山でレンジャー！｜リアクション

山でレンジャー！

　いってきまーす、と元気な声で鴇波羽衣は実家を後にした。ボーダー柄のＴシャツにオーバーオールの組み合わせは傍目に活発な印象を与えた。
　気持ちが抑えられないのか。速足は小走りに変わり、間もなく笑顔の駆け足となった。陸上部の練習のように大きく腕を振って山へと向かう。ポニーテルが勢いよく左右に振れて、背中の小ぶりのリュックサックも陽気に同調した。
　少し走る速度が落ちた。訝しげな目で山を見上げる。
「なにかな、あのピンクのモヤモヤ」
　口にした途端、羽衣は背中のリュックサックのサイドポケットから細長い布を引き抜いた。首に引っ掛けて素早く両腕に巻き付け、全力の走りに移行した。
　眼前に迫る下草の生えた斜面を勢いで駆け上がると、躊躇いなく真後ろに跳んだ。背面跳びの形で宙を回って滑らかな上昇を開始した。ろっこんの発動条件を満たして、ただの布は天女の羽衣となった。
「飛行部隊の小屋は、あたしが守る！」
　羽衣は羽ばたくような布に導かれ、優雅に空を舞った。