伝説のジャンボらぁめん｜リアクション

伝説のジャンボらぁめん

エピローグ

　店先の赤暖簾をしまったあと、源次郎は子供達に紙袋を手渡した。
「林檎には、これも持って帰ってもらおうか」
　源次郎が紙袋に入れて寄越したのは分厚い豚チャーシューのブロックが入ったタッパーだった。林檎の紙袋には表参道商店街地区の回覧板、時子と竜也の紙袋にはポチ袋が入っている。
「チャーシューはそのまま食べてもいいし、厚めに切って焼いてもいいじゃろう。……くれぐれも、母親に任せるでないぞ？　父親かお主で調理するんじゃぞ？」
　激しい念押しに林檎は素直に頷いた。母に任せればこのチャーシューは目も当てられない無残なことになる。
「霞さん、お金をいただくわけには……」
　無料券を手に入れただけでも十分だった竜也はポチ袋に困っていたが、源次郎が返すことを許さない。
「どさくさ紛れに働いてもらっておったからな。バイト代は受け取ってもらわねばならん。……どうしても気になるのなら、次来た時に一品頼んでくれればいい」
「……わかりました。今度はおやつ時にデザートを食べに伺いますね」
　時子はそう言って、臨時収入のバイト代を大切に使おうと頭を下げる。
　林檎はその様子を柔らかい眼差しで見つめ、いつも元気な源次郎へと向けた。
「……精々、俺が寝子島に居る間は長生きしてまたやってくれよ？」
『何かあったら頼ってね！』
　いつもの憎まれ口の後に続いた小さな林檎の声。本心がどこにあるのかを知っている源次郎は目尻を下げた。だからこそ、ただの近所のお爺ちゃんとして口を開く。
「心配してくれてありがとうよ。でもなぁ？　林檎ちゃんが成人式を迎えても儂は余裕で現役じゃて！」
　そう言って源次郎は今日最高の笑い声を上げたのだった。

　――一方その頃。
　星ヶ丘寮の自室に戻った舞華は早速動画の編集に取り掛かっていた。動画編集ソフトの操作は慣れたもので、ものの一時間ほどで動画編集を終了する。
　キーボードから舞華は手を下ろし、机に置いたままの財布を見る。
　そこには『はらべこ』のラーメン一年間無料券が収められていた。

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