中庭花壇、伝説のバラバーラ｜リアクション

中庭花壇、伝説のバラバーラ

●キスの秘密

「ちなみに彼が言うには、『キスが解除条件』じゃないか、だそうだよ」
　旅鴉月詠は瞑っていた目をゆっくりと開け、冷たく眉をしかめた。
「ところでミッシェル氏、普通に不審者だが通報されたいか？」
　じゅるじゅると湿っぽい音を立て、蜘蛛のように四つん這いになっていたおぞましい生き物が顔を上げる。
「あらぁぁん、褒めないで～ン♪」
　

　嗚呼、彼の足元には、無残にもキスマークだらけになった須崎蒼志君（ぴちぴちの１６歳）が、死んだマグロのようにごろりと横たわっている。
　説明しよう！
　噴水から這い出して濡れたシャツのまま猛ダッシュした蒼志は、不運なことに女豹のような目つきで獲物を狙っていたミッシェル・ナイスゲイに見つかり、彼の四つ足シャカシャカエクソシスト走行からのハイジャンプ、からのナイスゲイキッス！　というコンボを喰らった挙句に、ライフを全部削られてしまったのだ！
　もはや彼の瞳に宿るのは虚ろさのみ。
　辛うじて、口だけは死守したぞ……！　それだけである……！

　そしてミッシェルはといえば、キスしても元が元だけに何も変わらないのであった。ひどいことだ。
　蒼志を味わい尽くしたミッシェルは、視界に入ったイケメンを片っ端から捕食すべくまた移動を開始する。

　残された蒼志の口もとが僅かに動いた。
　た・す・け・て……。

「少年よ、強く生きろ……！」