ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！｜リアクション

ネコミュージックフェスティバルｉｎＳＵＭＭＥＲ！

　華やかな色彩で縫い上げた舞台衣装が揺れて舞う。璃人は微笑む。
「いい舞台になりそうなのです」
　衣装と音楽、方向性は違えど同じ表現者として、協力したかったこともある。それから、まだまだ始動したばかりの『Lechat』の宣伝にもなればとちょっぴり考えてしまったこともある。

　それでも、衣装提供を決めて本当に良かった。心からそう思う。
「うん、本当だね」
　璃人の傍ら、『Lechat』の一員として衣装製作に携わった高尾日菜が柔らかな栗色の眼を優しい笑みに細める。
(最初はネットゲームからだったよね、りぃちゃん)
　服飾店を開くという璃人の夢が、こうして現実でも形になっていくことが嬉しかった。その手伝いを出来ることが、何よりも幸せだった。
　二人、笑顔を見合わせて思い出すのは、二人で衣装製作に費やした準備期間の日々。
　一緒に顔を突き合わせ、一緒にああでもないこうでもないと必死にデザインを考えた。
　衣装製作にあたり何よりも問題だったのが、登場人物の多さに伴う衣装数。そのため、今回は裁縫に携わらない日菜もそれを手伝った。本縫いをして仕上げるのは璃人にしか出来ないけれど、裁断や仮止めならできるはず、と。
　それでも、どれだけ縫っても仕上げても終わらない作業に璃人が軽く絶望に陥ることもあった。
　その時は、

　疲れてしまった璃人に日菜がお茶を淹れて振舞った。　
　普段は相談こそすれ、制作自体は一人で行っていた璃人にとって、日菜の献身的な助力は新鮮だった。一緒に作り上げている感に感動さえしてみたりもした。
(なんか夫婦みたいだったなぁ)
　大変ではあったけれど、すごく充実していた準備期間を思い出して、うっかりそんな風に思ってしまって、日菜は急に恥ずかしくなった。柔和な童顔を赤らめ、誰にも見つからないよう小さく息を吐く。
(私も、衣装制作に携わってたんだなぁ)　
　しみじみと思う日菜の瞳を、璃人はそっと覗き込む。
(迷惑じゃなければ、またお手伝いをお頼みしてもいいでしょうか……)
　そう言いかけた少女のように見える唇を、頬を赤く染めて閉ざす。言いかけた言葉を誤魔化して、笑う。
「さあ、次は客として観に行きましょうー！」
　日菜の手を引き、衣装担当の二人は舞台裏から観客席へと駆けて行く。
「……よし、と」
　指定された設備を指定された場所に設置し終え、松生はお祭り前の準備に似て賑わう舞台裏の人々を見渡す。
　即興オーケストラが舞台で奏でていた忙しげな音楽は、いつの間にかゆったりとした『ユーモレスク』に変わっている。もう少しで、NCCによる音楽劇の幕が開く。
　裏方の松生は開演前に一息吐く。鞄に入れていたペットボトル入りのお茶を口に含んで、くすり、小さく笑む。
(一番近くでミュージカルを楽しめるのも、実は裏方なんじゃないかしら)