むかしむかしあるところに　～お姫様の願い事～｜リアクション

むかしむかしあるところに　～お姫様の願い事～

　　【呪い】

　こうして、部屋には王女一人となった。
　ブレスレットがあれば王女は安心できた。
　どんなに、王子たちが素晴らしい人で、そのスバラシイ王子達が王が没したばかりで王位継承権を奪い合い、城下町の外は貧困と飢饉に喘いでいても……
　彼さえいれば安心できた。今までの、この様な嵐のような空間も、彼のお陰で生きてこれたのだ。
　だから──彼さえいればいい。
　今までは、そう願ってきたけれども。

　しかし、そのせいで魔女の反乱は起こった。
　救世主と呼ばれていた少女達のお陰で様々な現実が見えてきた。私と言う個人が見えてきた。今までないがしろにしてきたものが見えてきた。
　──救って欲しいもの。それは、国そのものとフィナンの心。
　王女が意識をしっかりと取り直したとき、深く響くノックの音が鳴った。
　「どうぞ」
　「待たせたね」
　「初めまして、ご機嫌麗しく」

　そこには、ブレスレットを預けた桜崎巴と見知らぬ存在、火焔燐と、後に控える、解析の役に立たなかった事がしっかりと分かる宮廷魔術師の姿があった。
　
　「──ブレスレットの鑑定結果が出たよ。もしかしたらあんたも知っていたかも知れないが、これは攻撃魔法の弱体化、己の防御、互いの存在を本人同士で確認し合う強力な護符……だった。
　だが……片方のブレスレットは呪いで完全にイカレちまっている。
そんなのの対のブレスレットを付けていたお姫さんだけが、その機微を察して泣き伏していた……こんなところだろう。
　再びの端的な響きに、王女が正鵠を射て僅かに苦渋の表情を浮かべる。

　「そして解呪方法だけれども……呪いが掛かったブレスレットはまず普通には外せないと見て間違いないわん。
　簡単に外れていれば、この事件はとっくのとうに終わっているはずだものね。
　森に行く皆にもブレスレットには触れるなとしか言えないわん……。
　第三者が触れて、呪いのお陰で槍で串刺しにされたなんてあったら助けようが無いもの……。
　なまじ元が上位のアミュレットだっただけに、何が起こるか分からないから、もう呪いの解呪は物理しかない。
　手段は、それ自体には触れずに狂騎士のブレスレットを破壊する──手首は使い物にならなくなるかもしれないけれども…これだけよん……」