サンマガチャ、ガチャガチャ｜リアクション

サンマガチャ、ガチャガチャ

●幽霊サンマさん説得

　八神修と夢宮瑠奈は、七輪サンマさん捕獲のついでに、幽霊サンマさんを確認すべくパワーストーン専門店「幸」へ。
「八神君、あれ！」
　瑠奈が指差した方向を見ると、パワーストーンの前をグルグル飛び回っている七輪サンマさんが。
「探す手間が省けた。捕まえて【ZePet】に持っていこう」
　修が近づき背後から捕まえようとしたが、七輪サンマさんに気づかれ、素早い動きで逃げられてしまった。
　捕まえ損ねた修は、パワーストーンの店の壁に顔面をぶつけてしまった。
「大丈夫？」
「ああ……逃げ足は本物のサンマさん並みだな」
　キャットロード内を探し回っている御剣刀は、パワーストーン前にいるふたりを見かけた。
「お前達もサンマさんガチャを探しているのか？」
「御剣もか。俺と夢宮も探している。宇佐見先輩が拡散したねこったーを見て。大変なことになっているようだな」
　偶然だな、と、刀は修にカプセルを手渡し、自分も拡散ねこったーを見て探していることを話した。
「【ZePet】に寄ってこれを受け取った。カプセルにサンマさんガチャを入れないと元に戻らないそうだ」
「ただ捕まえるだけじゃ駄目、ということか」
「そうだ。じゃ、俺はこれで」

　店の壁に衝撃があったので、何事かと様子を見に来た磴琥珀が外に出てきた。
「大きな音がしたようですが、何かあったんですか？」
「あたし達、神魂の影響で逃げ出したサンマさんガチャを探しているんです。この近くに幽霊サンマさんがいると聞きました」
　あのサンマさんもそうなのでしょうか？　と思った琥珀は、瑠奈に、それらしいのがいることを話した。
「お探しのサンマさんかどうかわかりませんが、開店してから、ずっとうろついていましてねぇ」
　サンマさんガチャを探す手間が省けた。それを確かめるべく、修と瑠奈はパワーストーン店内へ。

　店内を飛び回っているのは、幽霊サンマさんだった。
「この店に幽霊サンマさんがいるという情報は、本当だったようだな。磴さん、これを見てくれ」
　端末で拡散ねこったーを見せながら、修は、琥珀にサンマさんガチャを探している理由を説明した。
「そういうことでしたか。【Ze Pet】さんのガチャシリーズの幽霊サンマさんに神魂が宿り、意思を持って動くようになったと」
　それで、幽霊サンマさんが動き出しているのか、と琥珀は納得。
「このままでは【Ze Pet】さんが危ないですし、ガチャをコンプリートしようとする子供達が可哀想です。早く捕まえてお返ししましょう」
　悠々と店内を飛び回っている幽霊サンマさんを説得してみようと、琥珀はそっと近づき、優しく話しかけた。
「サンマさん、少しお話があります。いいですか？」
　何だ？　と言っているように、幽霊サンマさんの動きが止まった。
「そのまま、じっと止まって私のお話を聞いてください。あなたがいないと、あなたや、他のサンマさんを買いに来た子供達が、がっかりしてしまいますよ？」
「あたしもそう思う。幽霊サンマさん、【Ze Pet】に戻ってちょうだい」
「俺からも頼む。戻ってくれ、サンマさん」
　琥珀に続き、瑠奈と修のふたりも説得する。
「子供達は、あなたに会いたくて並んで待っているそうですよ。並んでまで来てくれたんですから、戻ってあげたらどうでしょうか？」
　小さい子供に言い聞かせるよう、目線を合わせ、そっと、優しく語りかける。
　琥珀と瑠奈の優しさ、修の熱意に気持ちが揺れ動いた幽霊サンマさんは、自分から修が持っているカプセルに向かい、ゆっくり移動し始めた。
「戻ってくれるんだな、ありがとう」
　カプセルを開け、幽霊サンマさんをそっとしまう。
「私の説得が通じたようですねぇ。ありがとうございます、サンマさん。子供達に喜ばれるといいですねぇ」
「幽霊サンマさん、外の世界を自由に動きたかったのかもしれないわね」
「その願いが叶ったから、幽霊サンマさんは成仏できただろう。玩具に成仏、というのはおかしいか？」
「そんなことはありません。あなたが言うように、きっと、成仏できたと思いますよ」
　カプセルの中の幽霊サンマさんを見た琥珀は、そう思わずにはいられなかった。
「これは、俺達が責任もって【Ze Pet】に届けます」
「お願いしますねぇ」