ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！｜リアクション

ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！

　すでに時間は夜十一時過ぎ。
　今度は男性陣が露天風呂を満喫していた。　
「これは刀っちが思わず見廻り忘れて浸かるのもわかるね」
「だからしつけぇって……」
　温泉の心地良さにリラックスムードが漂う。
「幽霊ってもっと遅い時間に出るんじゃないのか？　それこそ丑三つ時とか」
　八神が首を傾げる。
「そうとも限らないでござるよ。彼らは常に我々の前にいるでござる」
「へぇ。そういうもんなのか」
「夏神くん。あれ」
　結城が指差す方向に着物姿の少女が立っていた。
　同時に皆が金縛りにでもあったかのように動けなくなる。
　その異常な状態に少女が幽霊であると確信した。
「ホームズ！」
　結城が叫ぶと、どこから入り込んだのかホームズが飛び込んできた。
「ぼ、僕は結城正義でこっちは愛犬のホームズ。もし良かったらお話しませんか？」
「まるで下手なナンパだな……」
　背後からの雑音に珍しくムっとする結城。
　だが、少女は何も答えない。
「強力な念でござる……」
　夏神が声に力を入れてそう答えた。
「幽霊さんよ。黙ってねぇでなんとか言ったらどうだ？」
　如月が挑発的な口調で言うと、ようやく少女は口を開く。
「いない……」
「いない？　誰が？」
　少女が答えようとしたその時であった。
「出たね」
　浴場の扉を開けたのは碓氷。
　そしてその後ろには女性陣の姿もあった。
　だが、彼女達もまた金縛りに遭って動けなくなる。
「お前達、ずっと見張ってたのかよ！」
　驚く男性陣を気にすることなく、女性陣は目の前にいる少女を凝視する。
「お前達が先ほど見た少女の幽霊っていうのは彼女で間違いないか？」
　碓氷が女性陣に向かって尋ねると、それぞれが頷いてみせる。
「お前の望みはなんだ？　何か思い残した事があるなら教えてくれ」
　碓氷が優しく語りかける。
「さがして……」
「さがす？　何をさがして欲しいんだい？」
　だが、少女はそれ以上言葉を発せず消え去った。
　同時に男性陣の力が抜ける。
　すぐさま結城がホームズに、少女のいた場所を探らせたが収穫はなかった。　

　部屋に戻った一同。
「さがして……か」
　碓氷がじっと少女が残した言葉について考えていた。
「よくある話だと、見つかっていない自分の死体をさがせとかだよな」
「急に怪談じみてきたね」
　そこに御剣と新井、そして、
「けど、あの子は最初に僕達を見て、いないって言ったよ」
　結城が入ってくる。
「ああ、そういえば言っていたな」
「いない……ということは人か」
「でも、これで一つハッキリしたな」
　晴海も入ってきた。
「うん。少女は何か無念があるということだね」
「あれが本当に幽霊だったらだけど」
　空気を読まずにブリジットが吐き捨てる。
「あんなにハッキリ見える幽霊なんて聞いたことないわ」
「波長が合うかどうかでござるから、見える時には人間と変わらないように見えるでござるよ。ただ……」
　間に割って入った夏神であったが何やら口ごもる。
「そう。何かが違うんだよね」
　さらに碓氷が加わる。
　その様子に月ヶ瀬も加わり、
「あなた方がそう感じたということは、やはり幽霊ではないのでは？」
　あくまで幽霊を否定するが、碓氷は首を振った。
「とにかく、霊かそうじゃないかの決断はすぐには出せないよ」
「今さらだけど旅館内で情報収集しませんか？　結論がどうあれ、私達には情報が不足しすぎています」
　月ヶ瀬の提案で、分担して情報収集することとなった。