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ネコミュージックフェスティバル ｉｎ ＳＵＭＭＥＲ！
今年の寝子高１年４組には不思議な偶然があった。
どういうわけか、実家がなにがしかの麺屋さんという少女たちがこのクラスに多く配されたのである。
ラーメンか蕎麦かうどんかという違いこそあれ、いずれ劣らぬ麺を愛する乙女たち。自然と会話も弾み、友情も育まれてゆくというもので。猫の模様に『三色麺』の文字の入ったお揃いエプロンは手作り。屋台のあちこちにもネコフェスに掛けて猫や肉球があしらわれ、準備の時からわいわいと盛り上がっていた様が見えるようだ。
『三色麺』の店主たちはそれぞれの仕事着に揃いのエプロンで、くるくる忙しそうに立ち振る舞う。
「いらっしゃいませアルー美味しい麺料理ありますアルヨー」
赤いチャイナドレスにお団子頭の畑中 華菜子は、地元に愛されて２０年、ラーメン店『猫島軒』の看板娘。エセ中国人のような話し方だが、れっきとした日本人である。
「おひとつ如何ですかー」
緑色の作務衣にショートカットも爽やかな薄野 五月は、眼鏡の奥でにっこり笑む。猫島軒と同じく参道商店街にのれんを出す手打ち蕎麦屋『すすきの』のお嬢さん。
実家が群馬で数百年続く伝統ある水沢うどんの店という水沢 榛名も、サイドにまとめたポニーテールを揺らして声をあげる。たすき掛けした格子模様の着物は実家から送って貰ったものだ。
「三色麺ー三色麺だよー」
「冷やしちくわ……硬くて長くてこれは思った以上に……いえ、美味しい食べ物ですね」
手持ちのカメラでちょいとサービス気味に自撮りして、檜扇 舞華は屋台からの呼び声に足を止めた。
「おや、『三色麺』だそうです。いったいどんな食べ物なのでしょう？ ――すみません」
カメラを止め、五月に取材交渉。
「はい、取材ですか？ テレビねここさん？ それともn.k.FMさん？」
「いえいえ一個人ですが、星ヶ丘寮に住む我がご主人から楽しい動画をアップしろとの命が下りまして。メイドたるあたしはご主人の期待に応えるべくこうして動画を撮影しているのです。ねこ動やねこったーで紹介させていただきたいので、少々インタビューなども構いませんか？」
ＯＫである。
舞華はさっそくメニューを見る。
メニューは２種類。
『温かい三色麺』
『冷たい三色麺』
折角なので両方注文してみる。
「温かいのと冷たいのはどう違うんですか？」
舞華が尋ねると、華菜子が猫のイラストが付いた可愛らしいどんぶりを置いた。
「温かい三色麺は、これアル！」
湯気とともに立ち上る醤油の香り。
濃い色のつゆの中に色違いの麺の玉が３つ、水戸黄門の葵の御紋みたいに鎮座ましましている。
「ラーメン、蕎麦、うどんの３つがいっぺんに楽しめるアル！ お出汁は猫が好きそうな鰹節と煮干し。つゆは中華麺、そば、うどんすべてに合う醤油ベースにしたアルヨ！」
舞華は箸をつける。
「この中華麺は猫島軒のものですか？」
「そうアル！ 蕎麦はすすきののだし、うどんは水沢うどんアル！」
「水沢うどん？」
舞華が聞き返す。すると格子の着物の袖をぐいとまくって、榛名がその言葉待ってましたと見得を切った。
「説明しよう！ 水沢うどんとは日本三大うどんの一つで、４００年前より群馬県は水沢地内にある水澤寺付近で提供される手打ちうどんである！ 自慢じゃないがうちの実家は４００年前から続く水沢うどんの名店でね、今日のためにわざわざ群馬の実家から取り寄せたんだよ。だから味は折り紙つきさ」
「そう聞くと、ますます美味しく感じますね」
舞華がうどんを啜っていると、次のどんぶりが運ばれてきた。
「お待たせしました、冷たい三色麺です」
五月が置いたそれを舞華はしっかりとカメラに収める。今度のどんぶりは仕切りのある肉球型だった。指にあたる部分には三種のつけ麺、掌にあたる部分には氷の浮かぶ冷たいつけ汁が入っている。
それぞれの麺を味わうと、舞華は深く頷いた。
「いいですねー。これは松花堂弁当的な嬉しさがありますね。ちょっとずついろいろ味わいたい女性にはとくに人気が出そうです」
そこに差し出される小皿。
「付け合せのネギと海苔は、お好みでどうぞ」
これも嬉しい。
舞華は早速ねこったーにこの屋台の情報をアップする。もちろん『猫島軒』や『すすきの』の情報も忘れない。寝子島観光の一助となれば幸いというやつだ。
隣のテーブルで冷たい三色麺を啜っていた日々野 結衣香も満足そうに箸を置いた。
「うわ～、すっごく美味しかったです～、ごちそうさまです！」
「まいどー！」
歴史が好き。とくに日本史が好き。時代劇も好き。いわゆる歴女。
いつもは寮や図書館でそんな世界にまったりと浸りながら本を読んだりするのが好きで引きこもりがちなところもある結衣香だったが、偶然聞いたn.k.FMの声――「街に出て」――が、躊躇う背中を押してくれた。
出てきて良かった、と思う。
見たことのない食べ物、普段とは違う賑わいに、結衣香の胸は躍る。
後にした三色麺の屋台の前では、榛名が明るい声を響かせている。
「水沢うどんをよろしく！ 猫島軒をよろしく！ 蕎麦屋すすきのをよろしく！ シクヨロ！！」
そんな声もまた、祭りらしくて楽しい。
どういうわけか、実家がなにがしかの麺屋さんという少女たちがこのクラスに多く配されたのである。
