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夕暮鳥居のその向こう
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夕暮れ鳥居のその前で翁面の男から渡された西洋風の仮面を、ふたり、被る。
鳥の翼と剣を象った、額から鼻先までを覆う華やかな仮面は、黒を基調としたものが
御剣 刀
のもの、青を基調としたものが
小山内 海
のもの。
対の仮面で隠した顔を互いに見合わせ、海と刀はどこか照れくさげな笑みを交わす。手を繋ごうとして繋げずに、二人で鳥居を潜る。
夏の夕暮れの色に染まる境内を、縁日の屋台が賑やかに彩る。
人込みにはぐれないよう、触れそうで触れられない距離を保ちながら、石畳の道を辿る。
声を出すことの叶わない海が、けれど楽しげにあちらこちらの出店へと仮面に覆われた視線を向ける。サイドテールに纏めた色素の薄い茶色の髪が、夕日を受け紅茶色に染まって揺れる。
小動物にも似た海の仕種を、刀は仮面に隠した目で追う。
刀の優しい視線に気付いて、海は恥ずかしそうに瞳を伏せる。唯一見える唇を淡く笑ませ、取り出したスケッチブックに素早く筆を走らせる。
『お祭り、たのしい』
「そうだな」
頷いて、笑ませようとした口元が凍る。仮面の奥の瞳に力が籠もる。背筋が伸びる。
視線の先、いつか追いつき追い越そうと思い定めた人の背中が、死んだ祖父の背中が、あった。
振り向かぬその背中、面を掛けて見えぬ筈の顔、けれどあの歩法や重心の動きは祖父のものに間違いはない。ずっと見据えてきた背中を、見紛うはずがない。
人込みに紛れようとする祖父の背を追おうと踏み出しかけて、海の手を咄嗟に掴む。
驚いたようにぎくりと小柄な体を震わせる海に、事情を話す余裕もなく駆け出す。
面を被った人々の間をすり抜け、夕暮れの光と石灯篭の光が入り混じって揺れる石畳の参道を踏んで、二人は駆ける。
(どうしたの? 何か見つけたの?)
刀に手を引かれるままに走りながら、海は恋心を抱く少年の背中を見つめる。
屋台の並ぶ参道を抜け、人気の少ない千本鳥居の石階段を駆け上る。鳥居の朱色と夕日の緋色が斑に混ざる階の半ば、刀が追い続けてきた背中は歩みを止めた。
「祖父さん!」
確かめるように、刀が声をあげる。
もう居ないはずの刀の祖父が振り返る。
階の上と下、互いに顔を隠して、祖父と孫は対峙する。
「俺、祖父さんに言っておきたい事があるんだ」
言葉を発さぬ祖父を真直ぐに見据え、刀は己が定めた心を言葉にしようとして、珍しく言葉に詰まる。伝えたい事は決まっている、けれど何から伝えればいい?
