ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！｜リアクション

ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！

　数時間後。
「ほれ！　いつまで寝ているんじゃ！」
　雑魚寝する一同の耳に飛び込むしゃがれた怒鳴り声。
「うーん。あとちょっとだけ……」
「ぬぁ～にがあとちょっとじゃ！　自分の家と勘違いしてねぇが！」
　手に持ったほうきで全員をたたき起こす。
「ちゃんと条件満たしたんだからいいじゃないか」
「甘えるでねぇ！　ちぇっくあうとは守ってもらうだ！」
　起きない者にはほうきの応酬。
　仕方なく皆が眠そうに目をこすりながら体を起こす。

　午前十時。
　旅館の前でマオや華澄に見送られる一行。
「また来るとええ。次は全員に金もらうがの」
　楽しそうに笑うマオに皆ツッコミを入れる元気もない。
「全員にって、誰か払った人いるんですか？」
「ん……さあのう」
　マオの視線が一瞬夏神へと移ったのがわかったが、それ以上は追及しなかった。
　その隣りで椿が華澄へと駆け寄る。
「せっかくだから幽霊の格好で働けば？　旅館のいい名物になるわよ」
「ええ？　それはさすがに……」
「幽霊旅館か。そいつはいいや。女将は元々化け物みたいだし」
　おかしそうに笑う御剣のみぞおちにマオの肘が決まった。
　他の面々はそれに気付くことなく眠そうにあくびなどしながら、旅館を背に歩き出す。
「それにしてもつい数時間前の出来事なのにいまだに信じられないね」
「まさか本当に霊なんてものを目の当たりにするなんてね」
　新井とブリジットが呟く。
「でも、もっと恐ろしいことがわかったな」
　八神が言う。
「あんな可愛い少女が……」
　そしてゆっくり後ろを振り返る。
「ああなるということだ」
　八神の視線と共に、皆の視線がマオ婆さんへと移る。
「ええか！　今度は金持ってくるだぞ～！」
「……」
　その後、皆が無言となって帰路についたのはきっと寝不足のせいであろう。

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あとがき

担当マスター：裕竜
ファンレターはマスターページから！

　ご参加ありがとうございます。裕竜です。
　ようやく3作目を完成できました。

　今回は過去2作よりも参加していただいた人数が多いので、自分の中では未体験ゾーンとなりました。
　相手が幽霊、しかも一泊二日。
　幽霊と言えば出るのは夜！
　想像していた以上に短い時間内で解決まで持っていかなければならず、みなさんの活躍をもっと多く描きたかったのですが、泣く泣く削った部分が結構出ました。
　このあたりはまだまだ私にとって大きな課題の一つでもあります。

　幽霊騒動も解決したマオ婆さんの温泉宿・憩藍はこの後商売繁盛となるのでしょうか。
　誰かが言っていたように客が来ないのは別問題でもある気がしますが……。

　また次回作でお会いしましょう。
　ありがとうございました！

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