薄暗い山の中、重装備を課せられた屈強な男達の行軍が続く。疲労で膝を折る者には容赦ない怒号が浴びせられ、復帰を余儀なくされた。耐え難い喉の渇きで泥水を啜る者もいた。全員に疲労の色が濃い。
紅一点、
橘内 みちるだけは弾けるような笑顔を浮かべていた。無骨なヘルメットは被っていない。明るい茶系のセミロングで目尻の近くには星形の髪留めを付けていた。リュック等の荷物を持たず、迷彩柄のTシャツにハーフパンツという軽装だった。
「レンジャーったい!」
男達の言葉を真似て声を出す。運動靴を履いた足で軽やかに斜面を歩いた。
睡魔に襲われている者がいれば、みちるは駆け寄って、がんばらんね、と励ました。
「レンジャー」
「そう、レンジャーったい!」
みちるは相手に肩を貸しながら元気に答える。
奥深い山に「レンジャー!」の声がこだました。
「……レンジャー?」
布団で横向きに寝ていたみちるが目を覚ました。のろのろと布団から這い出して、建て付けの悪い窓を力任せに開け放つ。
僅かに風が吹いている。大きく息を吸い込んで、惜しむようにゆっくりと吐き出した。
「山の匂いやね」
瞼を閉じる。何かを思い出して微笑み、瞬時に目を見開いた。
「山登りに行くったい!」
急いで着替えを始めた。
みちるは気付いていなかった。寝ている間に頭から抜け出した、ピンクの霧のようなものが天井に漂っていることを――。開いた窓に吸い込まれるかのように移動を始める。
外に解放された霧は急速に広がり、九夜山の裾野に覆い被さるようにしてとどまった。誰の目にも見える状態なので人々の関心を寄せた。
暑くて熱い一日の始まりであった。
今回は休日の山登りがメインのお話になります。妖しげな霧の発生で、ただの山登りでは済まないかもしれません。
以下に詳しい内容を書いておきます。
ピンクの霧のようなもの
・神魂の影響で彼女の夢が霧状になったものです。身体に害はありませんが、体内に取り込みますと「レンジャー!」
という言葉を無性に言いたくなります(個人差があります)。声に出した瞬間、性格等に関係なく気分は高揚して
何事にも真剣に打ち込むようになります(アクションに口調の指示がなければ、明るい感じになります)。効果は数時間程度なので夕方には通常の状態に戻っていることでしょう(容器等に採取したものも消えます)。
※事情によって声が出せない場合は「レンジャー!」の文字でも同等の効果を得られます。
行動
・徒歩による山登り。
・ロープウェイによる移動(霧の影響を受けません)。
皆さんはどのような暑くて熱い一日を過ごすのでしょうか。
普通の山登りで清々しい汗をかくのでしょうか。
霧の影響を色濃く受けた人はレンジャー訓練に励むかもしれません。
皆さんの記憶に残る一日になることを願っています、レンジャー!