あつくてあつくて｜リアクション

あつくてあつくて

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うだるような暑さに、普段演出しようとしている優雅な女性っぽさはどこへやら。
「ああもう、このうだるような暑さは反則ね……」
エヴァ・ブランシェは、扇風機の前にごろ寝して扇子を仰いでいた。
かろうじて扇子に優雅さがあるようなないような。
時々服の前をバッサバッサやって、風を送りんだりしている。
「誰かあたしを涼ませにいらっしゃーい」
なんてことを言っていたら、呼び鈴の鳴る音が響いた。
タンクトップにホットパンツな格好も忘れ、出迎えに玄関へ。
「はーい、どちらさ――あら」
引き戸を開けるとそこに居たのは、
「よう、ブランシェ。スイカのお裾分けだけど要るか？」
半分に切った大きなスイカを掲げる刀と、
「はじめまして、北条冬華です」
ぺこりと頭を下げる冬華だった。一応ブランシェと冬華のクラスは同じなのだが、あまり機会がなくてはじめまして同然である。
「って随分色っぽい、じゃないだらしない格好だな」
「涼しそうな格好ですね」」
言われて自分の格好に気付くブランシェ。まあ、格好自体は冬華も全く同じなのだが。
それから、どこか開き直ったように笑う。
「殊勝な心がけね。お礼にあたしの生足を眺める権利をあげてもいいわよ」
（その権利、遠慮なく頂きま――はっ！？　いや違うんです！）
危うくとんでもないことを口走りかけ、刀はぶんぶん頭を振ってそれを追い出した。
生足眩しい薄着の美少女が二人、健全な青少年の目が行くのは仕方ない！　仕方ないんだ！
そんな刀の様子に冬華は首を傾げ、ブランシェはくすくすと笑う。
「スイカのお裾分けはありがたいわ。ささ、２人ともお上がりなさいな」
「お邪魔しますね」
「んじゃお邪魔しまーす」

「さっき沸かしたばかりだから少し生温いけど、そこはご愛嬌ってことで」
切り分けられたスイカと、氷の入った麦茶のグラス。いかにも日本の夏と言った風景。
「いやー、ありがたいよ麦茶」
言いつつ、刀は早速スイカにかぶりつく。しゃく、っと涼し気な音がした。
「うん、美味い」
「とても美味しいですわ」
隣でスイカを食べる冬華のスイカに目が行ってしまったり、行かなかったり。
「それにしても、純和風のお家なんですね」
スイカを食べる手を止め、周囲を見回す冬華。
「あたしの家は両親が日本贔屓だからね」
そんな両親に育てられた結果、ブランシェも「心は日本人」を豪語する程になった。
「そうなんですか」
なんの気はなしに周りに伸ばしかけた手を、
「……あ、むやみにその辺の物に触れちゃダメよ」
ブランシェの言葉で慌てて引っ込める。
「あ、ごめんなさい」
「ごめんなさいね。触られると困るとかじゃなくて、うちの両親の置き土産があって危ないから」
「……ブランシェ、触ると危ない置き土産って何だ？」
至極真っ当な疑問を、刀が口にする。
「不審者撃退用トラップよ」
確かにメチャクチャ危なかった。
「それにしても、どうしてこう日本の夏ってサバイバルな暑さなのかしら……」
スイカを食べ終え、ブランシェはため息混じりにぼやく。
このままじゃ家で蒸し焼きよ、とうなだれる彼女に、
「そんなに暑いなら、みんなで新しくオープンした寝子島スポーツセンターのプールへ行くか？」
「カフェレストランもありますし、涼むには絶好の場所ですね」
元々そこへ行くつもりだったこともあり、冬華は刀の提案に乗っかった。
「そうそう、食事をして帰れば日も落ちて少しは涼しくなってるよ」
「ふむ、このまま家に居るよりは良いかもしれないわね」
ぱん、と机の上に両手置いて、
「それじゃあ、行きましょうか！」