【身体測定】♂♀反転戦線、異常アリ！｜リアクション

【身体測定】♂♀反転戦線、異常アリ！

【15】

　ヨハン・プレストンが身体測定のために保健室へ向かおうとしている最中、廊下の角で播磨と衝突してしまった。
　ヨハン自体は鍛えているため、吹っ飛ばされることなくそのまま擦れ違うだけに留まった。
　だが、他の生徒よろしく、性別反転は免れない。
「……」
　ヨハン、自身の身体の変化をまず確認。
　痩躯のモデル体型、貧乳。そして竿がなくなってる。
　冷静に、冷徹に、冷血に判断を下す。
（さっきの人物、確か同じクラスの播磨愛李子……。なるほど、播磨はもれいびで、この変化は彼女のろっこんか……）
　ヨハンは心の中で呟くと、まずは人目に付かない場所へ移動。
　スマホを取り出して、とあるサイトに接続する。
（……『ワースト』に呼び掛けてみるか）
　ネット上にぽつんと存在する、最低野郎たちの憩いの場、『ワースト』。
　ヨハンはその中にたむろする仲間に、今起こった内容を投稿してみた。

　【クラリック】
　……今、同じクラスの女子生徒とぶつかったら、性別が反転していた……。
　他でも同様の騒ぎが起きているのか？

　【クラリック】はヨハンのハンドルネームである。
　その発言から僅か数分後、【テロ屋】から反応が。

　【テロ屋】
　……ふん、どうやら俺は【クラリック】と同じ現場に居合わせているようだ。
　この騒ぎ、面白そうだな。１つ、俺にいい考えがある。
　乗っかりたい奴はここで反応してくれ。ダイレクトメールで落ち合う場所を送る。
　合言葉は……。

　Q.周りの青春は？
　A.自分の為にある

　だ。
　緑のコートを着た人物が俺だ。
　期待せずに待っている……。

（緑のコートの人物、か……）
　文面を確認すると、すかさずこの発言に反応を示すヨハンであった。

「素敵。　ワースト　に　感謝　ね」
　たどたどしく喋る黒髪のザンバラ頭の少女、三月紫尾。
　彼女は『ワースト』で事件の内容を知り、校内を徘徊していた。
　三月の目的は、事件を起こしている人物の特定や捕縛などではなく、被害にあった人物そのものであった。
「事件　の　発端者　を　捕まえて　騒ぎを　止め　　なくて　いいかも」
　無表情であるが、目の奥が爛々と輝く三月。まさに外道。
　そして播磨とぶつかって女体化している難波辰を発見した。

「いってぇ～……！　ダンプカーみたいな女と衝突して、気付いたら女になってるとか！？」
　難波は肩をがっくり落として凹んでいた。
　何故なら、彼のろっこんでいつでも女体化できるからだ。
　あんまり有り難みのない話である。
　ちなみに、今の彼の姿は『金髪ショートヘア　ぼんきゅっぼんの美少女』になっている。
　とりあえず、自己主張しすぎな自分の胸を触ってみた。
「すげーな、たゆんたゆんの巨乳だ。この掴み心地　推定Ｆカップ？　……っていつも俺は女性になれるっつーの！」
　いっそろっこんを使って、性別反転すれば男に戻れるか？
　若干狼狽していたその時、後ろから三月に肩を叩かれる。
「あなた　そんな　に　慌てて　どうした　の？」
「……なんや、けったいな話し方するやっちゃなぁ。自分には関係ないやろ……！」
　三月の癖のある喋り方と怪しい雰囲気が、難波を警戒させる。
　言葉も思わず地元の話し方に戻ってしまうくらいに。
「見たこと　　無い　けど　転入生？　焦って　かわいい……」
　無表情のまま三月は難波に迫ってくる。
　じりじりと壁際に追いやられる難波、流石に尋常じゃない気配を察したようだ。
「おいおい、迫られるのは歓迎やけど、なんか自分、めっちゃ怖いで……？」
　しかし、三月はずいずいと壁に難波を押しやり、無理矢理ハグしだす。
　その行動に怯えた難波、思わず顔が引き攣る。
「名前　を　聞かせ　て？　どこから　来た　の？　友人は　出来た？」
「なんでいちいち自分に教えなきゃあかんのやっ？」
　難波の問いかけに全く聞く耳を持たない三月は、矢継ぎ早に質問をし続ける。
「恋人　いるの？」
「もじもじ　して　どうしたの？」
「私　が　怖い　の？」
「あなた　いい　匂い　する。　もっと　抱き締めて　いい　かしら？」
「もっと　触れる　と　あなた　は　どんな　声　で　鳴くの　かしら？」
　エスカレートする質問内容に、難波は遂に堪えきれなくなる。
「もう、アカンって！　離れろや！」
　難波、思わず三月を突き飛ばしてしまった。
　それでも三月はけろりとして、爛々と禍々しく輝く双眼で見詰める。
「あなた　を　見てる　と　ぞくぞく　する……。怯えてる　の？　震えてる　の？」
「……頭イカれてるんちゃうか？　もう近寄るなアホ！」
　逃げようとする難波。だが、三月がその足にしがみついた！
「どこへ　いく　の？　逃げる　姿、　その　表情も　■■■　する……。　もう　私　の　■■■　が　■■■■■■　で　本当　に　■■■　みたい　に　なって　すごく　興奮　する……」
「ひ、ひいぃ～！！」
　三月の放送禁止用語連発の言葉責めに、難波は遂に恐怖のあまり我を忘れて三月を振り払って逃げ出していった！
　置いてけぼりになった三月。
　相変わらず無表情のまま、衣服に付いた誇りを払い落とす。
　次のターゲットを探そうと『ワースト』を閲覧していると、【テロ屋】のメッセージが目に止まった
「面白　そう」
　三月はハンドルネーム【鬼】を名乗り、【テロ屋】との接触を図ることにした。

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