美味しい実験体験、みんなで実験をしよう！｜リアクション

美味しい実験体験、みんなで実験をしよう！

【やろうよ、動物の型電気パン】

「さて、次は塩と分子振動と電子レンジ原理を紹介しよう」
　そんな修の声が響く中、御剣刀は目の前の事態をゆっくりと受け入れつつあった。
　それが発生するまで刀は、電気パンの作成手順を完璧にこなしていた。
　器具の準備から、設置。電気パンのタネの作成。特に電気パンのタネに関しては、混ぜすぎると変に粘りが出て膨らまないという考えから、手早く混ぜ合わせて牛乳パックへ流し込むという行程を見事にこなし、順調に電気パンを作っていた。
　途中から同じ場所へとやって来た屋敷野梢と逆巻天野を刀に加えた３人で電気パンを作っていた。
「大丈夫、実験マスター屋敷野の名は伊達じゃないですよ―！」
　という梢。
「あぁ、この実験の企画、アガサ先輩ならやりかねない、か」
　という天野。半ば、梢が天野に合流した形になったが、なんやかんやで一応授業だし、実験をすることにはなった。
　こうして、天野と梢が合流して３人にグループになったのだ。
もちろん、天野も梢もしっかりと一回目は電気パンを作り、竹串を刺して粉が付いていないかを確かめる刀を見て、なるほどとマネをしてみてたりして、綺麗な電気パンが三つ完成したのであった。
　さて、その電気パンの第一段階が完成したところで天野がふと、言った。
「ねぇ、これって入れ物の形を変えたら動物型とかも作れるの？」
　という発言だ。
　その発言に先ずは梢が乗った。それから引きずられるように、刀ももそもそと型を作り始めたのだ。
　型の案として、天野から提案されたのが猫型とか、サンマ型とか、コアラ型。
　猫やサンマはともかく、何故コアラと内心は思いつつも、刀や梢はそれぞれ牛乳パックやらを駆使して型を作ってみることにした。
「まぁ、一回は付き合ってみよう」
　そうつぶやきつつ、刀はしっかりと器用にサンマの型を作っていく。この型に通電させると、サンマさんの形が焼きあがる電気パンになるのだ。
　梢は梢で複数の型を制作することに気づいた。少し薄い四角形の電気パンを完成させてから、型抜きをして形を整えたり、一定量のパンを完成させた後から切って形を整えるって手もある。
　故に、複数のパーツを組み合わせて猫になるように型を作ればよいのだ。
「美味しかったら、生物部でも放課後つくりましょー！」
　アレンジにココアパウダーなども電気パンのタネに加えつつ、とりあえず完成した型に流し込み焼いていく……、同じく刀の方も型を完成させ、タネを流し込んだ。
　そして、コアラの型に挑んだ天野であったが……。
「生きたモザイク？」
　当人はいいと思うのだが、やや形は歪んでいるか……？
　デフォルメされているとはいえ、さすがにコアラの形の型を作るのは難しい。
　天野が例え完成させることが出来たとしても、時間が掛かってしまう。
　とりあえず、一度この出来た型にタネを流し込んで作ってみることにした。
　それから、１０分程度の時間がたち、目の前には熱が通りきらなかったものの、なんとか形になったコアラ、デフォルメされた猫とサンマ、この二つはまぁまぁの出来だ。
　それら三つが並べられていた。
「理論的にはできると思ったんだけど……」
「いきなり完全に立体的な形で焼くのは大変かなーとは、思ってたんですが」
「……もう一回やってみたらどうだろうか？　今の結果でどこが悪いかわかると思う」
　少し考える天野に、それを少し意外そうに見る梢。
　そして、刀の提案に天野は首を縦に降った。
「もう一回、やってみよう」
　結局、余った生地などはお土産にすることになった。
　ちなみに、なんとなくコアラな電気パンが完成し、他の動物や、ノリで作った別の型などの電気パンもそれぞれ形にはなった。
「普段より、皆にぎやかだね、一周回って暴走してる人もいそうだけど」
　次のパンを焼きつつ、ふと、他の場所を見回して天野は言った。
「やっぱり、実験は楽しいんだと思いますよ」
　梢が、教室を同じく見渡して言う。
「これが終わったら、皆と交換をしながら、色々と食べよう」
「そうだね」
　刀の言葉に、天野は同意する。
　そんなこんなで、動物の型で楽しく実験しましたとさ。