拳に変えようとした手が、思わず連れて来てしまった海の手を握り締める。掌に納まる手から、背に庇う格好になっている海から力を得て、刀は深呼吸する。
もう一度、祖父を見仰ぐ。
「俺は祖父さんから教えてもらった剣術を極めたかった、極めて、どうだ? って祖父さんに言いたかった」
幼い頃の憧れを、夢を、その思いのまま口にする。
「教えてもらった事を一生懸命に練習したんだ。できなかった技もできるようになったよ。俺、本当に頑張ったんだ」
祖父に、認めてもらいたかった。それだけだった。けれど、
「でも、それに意味がなくなったんだ」
瞬きした途端、あの時の光景が脳裏を過ぎる。途端、軋むようにこめかみが痛んだ。取り返しのつかない過去に怒りが噴き上がる。火が爆ぜるような憤怒に心身を焼かれ、刀は歯噛みする。
「……アイツを、守れなかった」
引き結んだ唇の端、堪えきれぬ悔恨が低く零れる。
己に向けた怒りがこめかみを疼かせる。
「俺はどんな手を使ってでも俺の大切な物を、ずっと続いて欲しいと願う俺のフツウを守るって、決めたんだ」
祖父と同じに極めようとした道が、失せた。
「剣術はその為の手段にしかならなくなった」
だから、と刀は生真面目な礼をする。
「ゴメンなさい」
海は誠心誠意詫びる刀の背中を見つめる。夕日の揺れる階段の上に立ち、黙って刀の述懐に耳を傾ける老人を見つめる。
守れなかった、と刀が零した言葉を、あの時同じ場にいた海は胸が痛む思いで理解する。
(……先輩の事だよね)
あの人を守れなかったと悔やむ思いは、刀と同じようにあの人を守ろうとした海にもある。
辛い思いにせめても寄り添おうと、海は刀の手をきつく握り返す。
刀が頭を起こす。いつもは頼もしい背中が、今日は何だか小さく見えた。
「祖父さん」
刀の呼びかけに、祖父の肩が僅かに揺れる。笑ったのか、嘆息したのか。海には分からない。
刀の道を塞ぐように、巌の如く立っていた祖父が歳を感じさせぬ軽い足取りで階段を降りて来る。身を強張らせる刀の背中をひとつ叩き、海に丁寧な会釈をして、祖父は階を降りて行く。
「祖父さん」
振り向いて追おうとする刀を、肩越しに手をひらひらと振る、それだけの仕種でその場に留まらせ、祖父は千本鳥居の揺れる夕日の中に去った。
祖父に叩かれた肩を片手で押さえ、刀は面で隠れた顔を俯かせる。今はきっとひどく情けない顔をしている。
幼い頃からずっと追い続けてきた道を、守りたいもののために断とうと決めて、それを祖父に伝えた。けれど。
冷たい面で覆い隠した顔を、面よりも冷たい雫が伝う。
傍らに立っていてくれる少女に、こんな顔は見られたくない。
「痛かったよな、ゴメン」
ずっと強く握り締め続けていた海の小さな手を離そうとして、逆にきつく掴まれた。
俯かせた視界の端、海の足が夕日色の階段を登る。
海は刀よりも一段高い石段に立つ。手を繋いだのとは反対の手で刀の頭を抱き寄せる。
(私に、頼って)
静かに体を震わせて俯いて、涙を必死に隠そうとする刀が心配だった。涙声でこちらを案ずる少年を、手だけではなく、体ぜんぶで支えたかった。
無性に甘えさせてあげたかった。
(こういう気持ちが母性っていうのかな?)
戸惑ったように首筋を強張らせる刀の黒髪を、母親がいつかしてくれたように優しく撫でる。抱え込んだ頭に頬を押し付ける。
(泣きたいときは我慢しないで泣くのが一番だよ)
抗うように硬くなっていた刀の体から力が抜ける。幼い頃から鍛錬に励み続けてきた無骨な腕が、どこか恐る恐る海の背中に回る。
海がもう一度刀の髪を撫でて、途端、刀は海を縋りつくように抱きしめた。声を殺して、泣く。
夕暮れの茜に隠れて、海の優しさに甘えて、波打った心が凪ぐまで泣いて、――
「ゴメン、小山内」
刀は涙で熱を持った息を吐き出す。ちょっと笑って、冷たい石階段に腰を下ろす。
『本当にあきらめられる?』
海は今度は刀より一段下の階段に降りてしゃがみこむ。気持ちを記したスケッチブックを刀に示す。
「諦められるなら、こんなみっともない事になってないよ」
苦く笑う刀の答えに、海は微笑む。
(そっか、それなら大丈夫だね)
懸命に頑張ってきたこの人は、極める事を諦めたわけではない。
『べつのもくひょうができたからそっちにせんねんするってこと』
「ああ」
『そのもくひょうがたっせいできたらまたもどってこれる』
「ああ、そうだな……」
海の文字を、海の顔を、刀は見つめる。大きく、頷く。
「うん、いつかきっと」
声が力強さを取り戻す。
「小山内、」
少年は立ち上がり、少女に手を差し伸べる。
「ありがとう」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
SF・ファンタジー
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年05月14日
参加申し込みの期限
2014年05月21日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年05月21日 11時00分
参加キャラクター一覧
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