甘味処、神楽。新メニュー考案会と試食会のお知らせ｜リアクション

甘味処、神楽。新メニュー考案会と試食会のお知らせ

「そういえば、皆は何を作るつもりなんだ？」

　顔見知りが大半ではあったが簡単な自己紹介を終えて、レシピを考えている最中、修が皆にそう言った。
　作ろうと思っている物に被りがあるようなら、一緒に作ればいい。
　それに皆が何を作るのか興味もあった。
　修と真央は共同である程度意見を纏めてきている。手空きになるようだったらば手伝うことも可能だ。

「修ちゃんと真央ちゃんは二人で前もって考えてきたのだ！」

　そう言って、ででんと真央はレシピの写しを見せた。
　平たく言うならばまんじゅうとクッキーだ。製法と見た目に拘っている内容でどちらかというと人目を引いて勝負する内容だった。

「私は抹茶を使ったくず餅とケーキのセットでしょうか。午後から友人達が来る予定なのでそこで振る舞おうかと。お店に出してもらえるほどのレベルではないですけれど……」

　考えるように舞が言った。
　見た限りではあるが、神楽で抹茶を取り扱った商品はなかった。
　ならば、案の一つになるだろうという考えだが、それ以上に昼頃から試食会に来る友人達に振る舞う方が主ではある。

「ううむ……。やはりスイーツを食べる客層のメインと言えばレディだよね」

　唸るように信彦もレシピ考えの方に参加している。
　レディを起点として、美容効果やローカロリーなんていう単語も飛び出しているあたり、真剣に考えているようだ。

「レディ達が惹かれるテーマでお菓子作りをするのが一番かなあ。例えば、豆乳を使った草餅とかどうだろう！？」
「八十八旗、草餅に豆乳を使う発想に至らないんだが……。どうするんだ？」
「そ、それはほら、あれだよ、やがみん！」

　修に突っ込まれて、信彦は狼狽える。深いところまでは考えていなかったようだ。
　それをフォローするように舞が言う。

「お餅に混ぜ込む前のヨモギを、豆乳と一緒にミキサーにかければいいのではないでしょうか？」
「そ、そうそう！　それそれ！　それがいいたかった！　ありがとう！」
「体のいいスケープゴートが見つかった感じダネ」

　調子よく舞の意見にのっかる信彦に、ボイスチェンジャー越しの何ともいえない声で茶化す月詠。
　皆の視線が月詠に集まっているが、月詠自身気にしていないようだ。

「ああ、ソウカ私の番ダナ」
「月詠ちゃん、暑くないのだ？」
「今日はソウイウ気分ダ。サテ、私が作ろうと思ってイルのは秋の物ダネ」

　被り物をしたままの月詠についに真央が切り込む。
　しかしそれを適当に流して、月詠は当初の通り自分の作るレシピについて解答した。
　さつまいもや栗と言った秋の味覚をふんだんに使ったケーキに、定番といえば定番のカボチャプリン。

「和菓子のイメージに捉われない和洋折衷スイーツなんてどうだろう」

　定番商品を考える４人とは違った切り口で意見を出す月詠に、皆が感心していた。
　そして丁度意見が出揃い、エクルに各自何を作りたいかを伝えようとしたところで、来客が一人来た。

「まだお手伝い募集してるのなの？」

　独特の口調と朗らかな笑みを浮かべて入店してきたのは、橘明里だった。
　明里に気付いた信彦と真央が歓迎するように声をあげる。

「あかりんじゃないか！　また奇遇だね！」
「明里ちゃんなのだー！」

　わあっとすぐに皆の輪の中に入り込み、皆は明里に趣旨を説明する。
　少し考えて、明里はすぐに意見を出した。

「やっぱり美味しい甘味に白玉団子は欠かせないよネッ！　モッチモチのお団子は正義だと思うのなの！」
「例えばどんなのなのだー？」
「うーん、夏だしスイカのシロップ漬けと混ぜたフルーツポンチ風とかいいと思うの。シロップたっぷり使うから持って帰れないけれどお店で食べるにはとてもいいと思うの！」

　真央が詳細を聞き出し、明里は自分の考えている内容を伝えた。
　そして各々が作りたい物を決めたところで、それを纏めてエクルに報告した。
　買い出しに出ている結依に足りない材料を伝え、今あるものでできることから始めることとなった。

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