あつくてあつくて｜リアクション

あつくてあつくて

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高い金属の細い柵で囲われ、ペットラン状態に整備された大きな庭。
設置された木立に水場、木製の遊び場やつりかごを、所狭しと動物たちが駆けまわっている。
白猫のミルク、黒猫のブラック、銀猫のミスト、ミケ猫のマーブル、ロシアンブルーのブルー、サバトラのパトラ、虎柄のタイガ、色に沿った名前をつけられた、七匹の子猫と、柴犬の子犬のカーキー。
そんな賑やかな庭の涼しい木陰で、八神修は科学の学術書を開いていた。ちなみに課題とかではなく、趣味の勉強である。
懐いているのだろう、動物たちはそんな修に無邪気に飛びついてくる。
猫達が背中をよじ登って頭の上に乗っかったり、
「ほら、そんな所に居ると危ないぞ」
カーキーは遊んでほしいとばかりに服を甘咬みして引っ張ったり。
「はは、服に穴開けたりしちゃだめだぞ？」
そんな動物たちの戯れに、修は科学の学術書から目は離さずに構う。
おざなりというわけではなくて、ちゃんと撫でてだげたり、おもちゃを使ってあげたり。
カーキーが投げられた骨のおもちゃをくわえて戻ってきたら、
「よーしいい子だ」
きっちり褒めるところまで。
本人は半ば無意識である。慣れか、それとも集中力のなせる技か。
学術書の上に乗っかられても、
「こらこら、それじゃあ読めないだろ？」
苦笑しながらひょいっとおろして、器用に片手で構ってあげる。
そんな風に動物たちと遊びながら学術書を読むことしばらく。
「休憩するか。お前たちも、ちょっと疲れただろう？」
そういえば、とかき氷の出前のチラシが今朝入っていたことを思います。木陰に居たから感じづらかったとはいえ、今日は真夏日。
かき氷を食べるのもいいかもしれない。思い立って、早速注文。
「ミゾレ味を１０個。シロップは半分で頼むよ」

「毎度あり♪　和菓子屋「萩屋」をご贔屓に！」
改造バイクで秋が到着。
「シロップは半分のミゾレ味１０個！　お待ちどうさん！」
「ありがとう。こっちのシートに置いてもらえるか？」
庭にしいたレジャーシートの上に、１０個のうち８個を置いてもらって。
寄ってきた８匹に、
「待て」
と制止をかける。「待て」の訓練である。皆ぴたっと動きを止め、修の方をじーっと見つめている。
特に好奇心旺盛な子猫たちは、かき氷に興味津々の様子だがぐっとこらえている。
「おお、皆よく言うこと聞くねえ」
感心した様子の秋に、修はふっと笑ってみせる。
そうして「待て」をさせること数分。よし、の指示を出してやる。
興奮して氷に群がっていく動物たちを、
「よく我慢出来たな。偉いぞ」
一匹ずつ頭を撫でたりして目一杯褒めてやる。
「食べ過ぎるなよ。腹を壊すからな」
「……しかし、可愛いなあ」
くすくすと笑う修の横から、秋がにゅっと手を伸ばす。
「どれ、お姉さんももふもふしてやろう。……あ、大丈夫かな？」
「ああ」
許可をもらったのでおおっぴらにもふもふ。もふもふ。サービスに、何故か持っていたビーフジャーキーをカーキーにあげたりもしつつ。
「萩も涼んでいくか？」
ふと、修がそんなことを言い出した。
秋はちらっと空を見上げ、それから出前の注文票を確認。まだ次の出前注文は入っていない。
「お言葉に甘えちゃおっかなー！」
というわけで、木陰に入りかき氷に群がる動物達を眺めながら、かき氷をいただきます。
「クーラーばかりじゃ健康に悪い。汗もかかないとな。それに、こうして食べるかき氷は最高だと思わないか？」
そう言って修が笑うと、
「わかってるじゃない！」
と秋も笑顔で返すのだった。