこのYou! YouのことですYO!!
<ゲームマスターより>
皆様、初めまして! ゲームマスターの水沫ゆらぎと申します。
私事が溜まっていてなかなか動けなかったのですが、ようやく初シナリオの公開に漕ぎ着けました。
シナリオガイドの時点でお馬鹿っぷりがだだ漏れですが、遊んでいっていただければ幸いです!
警察に連絡するなど公的権力に頼る類の行動は不可です。(ふざけていると見られて取り合ってもらえません)
あくまで自分たちのキャラによる言葉と行動で、シナリオと向き合いましょう。
なお、アクション記入の際には、以下のPL情報を参考にされるとスムーズに進むかと思います。
<PL情報>(キャラクター各位には知らされていない情報です)
選考会会場に集まったキャラたちに課せられるミッションは以下の2つです。
描写が欲しいほうの場面を重点的にフォローするもよし、2場面とも押さえるもよし。自由です。
(アクションいただいた文量や内容によって、こちらで場面毎の登場比率を調整します)
1.ネコノメグッズの配布アルバイト
皆様はそれぞれ、ダンボール一箱にぎっしり詰まったネコノメグッズを渡されて、これらを寝子島各地で配ってくるよう言いつけられます。二足歩行の猫の着ぐるみに身を包んだ怪しい面接官たちの説明によると、どうもマスコット収益を当て込んで製造したものの、寝子島の正式マスコットであるサンマさんの支持基盤を揺るがすことはできず、盛大に売れ残って不良在庫と化していた模様。で、ただ捨てるのも忍びないので、無料で町民に配って結社の表の顔である『ネコノメ企画』の名前を売ろうという魂胆らしいです。
ちなみにバイト代は出ません。アルバイト放り出してお仲間と駄弁ってたり、選考会会場に戻って来なくても構いません。そしてネコノメグッズは、どれもこれもデザインセンス皆無で物凄く可愛くありません。おまけにグッズ配布バイト中は、貸与されるゲスト用ネコノメスーツの着用を義務付けられます。一般的な感性からすると、すっごく不気味です。こんなもん着て幼児に近づいたら泣き出すかもしれません。デザイン責任者出てこぉい!
・ネコノメグッズの創作はご自由に。縛りは『猫の目が怪しく光ってる』&『デザインが不気味』です。
→キーホルダー、クッション、ヘアバンド、ペンケース、何でもOK。ただし全部趣味悪し。
・貸与されるネコノメスーツは、頭部まで含めて全身すっぽり覆われるタイプの二足歩行猫型着ぐるみです。
→背中にファスナーがついていて、それを開けて装着する感じ。器用な人じゃないと自分で締められません。
→頭部の目に当たる部分が怪しく光っている(注:中の人は、ここから外の様子を見る)という縛り以外は、
スーツの色、毛並など、すべて自由に設定可能。(用意されたスーツのなかに、それがあったことになります)
アクションにスーツの詳細な外観を記載しておくと、それを参考にした描写が増えるかもしれません。
2.採用選考会
無給のバイトをこなしてちゃんと戻ってきた
暇人やる気ある若者たちを相手に面接開始!面接は、複数名の参加者が同席して行われる、グループ面接の形となります。アピール内容は自由。「結社員になりたいというきみたちの熱い想いを! ビジョンを! 超能力(ろっこん)を! 我々にぶつけてくれ!!」と面接官たち(全員もれいび)は仰っている模様です。なお、面接官ウケが悪かったりすると、いきなり足元の床が開いて画面外に退場したりする可能性もありますので、努々油断なさらぬよう……。
また、皆様からのアクション次第ですが、もしかすると正義の味方の集団(皆様)が面接会場に雪崩れ込んできてのバトルに発展する可能性もあります。どうなるか、これ書いてる水沫にもまったくわかりません。ネコノメの面接官たちは数名程度。それぞれ戦闘に使えそうなろっこんを所持していますが、基本的にお間抜け集団なので非常に弱いです。というわけで結社員志望の諸君、戦闘準備を怠るな!