ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！｜リアクション

ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！

「柳司君の路上ライブ、本当に良かったよ」
　十文字若菜は浅沼柳司と並んで歩きながら、彼が見せたパフォーマンスの感想を口にしている。
「トークは面白かったし、歌は笑わせてくれたりホロリとさせられたり……お世辞抜きで、観に来て良かったと思ってる」

「いやあそれほどでも……」
　柳司は嬉しさと誇らしさと気恥ずかしさで、どこかに飛んで行ってしまいそうな気分であった。ちょっとつつけば彼は、パンパンに膨らませた風船みたく破裂してしまうのではなかろうか。
　お客さんに受けたのは嬉しかった。飛んで来たおひねりも嬉しかった。
　でも一番の喜びは、こうして若菜に褒めてもらうこと……柳司は密かに、そんなことを考えている。
　ここで、
「それで、先輩」
　真面目な顔になって柳司は言った。
　氷でも当てて冷やしたかのよう、頬はシュッと引き締まっている。
「ん？　なに？」
「アイス……食べません？　おごりますんで！」
「おごり？　どうしたの突然？」
「いえ、さっきのライブでちょっとばかりおひねり、もろたもんで……ささやかなお礼です」
「いいんだよそんなの、と言いたいけど、せっかくだしお言葉に甘えちゃおうかな？」
　若菜の目は輝いていた。
「ほら、このへん屋台がいっぱいあるじゃない？　実は結構、目移りしてたんだよね……あれもおいしそうだし、これもおいしそうだし」
　もう買ってしまったものも多数あることは、とりあえず乙女の秘密だ。
　甘い物をたくさん食べたから、これは明日、念入りに走り込まないと……と決意していることも、乙女の秘密の若菜なのである。
　さあ、明日のことは明日考えるとして、まずは今、どのアイスを食べようかなと、若菜は頭を悩ませるのだった。
　決める前にひとつ、思いだしたように付け足す。
「柳司君、ところでこのあと、メインステージでlieのライブがあるんだけど一緒に行かない！？」