ラーメンか蕎麦かうどんかという違いこそあれ、いずれ劣らぬ麺を愛する乙女たち。自然と会話も弾み、友情も育まれてゆくというもので。猫の模様に『三色麺』の文字の入ったお揃いエプロンは手作り。屋台のあちこちにもネコフェスに掛けて猫や肉球があしらわれ、準備の時からわいわいと盛り上がっていた様が見えるようだ。
『三色麺』の店主たちはそれぞれの仕事着に揃いのエプロンで、くるくる忙しそうに立ち振る舞う。
「いらっしゃいませアルー美味しい麺料理ありますアルヨー」
赤いチャイナドレスにお団子頭の畑中 華菜子は、地元に愛されて２０年、ラーメン店『猫島軒』の看板娘。エセ中国人のような話し方だが、れっきとした日本人である。
緑色の作務衣にショートカットも爽やかな薄野 五月は、眼鏡の奥でにっこり笑む。猫島軒と同じく参道商店街にのれんを出す手打ち蕎麦屋『すすきの』のお嬢さん。
実家が群馬で数百年続く伝統ある水沢うどんの店という水沢 榛名も、サイドにまとめたポニーテールを揺らして声をあげる。たすき掛けした格子模様の着物は実家から送って貰ったものだ。
「冷やしちくわ……硬くて長くてこれは思った以上に……いえ、美味しい食べ物ですね」
手持ちのカメラでちょいとサービス気味に自撮りして、檜扇 舞華は屋台からの呼び声に足を止めた。
「おや、『三色麺』だそうです。いったいどんな食べ物なのでしょう？ ――すみません」
カメラを止め、五月に取材交渉。
「はい、取材ですか？ テレビねここさん？ それともn.k.FMさん？」
「いえいえ一個人ですが、星ヶ丘寮に住む我がご主人から楽しい動画をアップしろとの命が下りまして。メイドたるあたしはご主人の期待に応えるべくこうして動画を撮影しているのです。ねこ動やねこったーで紹介させていただきたいので、少々インタビューなども構いませんか？」
ＯＫである。
舞華はさっそくメニューを見る。
メニューは２種類。
『温かい三色麺』
『冷たい三色麺』
折角なので両方注文してみる。
「温かいのと冷たいのはどう違うんですか？」
舞華が尋ねると、華菜子が猫のイラストが付いた可愛らしいどんぶりを置いた。
「温かい三色麺は、これアル！」
湯気とともに立ち上る醤油の香り。
濃い色のつゆの中に色違いの麺の玉が３つ、水戸黄門の葵の御紋みたいに鎮座ましましている。
「ラーメン、蕎麦、うどんの３つがいっぺんに楽しめるアル！ お出汁は猫が好きそうな鰹節と煮干し。つゆは中華麺、そば、うどんすべてに合う醤油ベースにしたアルヨ！」
舞華は箸をつける。
「この中華麺は猫島軒のものですか？」
「そうアル！ 蕎麦はすすきののだし、うどんは水沢うどんアル！」
「水沢うどん？」
舞華が聞き返す。すると格子の着物の袖をぐいとまくって、榛名がその言葉待ってましたと見得を切った。
「説明しよう！ 水沢うどんとは日本三大うどんの一つで、４００年前より群馬県は水沢地内にある水澤寺付近で提供される手打ちうどんである！ 自慢じゃないがうちの実家は４００年前から続く水沢うどんの名店でね、今日のためにわざわざ群馬の実家から取り寄せたんだよ。だから味は折り紙つきさ」
「そう聞くと、ますます美味しく感じますね」
舞華がうどんを啜っていると、次のどんぶりが運ばれてきた。
「お待たせしました、冷たい三色麺です」
五月が置いたそれを舞華はしっかりとカメラに収める。今度のどんぶりは仕切りのある肉球型だった。指にあたる部分には三種のつけ麺、掌にあたる部分には氷の浮かぶ冷たいつけ汁が入っている。
それぞれの麺を味わうと、舞華は深く頷いた。
「いいですねー。これは松花堂弁当的な嬉しさがありますね。ちょっとずついろいろ味わいたい女性にはとくに人気が出そうです」
そこに差し出される小皿。
「付け合せのネギと海苔は、お好みでどうぞ」
これも嬉しい。
舞華は早速ねこったーにこの屋台の情報をアップする。もちろん『猫島軒』や『すすきの』の情報も忘れない。寝子島観光の一助となれば幸いというやつだ。
隣のテーブルで冷たい三色麺を啜っていた日々野 結衣香も満足そうに箸を置いた。
「うわ～、すっごく美味しかったです～、ごちそうさまです！」
「まいどー！」
歴史が好き。とくに日本史が好き。時代劇も好き。いわゆる歴女。
いつもは寮や図書館でそんな世界にまったりと浸りながら本を読んだりするのが好きで引きこもりがちなところもある結衣香だったが、偶然聞いたn.k.FMの声――「街に出て」――が、躊躇う背中を押してくれた。
出てきて良かった、と思う。
見たことのない食べ物、普段とは違う賑わいに、結衣香の胸は躍る。
後にした三色麺の屋台の前では、榛名が明るい声を響かせている。
「水沢うどんをよろしく！ 猫島軒をよろしく！ 蕎麦屋すすきのをよろしく！ シクヨロ！！」
そんな声もまた、祭りらしくて楽しい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2014年06月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2014年06月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2014年06月16日 11時00分
