ようこそ、海開き！｜リアクション

ようこそ、海開き！

●メイド海の家にて（１）●

【海の家・マーメイド】

　そしてこちら、ちょっと変わった海の家では、集まったバイトたちが、途方に暮れているところだった。
「まったく、オーナー不在とは、一体この店はどうなってるんだ……」
　書き置きのペラ紙を手に、愕然としているのはこちら、氷華・クルバトフ。
「ボヌールの店長に、知り合いが海の家をやるから手伝ってくれと
　頼まれて来たはいいが……その店主が不在でどうする！」

　残されていたのは、「メイドの皆さん、あとヨロピク！　ボクちんは一足お先に、夏を満喫してきまっしゅ」とか言うふざけたメモと、大量のメイド服。そして互いに困り顔を見合わせる、ジャンヌ・クローデル、詠坂紫蓮、高梨彩葉、哀坂零葉、浅山小淋、白咲琴音、千鳥雅人、本田誠也、橘勇、塔ヶ崎璃亜、檜扇舞華、海士野乙女、鹿嶋洋美、十文字若菜、浅沼柳司、弓弦原譲、添木牡丹、難波辰、北玄ら、総勢２０名のアルバイトたちだ。
「全く、店ほっぽり出して遊び耽るなんて、店長の風上にも置けないねぇ……」
　と呆れ顔でぼやいているのは、自身もたこ焼き屋の代理店主を務める、海士野乙女だ。
「そりゃあ海だって楽しいけど、客商売やるからには
　お客様の笑顔を第一の喜びとすべきじゃないのかい？
　同じ店長として、どうかと思うね！　うん！」
「ともかく、ここは残っているバイトの私たちで何とかするしかありませんね」
　氷華と同じく、メイド喫茶のボヌールから派遣されてきた、高梨彩葉がそう言えば、
「そ……そうだよね。他の海の家は、もうとっくに営業を始めちゃってるんだし。
　とにかくこの店も、早くオープンしないと……」
　フリーターの鹿嶋洋美も、こくりと頷き返す。アルバイトを転々として生計を立てている、彼女なりに、この現場はマズイ……と感じ取ったのだろう。ハイと手を上げ、
「あの、海の家のバイトは何回かやったことあるから、ある程度なら勝手は分かります。
　人に教えたりするのはあんまり得意じゃないかもだけど、
　分からないことがあったら、聞いて下さい。いっしょに、頑張ろうね！」
「おー、そりゃ頼もしいで！　ねーちゃん、
　手とり足取り色々、この俺に教えたってな……ムフフ！」
　そう言って腕と腕を絡め、ムギュッとその胸を押し付けてくるギャルに、「あ、えっ、はい」とちょっぴり戸惑い顔の洋美だ。
　このわがままボディの美少女、実はろっこん【にょたいかっ！】で、あらかじめ変身してきた難波辰なのだが、本日のバイトでは、辰奈という名前で通すらしい。
「逆に接客のテクなら、この俺に任しとき！
　ふだんは居酒屋でバイトしとるんや、てきぱき働くで！
　面倒なお客は、胸の谷間チラ見せで懐柔や！
　名付けてお礼は見てのお帰り作戦！」
「ふむ……どうやらそれなりにバイト経験のある者も、揃っているようだな」
　少し安心したように（？）、氷華が改めて今日のバイト仲間を見回す。
「店長不在とは頭が痛いが、とにかく、ここに居る者たちだけで共に頑張ろう。
　各々が得意な分野を受け持ち、不得手なことは互いに助け合っていこう」
　こくこくと頷く、その場の全員。
「そうだな……ではまず、その役割分担から、決めていこうか。
　接客、調理、店の外に出ての宣伝……他に何かあるだろうか？」
　互いの希望を伝え合い、テキパキと分担を決めていくバイトたちだ。
「……ふむ、調理の担当が、ちょっと少ないな？
　料理は得意な人間がやった方が、いいだろうとは思うが……」
「あっ、じゃあ私も調理に入るよ。カレーとかなら作れるよ」
　鹿嶋洋美が柔軟に希望を変え、仕事の分担は、結果こんな感じになった。

●接客＆給仕担当
　氷華・クルバトフ
　高梨彩葉
　哀坂零葉
　千鳥雅人
　塔ヶ崎璃亜
　十文字若菜
　浅沼柳司
　弓弦原譲
　添木牡丹
　難波辰

●調理担当
　浅山小淋
　白咲琴音
　橘勇
　鹿嶋洋美

●呼び込み担当
　ジャンヌ・クローデル
　詠坂紫蓮

●グッズレンタル担当
　本田誠也

●水着売り場担当
　檜扇舞華

●たこ焼き担当
　海士野乙女

●売上泥棒
　北玄