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禍語 二ノ刻
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【拡散】
たばこの煙につい、眉をしかめる。顔に出すつもりはなかったが、青年はああ失礼、と吸いかけを携帯灰皿へねじこんだ。
「ごめんなさいね。いつもは吸わないんだけど、時どき妙に恋しくなるのよ」
「いえ……」
どこか遠慮がちに言った青年に、
月原 想花
は首を振る。常から煙をくゆらしているのではないというのは本当だろう。彼は我が道をゆくといった風情をなかば矜持とするかのような男だが、そのかたわらには想花への配慮も感じさせた。
九頭見といったか。出会うのは二度目だ。前回は和菓子屋の軒先でだんごと茶をいただきながら、こんどは年季の入ったファミレスでオムライスなどおごられている。気前がいいが、彼にとって別段道楽というわけでもなく、いわくこれも仕事のうちらしい。
「それで、どう? 決心はついた?」
控えめにうながされ、想花は逡巡ののちに小さくうなずいた。
「無理にとは言わないわよ? それでも話してくれるのなら、私も助かるけれど」
「いえ。大丈夫、です。誰かに聞いてもらいたかった……のかも。そんな気がするから」
「そう? ま、話せるところだけで構わないからね」
ひらと手をかざした彼に、想花は記憶をたぐり寄せる。それはつらなった長い根を掘り起こす作業に似ていた。一度引けば付随し、絡みつきへばりつく忌まわしい記憶までも引き上げてしまうから。
荒く息をつく。喉がひりひりとして焼けつくかのようだ。
「やめて……やめて!」
叫ぶたび路地に声は響き乱反射した。
つかず離れず、そいつはついてくる。
空が真っ赤に染まっていた。赤は想花にはじめての痛みの記憶を鮮烈に想起させた。
「想花ー。想花ー」
「来ないで。やめて……」
「想花ー。おまえは汚れてる。汚いなー。ははは。ははは。なあ、想花ー」
姿は見えない。近づけば遠ざかる。みずから離れようとすればついてくる。ただ、そいつは叫ぶだけだ。
「8歳だったなー。どんな気持ちだったんだー? なあ、想花ー」
そうだ。8歳。8歳だ。あいつとふたりきりだった。顔も思い出したくない。名も知らない。嵐のような時間がただ過ぎ行くのを待った。そうすることしかできなかった。男が欲した行為の意味、想花へ刻み付けられた痛みの名を知るのはしばらく後のことだったが、記憶は想花を、事実は家族をも蝕んだ。両親が自身をかえりみなくなった理由は分からずとも、あれがその区切りとなったのだろうと幼心に感ずるものはあった。わけもわからぬまま、納得するしかなかった。薄汚い変質者に凌辱された娘を、誰が愛するだろうかと。
誰にも語ったことはなかった……関係者や良心を除けばだが。ああ、もうひとり
知っている
子がいたっけ。しかし程度の差はあれ同じように胸に傷を持つ彼女なら、想花との友情を反故にしてまでそれを誰かにもらすこともないだろう。
ともかく、縁もゆかりもない者が知るはずもないことだった。想花が隠しとおすべきと心に定めた秘密を、なぜあれが知っているのか。
「なあ、想花ー。なあー。なあー。あいつは何度もお前を汚したなー。何度も何度もなー」
「それを言わないで……やめて。もうやめて……」
「ははは。汚いなー。臭いなー。ははは。誰もお前に近づかない。汚いものなー。なあ、想花ー。どんな気持ちだー?」
血の気が引いていく。記憶が呼びさます嫌悪、不快、屈辱、背が粟立つようだ。世に己の居場所などもはやないと突きつけられるような。足元から凍り付くような。誰も彼もが自分を指差し嘲っている気がする。地が割れ深く深く、飲み込まれてゆく。
おそれは記憶そのものではなく、黙していたはずが人知れず拡散してゆき、見ず知らずのありとあらゆる者が秘密を共有することだ。明日からは肩を縮め、人目を避けて暗がりを歩くことになるだろう。
「もう……やめて……」
「みんなが知ってるぞー。お前のことをなー。なあ、想花ー。みんなが見てるぞー。ははは。はははは。みんながお前を」
「…………やめろ!!」
発露する怒りのままに、道端へ転がっていた鉄パイプを拾い上げる。きびすを返し、足早に歩む。駆け出す。つかず離れず? 知ったことかと全力で駆けた。
「お前……お前は。想花。想花ー。お前は」
「うるさい!! 人のこと、さんざん吹聴してくれやがって……よくも。黙れ。黙れ」
「想……」
「黙れえっ!!」
そいつがどんな顔をしていようが、どんな姿かたちであろうが、ひとか怪異かもどうでもいい。ただパイプを振り下ろす。振り下ろし、叩きつけ、蹴たおし、振り下ろし、振り下ろし、振り下ろす。
「前歯全部折ってやる。腕も足も指の一本だって残さない。二度とさえずれないように口を縫ってやる。死ね……苦しみながら死ね!!」
すべてが砕け、赤黒く粘着質な感触が手を這い上ってもなお、想花はパイプを振り下ろすのをやめなかった。
声は二度と響かない。
あれが叫んだことの核心的な部分は伏せながらに、その顛末のみを青年へ語って聞かせた。
青年はもう一度たばこを取り出しかけて、ああ、とつぶやいて引っ込めた。
「誰にも知られたくない秘密を叫ぶ怪異、ね。イヤだわあ。QOLが下がる系のヤツは、地味にランク高いのよね。社会的に殺される、なんてこともあるし」
「……あれが本当に夢だったのか、それとも本当にあったことなのか。異世界のできごとだったのか……ぼくにも、よく分からないんです。ただ、手に感触は残って……」
「ま、心配しなさんな」
顔を伏せた想花に、青年はあえて笑い飛ばすように明るい調子で言った。
「あなたの隠したかった秘密がなんであれ、少なくとも私の耳には入ってこない。あなたがブチのめしたそいつのこともね。エゴサだってさんざんしたんでしょ?」
「はい。なにも……」
「だったら、気にしないことね。終わったのよ。だからあなたは日の光の下を歩むべき、素敵な女の子なんだってこと。ね?」
あいまいな笑みを返して、想花はコーヒーを含み、飲み下した。
のどがひりつく。肌があわ立つ。
「想花ー。想花ー」
声が聞こえる……どこからか。遠くから。近くから。この声は想花自身の頭の奥で鳴っているのか。
「っ、あ……」
店内で席につく客たちのすべてが、気が付けばみな、想花を見つめていた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
ホラー
神話・伝説
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
7人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2025年10月12日
参加申し込みの期限
2025年10月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2025年10月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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