サンマガチャ、ガチャガチャ｜リアクション

サンマガチャ、ガチャガチャ

●ぶらりサンマさん探し

　恵御納夏朝は、目撃情報がない七輪サンマさんとシークレットを探していた。
「……へぇ、こんなお店があったんだ」
　寝子島に来て数ヶ月経つが、まだ知らないことがある。
　発見した店はまだ開いていないので、今度来てみようと店名と場所を記憶する。
　立ち寄れたとしても、サンマさんガチャ探しで長居はできないが。

「賑やかなところ、美味いものを好みそうだなサンマさん。買い物しながら探すか」
　探し物には待つこと、楽しむことも大事。せっかちを封印し、龍目豪は様々な店に立ち寄り、その店の隅々に気を配りながら探す。
「【ZePet】の開店時間までに間に合えば大丈夫だろう」
　時計を見て、時刻を確認してから店の探検を楽しむが目的は忘れていない。
　遅れたら八重崎五郎八に顔向けできないし、子供達を悲しませてしまう。
（慌てずといきたいが、早めに見つけないと。探検部部長の面目丸潰れにならないように）
　探し回るだけでは面白味がないと、行った先の店の店員に話しかけながら情報を得ることに。

「和菓子屋か……」
　最初に着いた店は和菓子屋「萩屋」。
「寝子たい焼きか……。うまそうだな。おばちゃん、寝子たいやき１０個ちょうだい」
　紙袋に入ったホカホカのたい焼きを受け取ると、財布を取り出し、代金を支払う。
　１０個で足りるか？　と考えつつ、おばちゃんにサンマさん玩具を見なかったか訊ねた。
「そういうのは見なかったねえ」
　収穫無し、と確認しつつ、できたてたい焼きを頬張り次へ。
「動物カフェ【chouette】か……。サンマさん、動物に咥えられてないかな？」
　猫に銜えられ移動ということもあるので、サンマさんガチャもそうされてるかも。
　カフェに入り、すべての動物の口をじっと見るが、サンマさんガチャは銜えられていない。
「ご注文、お決まりですか？」
　サンマさん探しに立ち寄ったとは言えないので、アイスコーヒーを注文。
　運ばれたものを大急ぎで飲み、レジにいる店員にサンマさんガチャについて訊ねた。
「そういうものは置いてないです」
　ここでも収穫無し。
　次は、ペットショップ『アーモ』。
「サンマさん……水槽で泳いでねえかな」
　サンマなので泳いでいるはず。水槽をじっくり見るが、サンマさんガチャはいない。
「サンマさんガチャ、熱帯魚と一緒に泳いでいませんでしたか？」
　近くにいる店員にそう聞くと、玩具は扱っていませんよと返された。

「猫さんに狙われていそうだね……猫さんが隠れてそうな路地裏とかも探そう……」
　路地裏は薄暗くて狭いが、夏朝は、サンマさんを探すためと通る。
「猫さん発見……猫さん、猫さん。小さいサンマさんを知らない……？」
　聞いても「にゃー」としか言わないが、猫好きの夏朝にとっては心の癒しだ。
　隠し持っているかもと、猫を調べがてらに撫でる。
「撫でてもいい……？」
　背中をそっと撫でようとしたら、猫は回れ右して逃げて行った。

　別行動していたふたりだったが、靴屋「Cat's rear paws」の前でばったり。
「一緒に探すか？」
「そうだね……」
　サンマさんを探す素振りを見せないよう、店内を探し始める。
「探険用に使える靴はあるかな？」
　部活用の靴の新調を考えていたので、豪は、ついでに良い靴がないか探す。
「これ、すっげえ良さそう！　試し履きしてみよう」
　開店時間には少し早いが、客が来たので沓冠梢太朗が「いらっしゃいませ」と挨拶を。
「靴の試し履きは大歓迎です！」
「これ、履いてみたいんだけどいいか？」
「どうぞ」
　サイズ合うかな？　と試し履きする豪の足の裏に何かが刺さった感覚が。
「痛っ！」
　何か入っているのか？　と靴をひっくり返すと、サンマさんガチャが落ちた。
　それを見た梢太朗は「しまった！」と大きな声を出した。
「どういうことだ？」
「私も、そのサンマさんを探していたんです」
　そういうことは早く言え、と豪は文句を言いたかったが、サンマさん捕獲が先だ。
「見たことないサンマさんだな。シークレットか？」
　シークレット発見となれば、真っ先に捕獲したい。
　豪は店内を飛び回り、素早く動くサンマさんを追いかける。
　観察したい梢太朗、カプセルを取り出した夏朝と梢太朗も加わり、縦横無尽に店内を駆け回る。