鈴島、森に隠された古代遺跡｜リアクション

鈴島、森に隠された古代遺跡

●火の試練１

「うっわ、怖えなー……一歩間違えたら焼け死ぬぞこれ」
　東中居陽二は、風の試練の風でボサボサになった髪を直しながら行く手を見遣った。
　行く手１０メートルほどに渡って、壁の側面から炎が吹き出している。
「これが……火の試練」
　音海なぎさがごくりと息を飲む。

　駒鳥たちのおかげで無事風の試練を抜けた探検隊一行だが、今度は進路を炎で遮られ、またしても立ち往生していた。入り口のレリーフが正しければ、おそらくこれが最後の試練。ナニカがあるとしたらこの先のはずなのだが。

「炎のない場所に炎を止めるスイッチとかないか？」
　陽二があたりの壁を調べる。なぎさも炎の道以外に隠された通路がないか探したが、それらしきものはどこにもなかった。
「この炎を、どうにかして抜けるしかないみたいだね」
　そういうとなぎさは、火が止まったり勢いを増したりしないか注意深く観察した。
「ん……この炎、ずっと出っぱなし、ってわけじゃないみたいだ」
『なにか　ほうそくがあるのかな？』

　小山内海が尋ねる。なぎさは炎の様子をメモしながら答えた。
「炎は壁の左右から吹き出している。壁に穴が開いていて、そこが炎の吹き出し口になっているんだね。穴は手前から４つ……間欠泉みたいに炎は一定のタイミングで強弱があるみたいだ」
「１０秒、１秒」
　冷静にそういったのは花村チカだった。それから取り繕うように明るいトーンで説明を加える。
「一番手前の炎ですよ。ぼーっと１０秒炎が出て、１秒止まる瞬間があります。それからまた１０秒出る。この繰り返しみたいですねーっ」
　海となぎさも、目を凝らしてチカのいうことを確認する。
『ほんとだ　もしかして　ほかの　ほのおも？』
「うん。手前の穴から順にタイミングがずらされているけれど、それぞれ１０秒出て１秒止まってる。炎の出方には規則性があるんだ」
　
「どうやらこいつの出番がありそうだな」
　そういうと御剣刀は水の試練からずっと担いできたウォータータンクを床に下ろした。

「俺のろっこんも使えるかもしれないぜ」
　陽二も、私物のツールナイフと腕時計を片手に笑みを作る。

「整理しよう」となぎさがいった。
「炎の試練に挑むのは、東中居くん、御剣くん、小山内くん、花村くん、そしてボク。想定ルートは二つ。御剣くんの加速で火弱まる隙を駆け抜けるか、東中居くんの結界を利用するか、――その両方か」
　全員が頷く。
　そこでふとなぎさは坂内梨香を見た。
「この火は、幻覚な訳じゃないよね。坂内先輩の持つ＜魔法使いの目＞はそれを見破るもの？　……なんて思ったり」
　梨香は＜魔法使いの目＞越しに炎を見た。
「なにも、変わって見えないわ。どちらかというと、音海君を見たときの方が揺らいで見える気がする……。どういうことかよくわからないけど、炎は幻覚じゃなさそう」
「そっか……なら、幻覚じゃないと仮定して進むのが安全だね」