ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！｜リアクション

ワケあり温泉宿へ一泊二日ご招待！

　落ち着きを取り戻した一行は部屋へと戻る。
「あれ？　女達は？」
　部屋の中に女性陣がいないことに気付く御剣。
「みんな温泉に入りに行ったよ」
「よく呑気に温泉入っていられるな……」
「刀っちも入っていたけどね」
　新井の言葉に御剣はムっと睨み返す。
「俺達もあいつらが戻ったら入ろうぜ。いい湯だったみたいだし」
　御剣をちらりと見る如月。
「チッ。結城の姿も見当たらないが」
「結城なら調査するって部屋を出て行ったぞ」
「ほう。さっきの誰かみたいだな」
　そしてまた横目で御剣を見る如月。
「いい加減しつこいっての……」
「あの時はこの直後に悲鳴が聞こえたんだったな」
「キャーッ」
　突如こだまする女性の悲鳴。
「こんな可愛い悲鳴じゃなかったけどな」
「そろそろ本気で……っておい」
　ようやく異変に気付く如月と御剣。
「露天風呂の方からだ！」
　八神がすぐに部屋を飛び出して駆けて行く。
「まさか結城のやつ覗きやがったかっ？」
「え、彼ってそういう趣味あるの？」
　混乱しているのか怒鳴りながら飛び出す如月と、苦笑いを浮かべつつ新井もあとを追う。

　浴場の扉の前では、先に駆け付けた八神が立ち往生している。
「何やってるんだ！　早く中へ」
「ちょっと待て」
　中へ駆けこもうとする如月達を八神が止める。
「飛び込んでしまっていいのか？」
「当たり前だろ。この中には幽霊と女達が……」
　一同無言になる。
　だが突然、浴場の扉が開いたかと思うと、中から飛び出してきた人物が二人を押しのけて走り去って行った。
「今のは華澄さん？」
　だが、すぐに彼らの意識は開きっぱなしとなった浴場の扉へと移る。
「……」
　また沈黙。
「俺達の目的はなんだ？」
　八神が問う。
「幽霊退治（でござる）」
　皆の声がハモった。
　そして互いに頷き合うと、
「行くぞ！」
　御剣が先陣を切って突入！
「私が行こう」
　そんな一行の横を通り過ぎていく女性が一人。
　出鼻をくじかれて思わずその場で滑りこけそうになる御剣。
「誰なんだあんたは。今は中に入らない方がいいぞ」
「碓氷真理（うすいまり）。たぶんお前達と同じ理由でここへ来たから心配ない」
　一行の合間をすり抜けて、碓氷が中へと入る。
「俺達も……」
　続いて入ろうとする男性陣に対して扉をピシャリと閉めてシャットアウト。

　脱衣場に入った碓氷はその場でじっと何かを感じ取ろうとする。
「む……」
　眉をしかめて脱衣場のさらに奥、扉を開くと、中では女の子達が力なく温泉に浸かった状態で一点を見つめていた。
「……」
　碓氷もその方向を見るが、そこには何もいない。
「何があった？」
　碓氷が尋ねると、
「着物姿の女の子がそこの茂みに所に立っていたのよ！　せっかく色々聞きたいことあったのに体が動かなかったぁ！」
　椿が興奮気味にまくし立てる。
「消えた……か」
「写真撮ってみたけど見てみる？」
　塔尾が碓氷にデジカメを差し出す。
「はーい！　私も撮ったよ！」
　さらに椿もデジカメを手渡した。
　碓氷は二つとも確認するが、
「どちらも写ってないな」
　そこには暗い茂みと湯けむりが写っているだけだった。
　まもなくしてマオがやって来る。
「いったい何の騒ぎじゃ」
「幽霊さんが出たのだ！」
　後木の言葉に周囲を見渡すマオ。
「何もおりゃせんが」
「いや、確かにいたようだ」
　碓氷は浴場へ足を運ぶと、その場でじっと周囲の様子を伺う。
「妙だな。千佳姉でも気配を察知しきれないなんて……」
　何やらブツブツ呟く碓氷に周囲は首を傾げる。
「気にするな。それよりもいいのか？」
「いいって何が？」
　問いかける椿に、碓氷は親指で脱衣場からこちらを見ている男性陣を指差した。
「よ、よお」
　如月が軽く手をあげる。
　一瞬の間の後、旅館中に悲鳴が轟いた。