せんせいといっしょ：浅井先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：浅井先生編

（……いい顔して眠ってるな）
　嫌な予感がして様子を見に来た士は、テントの入り口でむにゃむにゃ言いながら涎をたらしている空音の姿を見て苦笑した。初めてのキャンプではしゃいでしまい、疲れたのだろう。寝言で「筋肉筋肉かわいーなー、幸太せんせー」とか言っているのでおおよそどんな夢を見ているのか見当はついた。
「先生だったら、目を覚ましたわ」
「そうか。……とりあえず無事でよかった」
　冥の言葉に安堵すると、士はといきと羽衣に頼んで空音を寝袋に入れてもらい、自分は夜の散策に行く事にした。

　柳司と入れ違いに外へ出た礼二郎は寝る前に日課としている筋トレを行っている。それを見ていた幸太は「無理をしないように」とアドバイスをくれる。それに、素直に感謝を述べると、さっそく試すのであった。

・夜の散策、不思議な出会い
　士は幸太に一言言ってから川へ来ていた。彼は銛をつかって魚を捕らえるため、夜に行く事にしていた。
（ま、昼間にぶん回したら危ないからな）
　手に持った銛の感触を確かめつつ、器用に回す。そして、漁に集中すれば５匹も捕まえる事が出来た。
（体の調子も、戻ってきたな。あと少し魚を……）
　と思ったその矢先である。士が顔を上げると、そこにはツキノワグマがいた。大きさからして、成獣となったばかりの雄ではないか、と推測する。彼はじー……と、士が被っている熊の皮を見つめていた。
（……どうするか？　万が一の場合は戦うしかないが、平和的に解決したい……）
　などと考えつつもとりあえず挨拶してしまう士。すると、ツキノワグマもまた挨拶（？）を返してきた。そしてなんとなくだが「いやぁ、最近は暮らし辛いものですねぇ兄さん」とか「あっしは漸く生活になれてきたんでさぁ」とでも言うような視線と仕草を見せる。どうやら、士が同じ熊だと思ったらしい。
「は、はぁ……。御互い大変ですよね……」
　士には、それだけしかいえなかった。熊はある程度話す（？）とじゃあな、とでも言うように目を向けて、森の奥へと帰っていった。

　こうして、長かった１日目を終えた一行は、テントでぐっすりと眠る。幸太は積もる話もある、という事で今夜はオーナーのいる管理棟に泊まるのであった。